●習い事を止めると、「我慢できない子ども」に育つ?
 

子どもの習い事について、よく相談を受ける。
本人が「やりたくない」といい出したときにどう対応するか、ここで特に悩む親御さんが多いようだ。

 
習い事を始めた以上、できるだけ続けてほしい。
少なくとも何らかの成果が出るまでは続けてほしい、とほとんどの親は思っているはずだ。


そのとき、親はこんな心配をする。


「今は一時的に困難に直面しているだけで、この困難を乗り越えられればずっと続けられるのではないか?」


「ここで簡単に止めさせると、嫌なことがあったらすぐ逃げる子になってしまうのではないか?」

 
こうした心配は当然のことだ。
たしかに、最初は嫌でもだんだん好きになることもある。
少しでも上達すれば、面白くなってさらにがんばるようになるかもしれない。

 
だが一方、何年経っても好きになれない習い事もある。
嫌な気持ちが重くのしかかったまま子ども時代を過ごすのは、不孝なことだ。
もっとその子に合う習い事があるのなら、思い切って替えたほうがいいに決まっている。

 
その習い事が子どもに合っているか見極めるのは、なかなか難しい。
でも、「一時的な感情で止めたいと言っている」と判断するなら、少しごまかしながら続ける手もある。

 
最初に押さえておくべきポイントは、なぜ止めたいのかを子どもにちゃんと聞き、原因を調べることだ。
一時的に自信をなくしている、あるいは友だちや指導者との人間関係で嫌気が差しているようならば、子どもをほめて自信を持たせたり、愚痴を聞いてやることも大切だろう。

 
指導方法について相談したり、担当の指導者を替えてもらう、通う回数を減らす、レベルを下げる、習う場所などを替える、といった対応が有効な場合もある。

 
それでも状態が変わらなければ、その習い事に固執しないほうが、子どものためだ。




●まずは「止めたい理由」を、きちんと訊いて対処する


「簡単に止めさせると、嫌なことからすぐ逃げる子になる」という心配だが、それほど気にする必要はないと思う。

 
私の見聞では、習い事が原因で飽きっぽい子になることはない。
いくつか別の習い事を試しているうちに、きっと合うものが見つかるはずだ。
見つかれば、子どもは無理なく続けられ、熱中するようになる。

 
親としてはそれほど深刻に考えず、「お試し期間」と考えればいい。
才能発見の回り道だし、何事もやってみなければわからない。
いろいろなことの経験自体が人生勉強だし、途中で止めても決してムダにはならない。
これが2つめのポイントだ。

 
小学生のとき1か月だけ卓球をやった経験のある人が、定年で暇になってからまた始めた例もあるのだ。
数か月ぽっちの習い事でも、その子の人生の幅を広げるかもしれない。

 
習い事でも勉強でも「長続きの秘訣」は、本人が興味を持つかどうかだ。
「好きこそものの上手なれ」で、好きになればどんどんうまくなる。
うまくなって親にほめられると、その子の自信になる。

 
だから、親は習い事を止めたり替えることを恐れずに対応しよう。
そしてなにより重要なのは、前述のように、「止めたい理由」を聞くことだ。

 
このとき、子どもの愚痴を共感的に受け入れ、すっきりさせ、できるだけほめてやる。
中には理由を言いたがらない子や、本人にも原因がわからないときもある。
それを踏まえて、じっくりと話を聞き、指導者にも聞いてみることだ。

 
たとえば、水泳教室に通っていたが急にやる気をなくし、さぼるようになった子がいた。
調べてみると意外な原因だった。
その子は体格が良く泳ぎも早かったので、親やコーチが期待して選手コースに替えさせたのが理由だったのだ。

 
その子は水泳は好きでも人と競うのは好きではなく、元の普通コースに戻したら、また喜んで通い始めた。

 
期待を掛け過ぎることが、その子のためにならない場合もあるのだ。




●親の勝手な押しつけは、子どもには「大迷惑」
 

親が好きなこと、かつてやっていたこと、得意なことを子どもに習わせるのは、親が直接指導できる点でメリットがある。
子どももその気になり、本人に向いているのであれば、うまくいくだろう。

