●なぜ「時間の見える化」が必要なのか?


子どもがなかなか宿題・勉強に取り掛かれない理由の一つは、時間というものをあまり意識していないからです。

それは、時間を扱ってきた経験が大人に比べてはるかに少ないからであり、仕方のないことなのです。

 

時間というものは一つの量なのですが、面積や体積のように目に見えるものではありません。

ですから、子どもにとって捕らえどころのないものなのです。

 

そこで、大切なのは時間が目に見えるようにしてあげることです。

つまり、時間の「見える化」です。

そのために、効果的なのが模擬時計です。

 

まず、部屋の目立つところに大きめのアナログ時計を掛けます。

そして、その横に画用紙で作った模擬時計を貼ります。

本物の時計と同じ大きさで同じデザインにします。

 

そして、勉強開始の時刻を表す長い針と短い針を描き、「勉強開始」というタイトルも書きます。

 

●見えない時間を「見える化する」と無視できなくなる

 

例えば勉強開始が5時30分だとします。

本物の時計の針が5時20分、5時25分、と進んでくると、子どもは「もうすぐ勉強の時間だな」「あと5分だ…」などと感じます。

 

「見える化」されていると、どうしても自然に意識してしまうからです。

そして、だんだん心の準備ができてきます。

 

すると、5時30分になったとき、「ああ、勉強の時間だ」「しょうがない、やるか」となって、取り掛かりやすくなります。

 

取り掛からないままでいて、時計の針が30分、35分、と進んでいくと、何となく落ち着かない気がしてきます。

 

「見える化」されていると、完全に無視することができないからです。

「見える化」されていないと、時計の針がどんなに進んでも気にならないのですが…。

 

●模擬時計を使えば叱る回数が減る

 

模擬時計は勉強以外のことにも使えます。

ある家庭では、朝食を食べ終わる時刻、着替え終了時刻、登校時刻などを模擬時計で示してあります。

 

この他にも、お片づけタイム、入浴、就寝など、必要に応じて工夫すれば、叱る回数がかなり減ります。

模擬時計を4つくらい貼ってある家もあります。

 

また、あるお母さんは、ヒャッキンで買った2つの卓上アナログ時計をテープでくっつけました。

そして、片方の電池を抜き、針が朝食を食べ終わる時刻の7時10分を指すようにして模擬時計にしました。

 

これを食卓の子どもの目の前に置いたら、効果抜群だったそうです。

というのも、残り時間が減っていくのが目に見えてわかるので、子どもも食べるペースを調整することができるからです。

 

ちょっと忙しない気もしますが、それでもガミガミ叱り続けるよりはマシですね。

 

ところで、ある学校では会議終了時刻を表す模擬時計を使っています。

つまり、会議中はこれを本物のアナログ時計の横に貼っておくのです。

 

すると、参加者がみんな意識するようになり、「あまり時間がないな。発言をコンパクトにしよう」「そろそろまとめに入らないと間に合わないな」などと調節するようになり、会議が伸びなくなったそうです。

 

●時間割で「時間の見える化」

 

時間の見える化という点で、模擬時計と並んでもう一つ効果的なのが時間割です。

学校には、何曜日の1時間目は何時何分から何時何分までで国語、2時間目は…、などということが目に見える時間割が必ず貼ってあります。

 

貼ってない学校など見たことがありません。

これのおかげでメリハリのある生活が可能になっているわけで、もしこれがなかったらかなり混乱してしまうはずです。

 

このように、時間割はメリハリのある生活をする上で非常に大事なものなのです。

それにも関わらず、これが家にある例は極めて少ないです。

 

私は、各家庭にもこのような時間割が必要だと思います。

家で作る場合は、ホワイトボードに書くといいでしょう。

 

3,4パターン作って、習い事がある日はAの時間割、塾がある日はB、何もない日はC、土日はD、というよう使い分けます。

 

項目としては次のようなものが考えられます。

起床、朝食、排便、登校、帰宅、遊び、ゲーム、片づけタイム、勉強、翌日の支度、夕食、テレビ、入浴、就寝。

これらの項目を磁石付きプレートに書いて、ホワイトボードに貼ります。

 

このうち、起床、朝食、排便、就寝の4つは毎日同じ時刻にそろえます。

というのも、これらの生理的なものが日によって違うと身体のリズムが乱れるからです。

 

●時間管理のスキルが人生を豊かにする

 

はじめは親子で相談してつくってください。

そして、だんだん自分がやりやすいように自分で時間割をつくりかえられるように導きます。

つまり、自分でプレートを移動するのです。

 

すると、「ゲームはここに持って来て、勉強はここにしよう」「金曜日は忙しいから、こことここにわけて勉強したほうがいいな」「ぼくはやっぱり朝早く起きて勉強したほうがいいな。

その分お風呂も早めに入って早めに寝よう」というように、自分で時間の管理ができるようになります。

 

すると、「自分で決めたことだからしっかりやろう」という気持ちになって、メリハリのある生活ができるようになります。

 

だいたいにおいて、ほとんどの親は「自分から勉強しなきゃダメでしょ」「ちゃんと計画的に考えてやらなきゃダメでしょ」「時間を意識して行動しなさい」などと口で叱るだけで、子どもが時間を使いこなせるようにするための工夫をしていません。

これではいつまで経っても時間を管理する力は身につきません。

 

大人は手帳などで時間管理をしています。

大人ですら、それがないと時間管理はできません。

まして経験の少ない子どもにおいてはなおさらです。

 

ぜひ時間管理の具体的な方法を工夫して、それを使いこなせるようにしてあげてください。時間管理のスキルは学力に直結します。

 

またそれだけでなく、豊かな人生を生きていくためにもこの上なく大事なスキルなのです。
大人でも、仕事で成果を上げている人はプライベートも充実しているということがよくあります。

 

これは、つまり、時間管理のスキルが高いということなのです。

子どものうちからこういうスキルを育ててあげてください。

 

初出『月刊サインズ・オブ・ザ・タイムズ(福音社)201412月号』

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