教科書は、親が活用して「こそ」、本領を発揮する
新年度が始まり、子どもたちは真新しい教科書を受け取って喜んでいるのではないだろうか。
不思議なもので、勉強の好き嫌いに関わらず、子どもにとって新しい教科書はうれしいものだ。

 
この教科書、実は子どもたちのためだけのものではない。
親にとっても、使いようによっては、子育てにとても役立つのだ。


今回は、子どもを勉強好きにする「教科書の使い方」についてお話しする。


教科書は当然ながら、1年間の子どもの勉強内容を網羅しており、これから子どもが学ぶことを見通すには最適の材料である。

 
親がその内容をひととおり理解しておけば、生活の中で子どもの勉強をサポートし、意欲を高めることができる。

 
たとえば、魚について勉強することがわかったら、料理や買い物の時に魚についていろいろと教えてやる。
手紙やハガキの書き方を学ぶなら、子どもに宛名の書き方やあいさつの書き方を見せてやる。
高学年で、俳句を勉強するときは、事前に新聞の俳句欄などを読み聞かせてやる。
算数で分数を初めて習うなら、ピザを2分の1や4分の1の大きさに切って説明する。

 
こうした、ちょっとしたサポートが子どもに意欲を持たせ、学校で学ぶ際の自信につながる。
親が少し意識しているだけで、勉強好きの子どもにしてやることができるのだ。




●「楽勉」を生かして、子どもの地頭を鍛える
 

ところで、勉強や学習というと「学校や塾で教科書や問題集を学ぶこと」と思う人が多い。
だが、日常的な生活の中にこそ、勉強の元になるものが溢れているのだ。

 
実は教科書ほど抽象的で、子どもにとってわかりにくいものはない。


教科書は、世の中にある具体的なものを抽象化し体系化したものだ。
だから、その根本や本当の意味を理解するためには、生活や遊びの中で具体的なものに実際に触れておくことが大前提となる。

 
よく子どもは「なぜ勉強しなければいけないの?」と質問するが、それは抽象的な教科書を学ぶことを勉強と思っていて、おもしろいと感じてないからだ。
これは親も同じだろう。


「生活や遊びの中で楽しみながら学ぶ」ことも勉強だとわかれば、子どもはそんな質問はしないだろう。
私は、こうした生活の中で楽しくできる勉強を「楽勉」と呼んでいる。

 
この楽勉をプロデュースするのが「プロの親」であり、それが子どもの「地頭」を鍛えることにつながる。

 
植物が生長するには豊かな土壌が必要であるように、子どもが成長するにも「地頭」という土作りが必要だ。
土が良ければ、学校で蒔いたタネがすくすくと成長する。
そうなれば毎日「勉強しろ」などと言わなくても、子どもは進んで勉強し、しかも知識が身につく。

 
楽勉のよいところは、よくわかるだけでなく、忘れないことだ。
抽象的な教科書とはちがって、体験が伴った学習なので忘れにくいのである。
その土台の上で授業を受ければ、子どもはよく理解できる。
だから、勉強はおもしろいと感じるようになる。




●子どもに「知識の杭」を打ち込むべき「理由」
 

講演などで、よく「うちの子は勉強をしないが、どうしたらいいか?」と聞かれることがある。
そのとき、私は逆に質問する。


「学習マンガは家に何冊あるか?」「これまで科学館や博物館などに子どもを連れて行ったことがあるか?」「生活の中で算数に親しんでいるか?」

 
すると、多くは否定的な答えが返ってくる。
これでは「プロの親」とは言えない。

 
学習マンガでも科学館でもなんでもいいから、たとえば星座について読んだり体験したりすれば、子どもは星座に興味を持つようになる。
すると、テレビや雑誌で星座の話が出てくると注目するようになる。

 
注目すると、それが頭の中に入ってきて情報が溜まるようになる。
そのような情報がたくさん溜まった頃、授業で星座を教わると、ものすごく興味を持つことができる。その勉強が楽しくてたまらなくなる。

 
これは、流れる川に杭を打ち込むのと同じだ。
杭があれば、そこにいろいろなものが引っかかって溜まる。
楽勉で知的刺激をするのは、生活という川に知識の杭を打ち込むことなのだ。

 
親は「勉強しろ」と叱る前に、知識の杭をいかに子どもに打ち込むかを考えるべきだろう。
勉強を嫌がるようならば、杭の打ち方が足りないと、子どもを叱る前に親が反省してほしい。




