●「ずるい」が子育てを変える?


──親野先生がこの本を届けたいのはどんな人たちでしょうか。


親野先生 : 子育てを真面目にがんばっている、日本の親御さんたちです。
もちろん、真面目なのはよいのですが、講演会などを通じて親御さんたちの悩みを聞いて、空回りしてしまっている人が多いとも感じています。


こういう子にしなくちゃ、他人に迷惑をかけないようにちゃんと自立させなきゃ……と子育てに対するさまざまなプレッシャーが、親御さんが子どもを叱ったり、小言を言う回数を増やしているのではないでしょうか。


片付けも食事のマナーも勉強もすべて、ちゃんとさせないといけないと感じている親御さんが多く、その結果「○○しなければだめ」という伝え方を子どもにしてしまっています。


これは言っている親御さんも聞いている子どもも、両方がつらい気持ちになります。
そして、これがよい結果になるかといえば、そうでもないようです。


親子関係が悪くなり、子どもの自己肯定感が下がってしまうという2つの大きな弊害があります。


お母さんは真面目にがんばっているのに、その愛情がちゃんと子どもに伝わらず空回りし、子どもも自分の能力をそれほど伸ばせないという例を、公立小学校で先生をしている時からたくさん見てきました。


──「ずるい子育て」という言葉にはインパクトがあると思いますが、このタイトルに込められた思いについて教えてください。


親野先生 : 「ずるい」という言葉はいろいろな捉え方がありますが、この本のタイトルに使った「ずるい」には、効率よく、楽に楽しく子育てをしようという思いを集約させました。


タイパやコスパという言葉はビジネスなどの世界では常識で、それを悪く言う人はいません。


ところが、子育てや教育ではタイパやコスパという言葉は使われることなく、「苦労してなんぼ」「それが愛情」のような風潮があると思います。


子どもをちゃんと育てたい、という気持ちはわかります。
でも、親はスーパーマンではないので、何でもかんでもがんばるのは不可能です。


むしろ、がんばりすぎて不機嫌になって子どもとよいコミュニケーションがとれていなかったり、大事なポイントがおろそかになってしまう親御さんも多いと思います。


だから、子育てにあえてタイパやコスパという視点を入れることが、親子の幸せにつながるのではないでしょうか。


親が幸せなら、子どもも幸せです。親の自己肯定感が高ければ、子どもの自己肯定感も高くなります。


タイパやコスパという視点を入れることを「ずるい」という言葉で表現しました。
誰かを貶めるとか他者の不利益ではなく、自己の中で完結する「ずるい」という意味です。