●たった5時間で1年間の理科が学べる
NHKの教育放送には「学校放送」というジャンルがあるのだが、子どもの学力を向上させるには超オススメの番組ばかりだ。
小学校1~6年生のほとんどすべての教科の勉強がテレビを使って効果的にできる。
1つの番組は15分でまとめられており、同じ番組が1カ月間に4回放送されることになっている。
DVDなどで撮り貯めておけば好きなときに見ることができる。
HP(ホームページ)にアクセスすれば、パソコンで見られる番組もある。
例えば、6年生の理科では『ふしぎ情報局』という番組があり、燃焼、化石、火山、水溶液、電磁石など必須テーマごとに15分で作られている。
年間20回放送されるが、15分×20回、すなわちたった300分(5時間)で1年間の理科が学べるわけだ。
●教科書より理解を深められる場合も
すべての番組は、映像を利用したわかりやすい実験や説明で構成されているので効果的だ。
実写、アニメ、図、動画、写真などをうまく活用すれば教科書よりも理解を深められる。
撮り貯めておいて、繰り返し見れば、さらに知識が定着する。
種が芽を吹いて根が地中に伸びていく様子を高速度撮影し、枯れるところまで映像で見ることができる効果は大きい。
また、番組のホームページにはワークシートやより詳しい情報が掲載されている。
例えば、『ふしぎ情報局』の「人と動物の体」というテーマでは、「動物を観察して、動物の動きについて図と文で記録する」というワークシートがある。
見逃してしまった番組もホームページで見ることができる。
このほか、理科では全学年向けに『ミクロワールド』、3年生の『ふしぎだいすき』、4年生の『ふしぎ大調査』など豊富に用意されている。
●はるか縄文の時代も「見える歴史」に
1~3年生の国語は『おはなしのくに』。
日本や世界の民話、名作を語り聞かせてくれる。
5~6年生の国語なら『伝える極意』だ。
これは文章、話し方、映像など表現手法の極意を伝えて、コミュニケーション能力を高めることができる。
同じく5~6年生向けに読み書きと文法をわかりやすく教えてくれる「読み書きのツボ」という番組もある。
3~4年生の社会では『見えるぞ!ニッポン』があり、各地の産業、人、暮らし、伝統、文化などについてわかりやすく伝える。
例えば、鳥取県なら「梨」「大山」「砂丘」「水木しげると妖怪」などが取り上げられる。
6年生向けには『見える歴史』がある。
第1回目では「はるか昔の人々」というタイトルで、縄文時代の様子がわかる青森県の三内丸山遺跡と、弥生時代を代表する遺跡、佐賀県の吉野ヶ里遺跡を紹介。
遺跡から発掘、復元されたさまざまなものを通して昔の人々の暮らしをわかりやすく伝えている。
●教育現場では活用されていない
算数では4~6年生向けに『マテマティカ2』、総合授業でも4~6年生を対象に地球環境を考える『ど~する?地球のあした』がある。
5~6年生向けの道徳教育番組『道徳ドキュメント』は、困難な事態に直面した主人公が何を考え、どう判断するかを描いたドラマや、大きな仕事を成し遂げた人を紹介している。
小中学校向けの道徳教材である『時々迷々(ときどきまよまよ)』は少年少女を主人公にしたドラマ。
このほかにもよい番組はたくさんあるが、教育現場では残念ながらほとんど活用されていない。
以前は授業の一環として子どもたちに見せることもあったが、いまはまったくゆとりがなく、その時間が取れない。
生活指導、学習指導、道徳指導、○○指導、□□指導、あれもこれも学校に押しつけられて、学校でやらなければならないことが多すぎるからだ。
●年間を通して体系的に学べる
家庭でこういった番組を見せれば、学力アップにかなり役立つはずだ。
番組で子どもが興味を持った内容について、百科事典、理科事典、インターネットなどで調べ、ノートに要点を書き出す。
そこまでやれれば、効果が上がることは間違いない。
学校放送の番組はスタッフや専門家が練り上げて作られたもので、脚本がよくできており、無駄がない。
行き当たりばったりではなく、年間を通して体系的に学べるような構成になっている。
まさに「埋もれた宝」と言える。
中学生向けはあまりないが、「高校講座」はあり、大人でも基礎的な勉強をしたいという人にはお勧めだ。
数学や歴史など基礎から学び直すにはぴったりである。
テレビにはくだらないものも多いが、こうした番組を見ると、テレビの力を改めて実感する。
初出「親力養成講座」日経BP 2010年 9月9日
初出「親力養成講座」日経BP 2010年 9月9日