生活習慣の中で大切なものとして、片づけと整理整頓があります。
つまり、「使った物が片づけられる」ことと「日常的に整理整頓ができる」ことです。
これは、なにも入学準備としてだけ求められるものではなく、人生のすべての段階で、つまりすべての老若男女に求められるものです。

でも、大人でもこれができないひとがたくさんいるわけで、「言うは易く行うは難し」の代表といっていいと思います。

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そして、これは、かなりの部分生まれつきの才能によるところも大きいようです。
というのも、両親を含めて家中のひとが片づけと整理整頓が上手なのに、ひとりだけ苦手だという子もいるからです。
また、その反対に、両親を含めて家中のひとが片づけと整理整頓が苦手なのに、ひとりだけ上手だという子もいるからです。

ですから、私はまず最初にはっきり言っておきたいと思います。
片づけが苦手なのを直そうと思っても、そう簡単にはいきません。
もし、「入学までに直そう」とか「子どものうちに直そう」などと思いすぎると、親子ともども苦しむことになります。

なぜなら、毎日叱り続けることになるからです。
その結果、できるようになるかというと、そうでもないのです。

●親がやってはいけないこととは?

たとえ親がガミガミ叱って家ではできるようになっても、それは叱られたくないからやっているにすぎません。
ガミガミ叱るひとがいないところでは、やる気になどなるはずがありません。
それどころか、反動が出てよけいひどくなるだけです。

しかも、いつも言っていることですが、叱られることが多いと2つの弊害が出てきます。
1つには、子どもは自分に自信が持てなくなります。
もう1つは、叱る親に対する愛情不足感と不信感を持つようになります。

自分に自信を持てる子は自己肯定感が持てるようになります。
親の愛情を実感して親を信頼できる子は、友達やほかの大人も信頼できるようになります。
つまり、他者信頼感が持てるようになるのです。

自己肯定感と他者信頼感、この2つは本当に大切でこれ以上大切なものはないのです。
その一番肝心なものが片づけのために台無しになってしまっては、意味がありません。

これらのことを、常に頭に入れておいて、いっときたりとも忘れないようにしてください。
その上で、親にできることを楽しみながらやっていけばいいのです。

●親がやるべきこととは?

では、親にできることとはなんでしょう?
まずは、子どもと一緒に片づけや整理整頓をしながらやり方を教えることです。
それと同時に、たくさんほめてあげることがとても大切です。

そして、できるだけ片づけや整理整頓がしやすいように、環境を整えておくことです。
できたらワンタッチ収納、あるいはそれに近いものにして、できるだけ少ない手間で片づけられるようにします。
短時間で片づけられるかどうかは、子どもの意欲に直結するからです。
おもちゃを入れる箱に蓋があるかないかでも手間が違います。

箱、棚、引き出しなどに、「おもちゃ」「カード」「パズル」「ブロック」などと入れる物の種類を明示しておくのも効果的です。
「パズル」と書いてあるところに、ブロックは入れにくいものです。

●子どもが片づけを忘れたとき、なんと言いますか?

子どもが片づけを忘れたときの、言葉のかけ方も大事です。
「また片づけてない」「なんど言ったらできるの」などの言い方は、百害あって一利なしです。
こういう言い方を何百回繰り返しても、それでできるようになることは決してありません。
いろいろな面でマイナスになるだけです。

そんな言い方をしないで、「いまから5分で片づけよう。用意、ドン」「5分でどれだけきれいになるかな?用意、ドン」「片づけ、何分でできるかな?用意、ドン」「お母さんが洗い物するのとどっちが速いか競争だよ」などと言えばいいのです。
そして、終わったら、「だんだん上手になってきたね」「コツがわかってきたみたいだね」などとほめます。

きれいに整理整頓されている状態を写真に撮り、目につくところに貼っておくのもいい方法です。
すると、望ましい状態のイメージを子どもが常に意識できるようになります。
または、子どもが一生懸命片づけをしているところを撮った写真も効果があります。
それを見るたびに、「そうだ、片づけしよう」「自分は片づけができるんだ」という気持ちになることができます。

●片づけタイムを取れば、必ず片づく

私のイチオシは、毎日一定の時刻に片づけタイムを必ず取る方法です。
たとえば、午後5時30分から片づけタイムと決めて、その時刻になったらCDラジカセから音楽が流れるようにタイマーでセットしておきます。
その音楽が流れてきたら、必ず片づけをするのです。
そして、片づけをしたら子どもをほめます。

親は親の片づけでもいいし、親が子どもの片づけを手伝ってもいいのです。
それは、子どもの実状に合わせればいいでしょう。
時間は5分でも10分でもいいです。
たとえ5分でも、片づけタイムを毎日確実に取れば、少なくとも前の日よりきれいになります。
親が忘れないで、この片づけタイムを確実に取れば、もう片づけのことで小言を言う必要はなくなります。
そして、親自身の身の回りも片づき、引いては家中が片づきます。

時間を取るか取らないか、どちらかです。
時間を取れば必ず片づきます。

これらのことを、地道にやり続けてください。
それで、だんだんできるようになる子もいます。
でも、いろいろやってみてもそれほど変化がない子もいます。
大事なのは、そのときどうするかです。

●子どもに強いることはできない。親は結果を求めず楽しもう

そのとき、親は、「こっちがこれだけやっているのに、なんでできないんだ!」という気持ちからよけい頭に来るということになりがちです
でも、それでは意味がありません。
親は、結果を求めないでいることが大切です。
自分にできることを楽しんで行い、しかも結果を求めないことです。

親に結果を求める心があると、どうしてもイライラしてきます。
でも、結果は親の手の中にはありません。
変わるも変わらないも、子どもの自由なのです。
ひとは誰でも他人に強いる権利はないのです。

●片づけができなくても学校生活を楽しめる

もし、どうしても心配なら、先生に言っておけばいいでしょう。
そのときは、前回のコラムでも書いたように、「家でも練習しているのですが・・・」のひと言を付け加えてください。

私の経験で言えば、そんなに心配することはありません。
私の教師経験でも、片づけや整理整頓が苦手な子はどの学年のどのクラスにも常にたくさんいました。
でも、みんな、そんなことは平気で元気いっぱい学校生活を楽しんでいました。

もちろん、できるほうがいいに決まっていますが、できないからといってものすごく困るというほどのものではないのです。
一番大切なのは自己肯定感と他者信頼感です。
この2つがあれば、すべてだいじょうぶです。


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