宿題があるのになかなか始めないので寝る時間が遅くなる、前の日に用意しないから朝の支度が毎日バタバタ、何度も声をかけて、だんだんイライラ……。


親が促さなくても子どもが自分から始めてくれたらうれしいのにと思う場面があります。


子どもが自分から動けるようになるために今できることを、教育評論家の親野智可等先生に伺いました。




●いきなり「自分から始める」のは難しい


宿題や片付け、明日の支度など、子どもの生活の中で、やらなければいけないことはいろいろとあります。


早めに済ませたほうが安心だし、あとの時間も有意義に過ごせて気が楽になるはず。
だから「早くやりなさい」「まだ始めないの?」などと促すこともあるでしょう。


理想をいえば、言われる前に始めてほしいと思いますよね。


けれども、実際には先にやりたいことをして、やるべきことは後回しにする子どもが多いのです。


多くの子どもは、やらなければいけないことはわかっていて、やる気もあります。
そして「あとでやるからいい」「きっと問題なく終わるだろう」と考えています。


宿題を始めてみたら思ったよりも時間がかかってお風呂に入る時間がなくなるとか、片付けを後回しにしているうちにさらに物が増えて大変になるといった先々のことはまるで見えていません。


そのうえで、今は気が乗らないという気持ちを優先させているのです。


ですから、いきなり「親に言われなくても自分から始めてほしい」と思うのは子どもには荷が重い話です。


大人が先の見通しを持たせてあげたり、面倒臭い気持ちを軽くする方法を教えてあげたりする必要があるでしょう。


そうして「早めに済ませておくと安心だ」「あとが楽になってよい」と繰り返し実感することで、だんだん自分から積極的に始められるようになっていくでしょう。




●見通しを立てて選択させよう


「あとでやるつもり」という子どもを動かすには、後でやるとどうなるか、今取りかかるとどうなるかをイメージさせ、どちらがよいか選択させる方法が効果的です。


子どもは大人が思うほど先の見通しを立てていません。


なるべく具体的に比較できる選択肢にして、ホワイトボードなどに書き出してみてください。


文字にすると、子どもの頭に入りやすく、選びやすくなり、比較することで今か、あとかを決めることができるのです。


選択肢の例をいくつか挙げましょう。


●先に宿題をやって、夕食後はのんびり好きなことをする
●今は好きなことをして夕食後に宿題をする


●今から家族と温かい出来立ての食事をする
●今は好きなことをしてあとで一人で食事をする


●今すぐ片付けるならお母さんが手伝ってあげる
●あとでもいいけれど、一人でやる


●塾から帰ってから宿題する。寝るのが遅くなっても終わらせる
●塾に行く前に宿題をして、帰宅後はゆっくり好きなことをする