 
しかし、「自分がプロ野球に行けなかった夢を子どもに託したい」とか「将来はプロゴルファーになってほしい」などと、勝手に子どもの将来をイメージして強制的にやらせることは危険だ。
成功する例はほんの一握りだし、うまくいかなくて親子関係まで崩壊してしまう例が少なくない。
これが3つめのポイントだ。

 
いちばん大切なことは、子どもの気持ちと、向き不向きである。
絵の大好きな子どもに対して父親が自分の得意な野球を強制し、絵を描くことを禁止した結果、修復不可能なほど親子関係が壊れてしまったケースも見た。


「親の押しつけ」「兄妹や友だちがやっているから」「子どもの苦手を克服する」などの理由で習い事を選ぶと、うまくいかない場合がある。
たとえば、おとなしいから武道で鍛えてやろうと思っても、本人に向いていなければ良くない影響を与える。

 
親が「我が子のため」と思っても、子ども側からすれば「大きな迷惑」なことは多い。
ときに、それは一種の暴力ですらある。
親が強権を発動すれば、子どもは逆らえない。
しかし、子どもの心には不満と反抗心が育つ。

 
もちろん、親が子どもの性格や適性を見て、説得することはあっていい。
しかし、説得が強制になってしまうことが多いので、親は厳に自らを戒めなければならない。

 
たとえば、お父さんがかつて学生時代に打ち込んでいたバレーボールのすばらしさを子どもにも体験させたいと思っていていも、子どもはスポーツより絵に興味があるという場合などでは、(子どもが納得すれば)両方を同時にやる方法もある。

 
この場合でも無理強いはいけない。
1度に2つ始めるのは、子どもにとって負担が大きいので、慎重に対応する必要がある。




●忙しい子ほど「ボーッとする」時間を


「止めたい」と言われたときの対処法ではないが、常に正しいのは、「やりたいこと」を子ども自身に決めさせることだ。
それでこそ、真剣に打ち込めるし、自分を生かしていける。大人も子どもも同じだ。

 
もちろん当然だが、自分で選びながらうまくいかないとか、止めたくなることも、ときにはある。
それでもいいのだ。
「進むべき道」を自分で決める経験をさせることで、初めて自立の精神が養われるからだ。

 
子どもの中には、愚痴を言わず黙々とがんばり続け、その挙げ句、ある日突然「何もかも嫌になる」子もいる。

 
だから、子どもが嫌と言わないからといっても、たくさんやらせ過ぎないことだ。
習い事が多い子は、親が意識して、1日でも2日でもボーッと息抜きできる時間を用意してやってほしい。

 
ボーッとする時間というのは、無駄な時間ではない。
本当に自分がやりたいことをする時間、自分自身に立ち返る時間だ。
無意識のうちに「自分って何だろう」と自分探しをしたり、いろいろなものを心の中で耕す、大切な時間である。

 
こうした時間をおろそかにしてはいけない。
自分と向き合う時間をたっぷり持てた子ほど、「自分はこれをやりたい」「次はあれ」と自ら選び、熱中して続ける力がつく。
この力は、将来、働き出したときに必要な、企画力や創造力につながっていく。

 
逆に、何でも与えられてきた子の知識体系は、いわば受験の「過去問体系」と同じだ。
不要な知識は排除し、限られたことしか覚えないため、創造力も育ちにくくなる。

 
親から強制的に与えられたものだけに時間を注いでしまうと、子どもの中に「これをやりたい」という意欲も「次はあれをやろう」と考える力もなくなってしまう。
それを防ぐためにも、ボーッとする時間を作ってやることは大切だ。

 
また、習い事を上達させたいのなら、「週に○時間練習する」などの無理のない約束を決めるのもいい。
子どもも目標が持てるし、少しずつ力も付いて、張り合いにもなる。
一緒に親の側も「毎日褒める」「週1回は練習を見る」などのルールを決めよう。

 
親子で約束したことは紙に書いて、冷蔵庫など見えるところに貼っておく。
そうすれば口約束で終わってしまうこともない。