入学シーズンがもうすぐだ。
これから我が子が小学校入学を迎える親御さんは期待と不安で一杯だろう。
子どもたちはもっと期待と不安で一杯である。

 
子どもにとって小学校入学はいままで生きてきたなかで、最大のイベントだ。

 
この時期、親がやりがちな間違いが、「入学までに○○できないと、先生に怒られるよ」と子どもをせき立てることである。


 
入学説明会で学校側は「一人で着替えができるようにしてほしい」「何でも食べられるように」「和式トイレを使えるように」などといろいろな要望を出すが、親はあまり真っ正直に受け取らない方がいい。

 
言われたことをすべて子どもにマスターさせようとすると、子どもを脅したりして期待よりも不安を抱かせてしまう。

 
入学前はまず不安ではなく、安心させてやることが大切だ。
そのために、幼稚園や保育園で、できるようになったことをまずほめてやろう。

 
 「靴の右と左を間違えなくなったわね」
 「自分で服を着られるようになったね」 
 「友だちがたくさんできたね」


など、何でもいいから、たっぷりほめて、自信を持たせてやろう。

 
自信と安心を持たせた上で、次に小学校でやりたいことを話し合う。
「漢字を習いたい」「算数を勉強したい」など、目標を立てよう。

 
この順番、つまり、「まず、ほめてから」が鉄則である。
ちなみに、入学前にどんな勉強の準備をしておくべきかについては次回にお話しする。




●努力目標のいろいろ
 

入学までに身につけるべきことは、努力目標として、少しずつ学ばせる。
子どもの実態を無視していきなりすべて完璧を期待するのはいけない。
ほめながら焦らずに身につけさせよう。

 
例えば、学校では体育や水泳のときなど着替えることが多いので、脱いだり着たりは毎日、一人でできるようにしたいものだ。

 
また、多くの小学校は和式トイレしかないので、洋式トイレの家庭は和式トイレで練習させよう。
なかには和式トイレでは用を足せない子どもがいるので問題になることがある。

 
さらに、自分の名前をちゃんと言えて、「はい」と返事ができるようにしておくことも大切だ。

 
意外に大切なのが、B4サイズの紙を折り畳む練習だ。
学校ではB4サイズのプリントを配ることが多いが、1年生にとってはかなり大きい紙なので畳むのが大変だ。
広告などを使って練習しておこう。

 
アナログ時計を読めるようにしておくことも大切。
なかには、アナログ時計が一つもない家庭もあるので、子どものために用意してやりたい。

 
名前は平仮名でいいから、書けるようにしておく。

 
ランドセルに教科書、ノート、予定帳などを詰める練習もしておこう。
なかには教科書やノートを授業の順番にして、子どもの代わりに詰めてしまう親もいるが、そのまま机の中に入れると、とても使いづらくなる。

 
それよりも、大きい物を下にして、予定帳やドリルなど小さい物を上に置くようにする方がいい。
これなら、上の方に空きスペースを作ることができる。
机の中は狭いので、このスペースが貴重なのだ。

 
だから、大きいものを下にしてランドセルに入れたり、出したりする練習を子どもにさせよう。

 
とは言いつつも、冒頭で言ったことは常に頭に入れておいて欲しい。
つまり、これらは、すべてただの努力目標であって、「必ず入学までにできるようにしよう」などと思わないほうがいい。

 
子どもには子どものペースがあり、親が焦ったからといって急にできるようにはならない。
それを無視して急がせると、どうしてもしかることが増える。
これでは、子どもは自信を失い不安が増すばかりである。

 
親がどうしても心配なら、担任に正直に言って見てもらえばいいのである。
そのときは、「うちでもがんばっているんですが‥‥」という言い方が大事だ。
そう言われれば、担任も「うちでも努力しているんだな。がんばっているんだな」ということになる。




●友だち関係が心配ならロールプレイを
 

親が一番心配になるのが、友だち関係だろう。
なかにはなかなか友だちの輪に入れずに友だちが作れない子もいる。

 
もし、我が子が友だち作りに対してちょっと消極的だと思ったら、親子で事前にロールプレイをやっておくと効果的だ。

 
例えば、お父さんがA君、お母さんがB君役になり、2人で遊んでいるときに、子どもがその中に入れてもらう練習を劇仕立てで行う。

 
「一緒に遊ぼう」とか「わたしも入れて」と子どもに言わせて、A君とB君が仲間に入れてあげる。
ときには、「いまはダメ」と断って、次に言うべき言葉を練習させる。

 
入れてもらうときに、言えるようにしたい言葉としては以下のようなものがある。

 ・入れて
 ・入っていい?
 ・一緒に遊ぼう
 ・ここに座っていい?
 ・面白そうだね
 ・もう1人、入れる?
 ・じゃあ、見ていていい?
 ・じゃあ、後で入れてね
 ・今度、入れてね
 ・じゃあ、人数が足りなくなったら言ってね

 
逆に、「入る?」とか「入りなよ」など、他の友だちを仲間に入れてあげる練習もしておくといい。
友だちを入れてあげるときに、言えるようにしたい言葉としては以下のようものがある。

 ・入る?
 ・入りなよ
 ・○○やろう
 ・○○やらない?
 ・一緒に遊ばない? 
 ・面白いよ
 ・人数が足りないから入ってくれる?

 
こうした練習をロールプレイでやっておくと、実際の場面で言葉がスッと出てくる。
言葉が出れば、子どもはすぐに仲良くなれる。




●通学路の安全確認は必須
 

もう一つ、入学前に親御さんに必ずやっておいてもらいたいのが、通学路の安全確認である。

 
実際の登下校時に通学路を歩いてみて、交通量、危険な場所などを確認する。
危険だなと思ったら、場合によっては通学路を変えるべきだ。

 
近所の友だちと同じルートを歩かせるとか、交通量の多い場所を避けるなど、親同士で話し合って、工夫したい。
子どもをねらうような不審者も増えているので、安全が優先だ。

 
学校側が指示する正規ルートもあるが、それぞれの事情で変えることは問題ない。
入学時に担任に事情を説明しておこう。

 
また、通学途中に何か起きたら、逃げ込む場所も決めておく。
コンビニとかお店、友だちの家など、実際に子どもを連れてあいさつをしておくといいだろう。
いざというときに、子どもが逃げ込みやすい。

 
子どもの安全は、親の責任で最大限努力して欲しい。

 
通学路だけでなく、できたら学校内の施設や遊具を親子で一緒に確認するといい。
子どもは入学への夢が膨らみ、親は学校内の安全に対する関心が高まる。


もちろん、学校内の安全管理は学校の責任だ。
だが、親が見て心配なところがあったら、ぜひ学校に伝えてやろう。
すべては、子どもの安全のためである。

 
最後に言いたいのは、小学校入学をきっかけに食事中のテレビを消す習慣を身につけることだ。
毎日が無理なら、週に何回かでもいい。

 
食事中に親子で会話することはとても大切だ。
学校で習ったこと、友だちのことなどを聞いて、いま何を考えているのか、何かつらいことや悩んでいることはないのか、子どもの話しぶりや態度を毎日しっかりと見ておこう。

 
友だちとケンカなどしても話すことで子どもはストレス解消になるし、自分を振り返る場にもなる。
いじめなどの問題の早期発見にもつながる。


また、会話をすることで子どもは表現力を身につけていく。
話す力、聞く力、書く力は親子の会話がベースだ。