知り合いの編集者Nさんに聞いた話です。
彼女は子育て中のお母さんです。
あるとき、子どもに問題集をやらせようとしたのですが、なかなかやってくれませんでした。


それで、あるページだけ切り取って「これだけでいいからやって」と言いながら渡したら、意外とあっさりやり始めました。
それからは、毎回その日やるページを切り取って渡すことにしました。
しかも、何種類か用意しておいて、どれをやりたいか自分で選ばせるようにしました。
 

私はこの話を聞いてすばらしい親力だと思いました。
Nさんの取り組みは子どもたちの心理をよく理解していてとても理に適っていると思います。


子どもの立場に立ってみればわかります。
切り取ってある1枚の紙だけを渡されて「これだけ」と言われれば、子どもも「これだけなら、すぐできそうだ」と思えるでしょう。
問題集を一冊丸ごと渡されて「さあ、今日の分をやって」と言われるのに比べて、負担感ははるかに少ないはずです。
 

それに数種類の中から選ぶことで、「自分で選んだのだからやらなくては」という意識が働きます。
というのも、子どもなりにちょっとした責任を感じますし、自分のプライドにもかかわってくるからです。
 

それで、私はこの方法を知り合いのSさんというお母さんに教えてあげました。
すると、Sさんはさっそく真似して実行しました。
その際、思いついて「やり終わったら裏に好きな絵を描いていいよ」のひと言を付け加えました。
 

これは聞くのを忘れましたが、たぶんその家でやっていた問題集は両面刷りでなくて裏が真っ白だったのか、あるいはわざわざコピーしてやらせたのかどちらかだと思います。
 

この一言も効果抜群だったようで、お子さんは猛然とやり始めたそうです。