「うちの子は片づけができなくて困る」「いつまでも宿題をやり始めない」「マイペースでてきぱきできない」など、子育て中の親たちの悩みは尽きません。
これらの悩みについて、実際に親たちはどのような対応をしているのでしょうか?
実は、ほとんどの場合、子どもを叱って終わりということが多いのです。
つまり、「片づけなきゃダメでしょ。何度言ったらできるの!」「どんどん宿題やらなきゃだめでしょ。だらしがない」「早く早く!ノロノロしない。もっとてきぱきやらなきゃダメでしょ」などと否定的な言葉で叱っているのです。
●叱られていると自信がなくなり親への不信感も出てくる
でも、これでできるようになる子はいません。
それどころか、いつもこういう言葉を浴びていると、子どもは自分に自信を持てなくなります。
「ぼくってダメだなあ」「私ってダメな子だ」「どうせオレなんかダメだよ。できないよ」という結論に至り、自己肯定感が持てなくなるのです。
これは、言い換えると自己イメージが悪くなるということでもあり、チャレンジ精神や向上心の喪失につながります。
同時に、否定的な言葉をぶつけてくる親に対する愛情不足感、つまり不信感が出てきてしまいます。
つまり、「お母さんはぼくのことが嫌いなのかも」「お父さんは私のことが好きじゃないのかも」という気持ちです。
すると、ますます素直に聞くことができなくなります。
同時に、危険なことや反社会的な行動に走る率が高まります
。親が心配する姿を見て愛情を実感したい、という衝動が働くからです。
●合理的な工夫で乗り越える
では、どうしたらいいのでしょうか?
大切なのは、子どもが苦手なことが自然にできるように、あるいはちょっとでもやりやすいように、合理的な工夫をすることです。
例えば、片づけが苦手なら「片づけタイム」を決めて毎日実行すると効果的です。
私は教師時代に、毎日、帰りの会の時に1分間お片づけタイムを取っていました。
帰りの会のメニューに入れてあるので、当番の子が「1分間お片づけタイム。机の中の物を全部出してください。用意、始め」と読みます。
それを合図に全員が片づけをします。
毎日やっているので、どんな子でも机の中はきれいなものです。
片づけのことで叱る必要などまったくありません。
●「片づけタイム」は効果てきめん
これを家でもやればいいのです。
毎日決めた時間に片づけタイムを三分取ると決め、タイマーをセットして毎日同じ時間に同じ音楽が流れるようにします。
そして、音楽が流れたら片づけタイムの開始です。
片付け方がよくわからない子なら、親が一緒に片づけながら教えてあげます。
一応自分でできるなら、親子が別々のところを片づけてもいいでしょう。
どちらにしても、家族みんなが一緒の時間に片づけをするのが理想です。
でも、それが無理なら子どもだけでもいいでしょう。
大人でも子どもでも、もともと片づけが上手な人はわざわざ時間を決めて取らなくてもできます。
でも、苦手な人はそのための時間を取るしかないのです。
そして、時間さえ取れば誰でも必ずできます。
世の中には整理整頓や収納のノウハウは山ほどあり、本や雑誌にもたくさん出ています。
でも、いくらそういうノウハウを学んでも実際に時間を取って実行しなければ無意味です。
はっきりいって、片づけが苦手な人の最大の欠点は時間を取らないということなのです。
実は、ノウハウはそれほど関係ありません。
苦手な人でも時間さえ取ればそれなりに片づくのです。
ですから、私はこの「片づけタイム」こそ、片づけが苦手な人のための究極的な方法だと思います。
子どものみならず大人にとってもです。
●片づけやすい環境も大切
子どもが片づけをしたら必ず見届けてほめてあげてください。
親が見届けをさばっていると、子どもはすぐにやらなくなり、新しく叱る材料になるだけです。
片づけタイムを取り、親がほめ続けていれば、片づけのことで叱る必要はなくなります。
いつまでも叱っている親は、自分がやるべきことをやっていないだけのことです。
ところで、片づけタイムを取るのと平行して、ワンタッチ収納やラベリングの工夫で、できるだけ簡単に片づけができるような環境を整えてあげることも大切です。
こういう環境がないと片づけに時間がかかるので、苦手な子はますますやらなくなります。
また、自分の部屋や机の周りがきれいに片づいている状態の写真を、目につくところに貼っておくと、あるべき状態のイメージトレーニングになります。
ところで、これらの工夫は片づけが苦手な子には難しいので、親の主導でやるようにしてください。
一緒に考えるのはもちろんいいのですが、子ども任せにするとまた叱る材料になるだけなので気をつけてください。
初出『月刊サインズ・オブ・ザ・タイムズ(福音社)2013年10月号』
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