●「生まれくれてありがとう」が究極のほめ言葉
 

子どもを伸ばす父親はほめ上手が多い。
ほめるのが下手で、子どもが伸びることは稀だろう。
多くのお父さんたちは頭ではそのことをわかっていると思うが、いざとなると、うまくほめられない。そこで、前回に続き、今回も「子どもをほめるコツ」を、いくつかご紹介しよう。


親にとって最大の喜びは、そのものずばり「親であること」だ。
「親」になることで、人格や見識が磨かれ、友だちも増え、世間が広くなる。

 
その「親にしてくれた」のが、子どもだ。
我が子が「生まれてくれたこと」に感謝の気持ちを持ち、それを実際に子どもに伝えよう。
「生まれてくれてありがとう」こそ、子どもに対する究極のほめ言葉である。


「お父さん業を楽しくやれるのも、お前のおかげだよ」
「お前のおかげで、仕事もがんばれるよ」

 
その子の存在自体を肯定して感謝する。ほめ上手になる第一歩は、そこから始まるのだ。




●親がほめたいところ」をほめるのではない
 

前回、6つのコツをご紹介した。
ここではまた別の視点から、さらに6つのポイントを見ていく。


1 思い入れ評価法

 
人間誰しも、思い入れの強いことがあるものだ。
がんばった仕事をほめられると大人でもうれしいように、子どもだって思い入れの強いポイントをほめられるとうれしい。

 
たとえば、子どもが描いた絵をほめるにしても、必ず一所懸命描いた部分がある。
建物や草や空の雲やなど、力の入った部分を見抜いてほめてやる。

 
私が教師時代、ある絵のうまい子がいて、「絵が上手だね」とほめたが、あまりうれしそうな顔をしない。


そこで、次の時間に腕を立体的に描いた絵を「影の描き方がうまいね」とほめたら、今度はものすごくうれしそうな顔をした。
その笑顔が忘れられない。

 
きっと、その子はがんばって影を描いたのだろう。
人にはほめてもらいたいポイントというものがある。
そこには時間を掛けて手間を掛けているので、観察しているとわかる。

 
うまくツボにはまると本人がうれしいだけでなく、「わかってくれた」と、相手に対する信頼が増す。

 
ただ、その子の思い入れと親の価値観とは、必ずしも一致しない。
たとえば小学校高学年の女の子ともなると、かなりおしゃれに気を遣うようになる。

 
親としては「まだ子どものくせに」と思うだろうが、ファッションセンスをほめてやると、子どもによってはとても喜ぶ。

 
つまり、親がほめたいことをほめるのではなく、その子の立場に立って、思い入れの強いことをほめる。
「相手がほめてもらいたいこと」をほめるのがコツなのだ。




●子どもはほめられる理由を知らないことも


2 理由付加法

 
漠然とほめるだけでなく、理由を付加してほめると説得力が増す。


「毎日、お風呂掃除してくれてありがとう。ピカピカのお風呂に入ると、お父さんも疲れが取れるよ」

 
このように理由を加えると、言われた本人は、喜びが倍増する。


「気持ちのいいあいさつだね。その声を聞くと元気が出るよ」
「ノートの字がていねいだな。ていねいな字を書くと人に信頼されるよ」


 ――などなど、あまりくどくど言わなくていいから、ひとこと理由を付けてやる。
というのも、大人や自分は当たり前だと思っていても、子どもはなぜほめられているのか、わからないこともあるからだ。

 
なぜこんな当たり前のことができないのかと大人が思っても、子どもはその理由をわかっていないことがある。

 
たとえば「毎朝、あいさつをしよう」と提案しても、「なぜあいさつが必要なのか」わからない。
そこで、あいさつすると気持ちがいいし、相手を元気にすることもできるという理由を伝えれば、子どもなりになるほどと思い、がんばれる。

 
以前、NHKのドキュメンタリー番組で、ある工場の話を放送していた。
その工場で、製品の返品が急増した理由を探したら、当然行うべき確認作業を怠っていたことがわかった。


古参社員たちは長年、表を見ながら、声を出して確認作業をしていたが、その重要性をちゃんと若手に伝えていなかったため、作業員が代替わりして確認作業をやらなくなり、ミスが増えたのだ。

