ある雑誌の取材が終わって、編集者やカメラマンと雑談をしていたとき、編集者から次のようなことを聞かれました。
もし親野さんが幼稚園・保育園を作るとしたら、どんな園を作りますか?
全ての権限が与えられて、全く自由に作れるとして、こういう園を作りたいというものがありますか?
それで、私は次のように答えました。
「遊び中心の幼稚園・保育園ですね。
なんといっても幼児期に一番大切なのは遊びですから。
一日中、時間を忘れて思い切り遊べる幼稚園・保育園、自分がやりたいことを思う存分やれる幼稚園・保育園、それが理想です」
その時は時間がなかったのでこれで終わってしまいましたが、今回あらためてこの続きを書いてみたいと思います。
もう一度言いますが、私は遊び中心の園を作りたいと思います。
子ども自身がやりたい遊びをたっぷりできる園です。
砂で遊びたい子は好きなだけ砂場にいられる。
砂遊びに飽きたら水遊び。
それに飽きたら積み木。
それに飽きたら泥んこ遊び。
踊りたい子は先生のオルガンに合わせて踊りまくる。
あるいは、テレビやネットの動画を見ながら踊るのも楽しい。
自然環境に恵まれていることも大事です。
里山のような環境で、しかも海の近くなら最高です。
春は草遊びがいっぱいできます。
笹船を作って川に流します。
シロツメグサの花の冠を作ったり、ナズナでペンペン太鼓を作ったり。
オオバコ相撲も楽しいですね。
夏は磯遊びです。
カニ、ヤドカリ、小魚などと時間を忘れて遊びまくります。
これって本当に楽しいですよね。
大人も時間を忘れるくらいですから。
秋は枯れ葉の布団でお昼寝するのも楽しい。
どんぐり、松ぼっくり、オナモミで遊びまくります。
カブトムシ、クワガタムシ、バッタなど、秋の虫たちと遊びます。
冬は雪合戦に雪だるま。
できたらスキーやスケートも。
そして、氷や霜柱も楽しい遊びの道具です。
自然の中でたっぷり遊べば、気分爽快で、精神衛生の面でもとてもよい効果があります。
それに体力がつき、免疫力もつきます。
園内には、安全で楽しい遊具もいっぱい用意したいです。
遊んでいるうちに、自然に体が鍛えられ、バランス感覚や運動神経も身について、感覚統合にも役立つ、そういう遊具です。
できなかったことができるようになって、達成感を味わえる遊具も大事です。
もちろん、安全は最優先です。
楽しく遊んでいるうちに知的な能力も伸ばせる、そんな楽勉グッズもたくさん用意します。
ひらがな積み木、ひらがなカルタ、漢字カルタ。
パズルもいいですね。
平面や立体のパズル、ジグソーパズルなどもたくさん用意します。
百玉そろばんや百までトレンプがあれば、遊びながら数に強くなります。
モンテッソーリのような教具もそろえたいですね。
レゴブロック、粘土、お絵描き、人形遊び、ボール遊びもたっぷりできるようにします。
絵本、図鑑、紙芝居もたくさん用意します。
先生による読み聞かせもいっぱいおこないます。
やるかやらないかは、子どもに任せます。
もちろん、「これも面白いよ」という紹介や推薦はします。
でも、強制はしません。
自分がやりたいことを自分で決めてやれるようにします。
これが本当に大事だということが、最近の児童心理学や教育心理学などの研究でわかってきたからです。
わかりやすくまとめると次のようなことです。
幼児期に自分がやりたい遊びをたっぷりやれている子は、非認知能力が育ち、それが将来の学力の向上や収入アップにつながるということです。
能力を2種類に分けたとき、認知能力と非認知能力にわけることができます。
認知能力とは、算数の問題が解けるとか漢字が書けるなどのように点数化できる能力のことです。
これに対して、非認知能力は点数化できない能力です。
例えば、自分がやりたいことを自分で見つけて目標設定する能力、それに向けて努力を続ける能力、粘り強さ、やり抜く能力、自己コントロール力、他者を思いやる能力、他者と協力する能力、感謝する能力などです。
こういった能力は、点数化できませんし、いわゆる頭の良さとはちょっと違うものです。
でも、先々、勉強や仕事をしていくためにもプライベートを充実させるためにも、非常に重要なものです。
お茶の水女子大学名誉教授内田伸子先生の研究でも、難関大学に合格した子は、そうでない子に比べて幼児期にたっぷり遊べていた割合が顕著に高いということがわかっています。
アメリカの「ペリー修学前プロジェクト」の研究でも、主体的な遊びをたっぷりして非認知能力が高くなった人は、学歴も収入も高くなることがわかっています。
そして、こういった非認知能力は、自分がやりたい遊びに熱中する生活の中でこそ育つのだということが、科学的かつ学問的研究で明らかになっているのです。
なぜ遊びの中で育つかといえば、大好きな遊びをしているとき、子どもの内面で次のような体験や学びが進行しているからです。
「今度はこの遊びをやりたい。これをこういうようにしたい。どうしたらできるかな?そうか、こうすればいいんだ。できた!楽しいなあ。もっとやってみたい。自分はできるはずだ。あれ、うまくいかないなあ。でも、自分はできるはずだからもう少しやってみよう。どうしたらできるかな?こうやったらどうかな?あれ、やっぱりだめだ。もっとこうしたらどうかな?あ、いいぞ、うまくいきそうだ。できた、やったあ。うれしいなあ。あれ、○○君もやりたがってるようだな。誘ってみようかな。一緒にやればもっと楽しいだろうな」
こういう体験や学びは、今流行の言葉で言えば、まさに「主体的な学び」であり、「アクティブ・ラーニング」そのものです。
楽しい遊びだから主体的になれるのであり、その過程で人生に大切な非認知能力がグングン伸びるというわけです。
幼稚園・保育園段階で、大人にやらされることばかりが多いと、こういった非認知能力が育ちにくくなります。
ということで、幼児期は遊びが一番大切なのです。
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