前回までに書いたことを簡単に振り返ると、「叱らなくて済むシステムを工夫して、それでもできないことには目をつぶりつつ、ほめることを中心に育てていく」ということになります。
このような生活に心がけていると、親も子供も毎日を安らかな気持ちで心穏やかに過ごすことができます。
これはとても大切なことです。
というより、これ以上大切なことはないと言ってもいいくらいです。
なぜなら、この時代にこそ、自分や自分を取り巻く世界に対する基本的な認識ができあがるからです。
子供時代の毎日を安らかな気持ちで心穏やかに過ごしている子は、「自分は受け入れられている。自分は愛されている。自分は存在していいんだ。回りは信頼に足る」という認識を持つことができるのです。
そして、それは生涯にわたる認識の土台になるのです。
ところで、「子供に安らかな毎日を!」といったとき、決定的に大きな影響を持つのが親の言葉づかいです。
そこで、親の言葉づかいについて考えてみたいと思います。
私は、親の言葉づかいを4段階に分けています。
まず、一番まずいのが「人格否定」の言葉です。
たとえば、「ずるい子だね」「バカな子だ」「お前は卑怯だ」「情けないやつだ」「お前なんか要らない」などです。
これらは、その子の人格そのもの、存在そのものを否定する言葉です。
親からこういう言葉をぶつけられると、子供は非常に傷つきます。
自分の存在に対する自信が根底から揺らぎますし、親に対する不信感も抑えようがなくなります。
これらは、一度でも言われればぜったいに忘れることのできない言葉です。
長く心に残ってトラウマになることも多いのです。
でも、親の中には、けっこう平気で言ってしまう人もいます。
中には、一種の愛情表現などと思っている人もいるかもしれません。
ところが、言われる子供のほうは傷ついていることが多いのです。
言っている方は軽い気持ちで言っていても、言われる方は非常に嫌がっているということは、実によくあることなのです。
また、自分のストレスが高じてイライラしているときは要注意です。
普段なら言わない人でも、ついうっかり人格否定の言葉をぶつけてしまうこともあります。
それと、子供が反抗期の時などに、腹立ち紛れに言ってしまう親も多いようです。
こういう言葉は、どんなに腹が立ったとしても、口が裂けても言ってはいけません。
一度放った矢は取り返せないからです。
自分の言葉には十分気をつけてください。
それでないと、将来、「親子は他人の始まり」ということわざの意味を身を以て知ることになってしまいます。
初出『さんさい』(天理教少年会)