●教科書は、「知識の杭」のガイドライン
 

知識の杭を打ち込むためにも、教科書は格好のガイドラインになる。

 
まず、新しい教科書にひととおり目を通し、目次ページをコピーして冷蔵庫や壁に貼っておく。
そして、新しい学習の始まる数か月前に意識的にその内容に関する「楽勉」を心掛けるのだ。

 
これは広い意味の「予習」である。小学校ぐらいの段階では、復習よりも予習に重点を置いたほうがいい。
なぜなら、その方が授業中に積極的に取り組めるからだ。
復習中心になると、授業中の活躍はできない。

 
4年生の理科では星座を学ぶが、それがわかったら、星座に関する学習マンガや図鑑を買ってやるだけでも大きな違いになる。

 
6年生の理科では人体の勉強をするが、内臓などに抵抗感を持つ子も多い。
あるお母さんは、「人体展」という人体標本の展覧会に子どもを連れて行ったところ、興味を持ったので、すかさず人体図鑑や模型、パズル、学習マンガなどを買ってやった。

 
こうした「楽勉」に役立つモノを「楽勉グッズ」と呼んでいるが、その子は人体について詳しくなり、授業でも活躍した。
これが親の「プロデュース能力」だ。

 
けっして難しいことを求めているわけではなく、関連する場所に連れて行ったり、楽勉グッズを買ってやるだけで、子どもの意欲はまったく違ってくる。




●「楽勉」を引き出す「場所」と「グッズ」
 

もう少し、実際にあった具体例を挙げてみよう。

 
たとえば、歴史が苦手だった子が、郷土史博物館で縄文土器に触れてから、歴史好きになった例などたくさんある。

 
5年生では水産業を学ぶが、大半の子は漁港など行ったこともないし、興味を抱かない。


ある親は、事前に漁港で競りや水揚げの様子を子どもに見せたところ、興味を持ち、そのことを授業で発表した。
苦手意識を持ってから漁港見学するより、その前に見せたほうが興味を持ちやすい。

 
高学年では俳句を学ぶが、ある親はたまたま訪れた場所に山口誓子という有名な俳人の記念館があったので、子どもを連れて行ったところ、俳句そのものに関心を持つようになった。

 
短歌の勉強には百人一首で遊ぶのもいいし、容積の勉強をするなら、お風呂で大きさのちがうペットボトルなどを使って水の量を計って遊ぶのもいい。

 
時間や手間やおカネをかけなくてもいいから「子どもの学びをサポートする」意識を絶えず持ち、そうした発想で、毎日子どもに接してほしい。




●教科書には「ヒント」が詰まっている
 

低学年から中学年になると、授業で国語辞典を使うようになるが、慣れないと、なかなかうまく辞書を引くことができず、辞書が嫌いになる子もいる。

 
ある親は、新年度になるとすぐに学校で使う辞典と同じ辞典を買い、いつもリビングに置いていたという。
そこで、親子の会話やテレビなどで出てくる言葉を次々と引き、引いた単語にマーカーで印を付けた。

 
同時にトイレに50音の表を貼っておき、50音を覚えて辞書が早く引けるように工夫した。
すると、子どもは辞書を引くのが楽しみになり、たちまち引き方が上手になった。
その子が学校で活躍したことは言うまでもない。

 
2年生になると長さの単位を勉強するが、ある親は、リビングやダイニングに定規を置いておき、キューリの漬物が何センチ何ミリあるか「当てっこゲーム」をやった。
学校で、10ミリが1センチなどと概念で教わるよりも、こうしたゲームで学べばたちまち長さの意味や測り方を習得してしまう。

 
重さも同じだ。
料理秤でリンゴは何グラム、卵は何グラムと「当てっこゲーム」をすると、手に持った感覚で卵は50グラムぐらいだと自然にわかってくる。
そうなれば、いろいろな応用が利くし、学校でも友だちに自慢できるから自信になる。

 
理科で学ぶ電気について苦手意識を持つ子が多いが、豆電球やモーターなど子ども用のキットで事前に遊んでいるだけで、授業での意欲が違ってくる。

 
子どもはその気になると勉強が好きになり、力を発揮する。
教科書には子どもを勉強好きにする一番のヒントが詰まっているのだ。
しかも、無理なく「楽勉」に繋げられる。

 
教科書を使った楽勉に徹するだけで、子どもの学習意欲がかなり高まることは間違いない。