文部省の公式見解である学習指導要領では、小学校入学時にひらがなを読めなくても書けなくてもいいということになっている。

 
しかし、これは建前だ。
実際には、大半の子どもは読めるし、書ける。
ひらがなだけでなく、かたかなや漢字を読み書きできる子もいる。


 
なかには、入学時にひらがなで自分の名前を書けない子もいる。
プリントや教材に名前を書くことも多く、他の子ができるのに自分ができないとショックを感じる。

 
だから、入学前にはせめてひらがなで自分の名前を書け、50音を読めるようにしておいた方がいいだろう。

 
ただし、書けないからといって、いきなり無理に教えては逆効果だ。
子どもはひらがなを覚えることが嫌になる。
焦らず、無理せず、じっくりと育てることが必要だ。

 
ひらがなの読み書きが苦手ならば、まずはひらがなの書いてある積木やカルタなどで遊びながら、名前を並べてみるなど、文字に親しむことから始めよう。


その子のペースに合わせて進むことが何よりも大切だ。




●1から100までの数唱が算数の基礎
 

算数に関しても、建前は入学時に何も知らなくていいのだが、現実は甘くない。

 
1年生の1学期はゆっくりと教えるが、2学期になると急に算数が難しくなってくる。
そこでついていけなくなると算数嫌いになるので、入学前までに数える練習だけはやっておきたい。

 
少なくとも1から100まで数えられるようにしてほしいが、すぐに数を唱える(数唱)のではなく、10のかたまりをつくりながら数えるといい。

 
1から10、11から20‥‥と10個ずつのかたまりで、数えることによって十進法の構造が分かるようになる。

 
トランプで数に親しむのも有効だ。


トランプには例えば、数字の7とハートの絵が七つ描いてある。
ものの数と数字が対応することが算数の第一歩であり、授業でもここから始まる。

 
おはじきを使って、10個ずつのかたまりを10個つくって100にするなど、ものを利用して数える体験をすることはとても重要である。

 
その次に1から100まで数唱する。


50までは数えられるが、それ以上は苦手という子もいるので、お風呂などで「今日は50から70」「今日は70から100」などと何度もたっぷり数唱させることが重要だ。

 
このように、実際に物を数える経験と数唱によって、数字に対する基礎的な感覚を身につけることができる。

 
順番に数えられるようになったら、2、4、6や1、3、5などの2飛びや、5、10、15など5飛びなどで数えたり、10、9、8と逆に数えたりするのもいい。




●おはじきを使って「数隠し」ゲーム
 

算数で次に大切な基礎が「数の合成と分解」である。


例えば、3と2で5とか、4と3で7などが合成。
逆に5は3と2、あるいは1と4などが分解。
おはじきなどを使ってこれを繰り返すといい。

 
その次に、足して10になる数(これを「補数」という)を求める訓練をする。
例えば、7といったら3、8といったら2など、10になる補数をパッと言えるようにしておくと後が楽だ。

 
これもおはじきを使った「数隠し」ゲームが有効だ。
10個のおはじきを用意し、2個隠して、8個を見せておき、「さて、お父さんはおはじきをいくつ持っているでしょう?」と遊びながら教える。

 
この合成・分解と補数が算数の基礎であり、足し算も引き算もすべてこの応用だ。

 
補数を見つける数隠しゲームに慣れてきたら、次に12個用意して8個を隠し、4個を当てさせるなど複雑にしていくといい。

 
実は、このような物を数える体験や数の合成と分解の体験を、もっと効率的に行えるおもちゃがある。
それが「百玉そろばん」である。

 
これは、算数の地頭を作るには、もってこいの優れものだ。
これでたっぷり遊んでおけば、算数で苦労することはないと断言してもいい。


それに、これなら、もっと小さい子が間違って口に入れてしまう心配もない。
興味のある人は、ぜひ「百玉そろばん」で検索してみてほしい。

 
また、人生ゲームなどおカネを数えるゲームも十進法や数に親しむのにとてもいい。
お父さんにはぜひ子どもたちとボードゲームを楽しんでほしい。




●自然と本物体験が理科と社会の基礎
 

理科の準備では、何より自然に学ぶ本物体験をさせることが大切だ。

 
昆虫の観察、植物を育てる、動物の世話をするなど、たっぷりと自然に親しませることが理科および科学教育の基礎になる。

 
低学年の理科の授業は昆虫と植物から始まる。
1、2年では生活科、3年から理科になるが、飼育体験などをしておくと勉強にとても役立つ。

 
最近は昆虫に触れたことがなく、昆虫を嫌う子が多いが、こうした子どもたちはなかなか理科好きになりにくい。

 
昆虫や植物の飼育どころか、手で土をいじる経験をしたことがないと、生活科や理科の授業では積極的になれないため、授業が面白くなくなる。

 
自然や実験の面白さも知らずに、塾で問題集だけやっても、科学好きには決してならないだろう。

 
3年から始まる社会でも本物体験は役立つ。
親子で地域を散歩しながら、畑や工場、港などを観察して、話をすることで社会を見る目が出来てくる。

 
こうしたことは4月に入ってからでも遅くはない。
子どもたちが楽しんで学ぶための地頭を育てる工夫を親御さんたちにはしてほしいものだ。

初出「親力養成講座」日経BP 2008年2月22日