 
この返品の原因を、若手の怠慢とばかりは言えない。
なぜ声を出して確認する作業が重要なのか、ちゃんと伝えていないことも大きなミスである。
大人でもそうなのだから、ましてや子どもは当たり前のことがもっとわかっていないのが普通だ。




●人は他人の言葉に影響されやすい


3 第三者伝達法

 
親が直接ほめるのもいいが、「第三者がほめていた」と伝えると、リアリティーが高まる。


「今日、担任の先生に会ったら、○○君は6年生になってからいきいきとがんばっているとおっしゃってたよ」

 
子どもがいないところで、そういう自分をほめる会話があったのは、うれしいものだ。

 
お父さんと子どもだけでどこかに出かけたとき、「お母さんがお前のことをほめてたよ」と言うと、本人に言われるよりうれしいときがあるし、リアリティーがある。

 
実は、企業でもこの手は使える。


「部長が君のことをほめてたよ」
「君は同僚に人気があるね」

 
このようにほめると、あなた自身も部下から敬意を持たれることは間違いない。




●複数の人にほめてもらい、やる気を引き出す


4 チーム評価法

 
これは、親がひとりで子どもをほめるのではなく、多くの人にほめてもらう方法だ。
そのほうがリアリティーが出るし、子どもも信じやすくなる。

 
ひとりからだけでなく、多くの人にほめられると、大きな自信になるし、その気になって、思わぬ力を発揮することもある。

 
子どもに限らず、大人だって、他人の言葉に影響されやすいものだ。
以前、テレビの番組で、以下のような実験をしたのを見たことがある。

 
一般の会社で、ある健康な社員を対象に、朝、出社したとき、周囲の同僚から「顔色悪いね」「体調が悪いの」と、わざと声を掛けてもらう。
すると、1、2人なら笑って気にしないが、誰もが3人めになると動揺し、洗面所に駆け込んだりする。

 ――要は、これをプラスに利用すればいいわけだ。

 
両親だけでなく、学校の先生や親戚、友だちの親、運動クラブ・スポーツ少年団のリーダーなどに機会があったら「子どもに、この頃、しっかりしてきたねと声を掛けてほしい」などと言っておけば、効果は絶大だ。




●ほめるシステム作り


5 1日1回実践法

 
ほめようと思っていても、いざとなるとほめられなかったり、忘れてしまうことがあるだろう。
「できるだけほめてやろう」ぐらいの気持ちでは、おそらく三日坊主で終わる。

 
そこで、1日1回、ほめる時間を決める。
夕食後にほめるとか、お風呂に入っているときにほめるなど、どんな機会でもいいから時間を決めるのだ。

 
手帳にチェック表を作り、毎日、印を付けるといい。
ヤフーメールやGメールなら、リマインダー機能があり、毎日、同じ時刻に自分宛のメールを送ることもできる。
そのメールに、「さあ、子どもほめよう」と書いておく。

 
ケータイのアラームやスケジュール機能を使って、毎晩8時に「ほめる。ほめる。ほめる」と字を表示するのもいい。

 
いずれにせよ、ほめることをシステム化するわけだ。
ビジネスパーソンならシステム化は得意だろう。




●ほめ上手な父親は、部下操縦も上手になる


6 文章活用法

 
言葉だけでなく、メモや手紙、場合によってはメールでほめるのも効果的だ。

 
面と向かって言いにくいこと、恥ずかしいことも書き言葉なら伝えやすい。

 
一番いいのは「ミニ手紙」だ。女の子は特に喜ぶ。
大きなサイズのポストイットにひとこと書いて、ノートや机に貼っておくのもいい。

 
誕生日や卒業式、入学式などに思いを込めた手紙を送ることができれば、子どもにとっては大切な宝物になる。

 
最後になるが、ほめ言葉のバリエーションも増やしておいたほうがいいだろう。

 
「すごい」だけでなく、「さすが」「やるね」「大したものだ」とか、「ありがとう」「助かるよ」といった感謝の言葉も最大のほめ言葉だ。

 
いつも同じ言葉では、ありがたみがなくなってしまうので、場面ごとに工夫をしてほしい。

 
ほめ上手な父親になれば、きっと部下を育てることも得意になるだろう。