子どもが「書くのを自分から好きになる」方法とは
お子さんの日記や作文を、お父さんたちは読んだことがあるだろうか。
忙しくて、日頃子どもとあまり話す機会のないお父さんほど、子どもの書く文章を読んで「字が雑だ」「もっと漢字を使え」「意味がわからない」などと叱ってしまうのではないだろうか。
実は、お父さんが我が子の日記・作文に目を通したときこそ、子どもの国語力を伸ばす絶好の機会なのだ。
学力を伸ばすだけでなく「親子関係も良くなる」、とっておきの方法を今回はお教えしよう。
書くという行為は、大人でも簡単ではない。
わかりやすい文章を書いたり、自分の気持ちや感想を書くことは難しく、二の足を踏む読者も多いのではないか。
だから子どもが自分の気持ちや感情を表現するというのは、とても高いハードルだ。
ここで「一所懸命書いたものを叱って」いては、子どもは書くことを嫌いになってしまう。
一番大切なことは、書くことが好きになり、自信を持って、どんどん書けるようにしてやることだ。
「好きこそものの上手なれ」というではないか。
好きこそが、上達の一番の近道だ。
●子どもの日記や作文はほめることに徹する
子どもや若者、女性に対し、批判したり小言を言いたくなるのが男性一般の性質だが、ここはひとつぐっと我慢。
子どもの日記や作文をほめることに徹しよう。
一切、否定的なことは言わない。
どんな小さなことでも見つけ出し、共感を持ってほめる。
「とてもわかりやすく書けているね」
「自分らしい気持ちがよく出ているね」
「いつも面白い作文を書くね」
「文章を書くのがうまいね」
「読んでいて楽しくなったよ」
「様子が目に浮かぶように書けているね」
「会話の部分が活き活きとしているね」
などなど、どんなことでもいいからほめて、子どもに自信を持たせよう。
大人だって文章や手紙をほめられると、妙にうれしいものだ。
内容についても批判しない。
例えば日記に「今日、A君とケンカした」と書いてあっても、「ケンカなんかしちゃダメだろう」でなく、「お父さんも子どもの頃、けっこうケンカしたな」とか「今も職場でちょっとケンカ状態なんだよ」と自分の体験を話してやると、子どもは喜ぶ。
●国語力を「グングン伸ばす」漢字100点テスト
どんな場合でも「ほめる」ことと合わせて、お父さんならではの、「国語力を伸ばすちょっとしたアイデア」をお話ししよう。
まず第一に、「漢字100点テスト」だ。
大学ノート1冊を用意して、「明日から1日1問漢字テストをやろう」と、子どもに切り出す。
このテストは文字通りのテストではなく、必ず100点の取れるテストだ。
100点を取らせることが目的といってもいい。
1日1問から始めるのが原則。
「明日、この字をテストするよ」と、その場で紙に書いても、指書きしてもいいが、テストする字を予告する。
例えば「道」という字をテストするなら、次の日、大学ノート1ページに大きく「道」を書かせ、花丸を付けて、100点と書く。
もし、自信がなかったり、あやふやならば、指書きなどでおさらいして、正解できるように工夫する。
そして次の日の問題をまた1字教えて、復習しておくように伝える。
そして次の日の問題をまた1字教えて、復習しておくように伝える。
●漢字テストは、とにかく「ほめて100点」がコツ
正解したらほめて、毎日、花丸と100点を付けてやる。
これを2週間ほど続けて間違えることがなくなったら、2字に増やす。
2字とも正解したら、50点ずつで100点を与える。
100点が続くと、子どもは100点を取りたくなるものだ。
学校のテストではそう簡単に100点を取れないので、だんだん自信を付けてくる。
15日連続正解なら、「15回連続100点の新記録だ。どこまで連続記録が伸びるかな」と、子どものゲーム感覚をくすぐりながら、やる気にさせてやる。
2字もいけると思ったら、3字、4字と増やしていくが、大切なのは無理をしないこと。
漢字を覚えさせることより「100点を取らせること優先」気持ちで、せいぜい1日5字程度にしておいたほうがいい。
ノート1冊が60ぺージほどだから、2か月続ければ、1冊丸ごと100点と花丸で埋まる。
そのことが大切なのだ。
1~5字といっても、毎日学習すれば2か月で150字は超える。
たいしたものだ。
もちろん1回だけでは全て覚えられないから、苦手な漢字は何度か繰り返せばいい。
間違ったときも、叱らない。
「惜しいな。連続記録が14回で途切れたね。また、新記録に挑戦だ」と励ましてやる。
1日1字なら朝のちょっとした時間にできる。
平日は「朝も夜も子どもと接する時間がない」お父さんなら、ノートにちょっとしたコメントを書いて、子どもを励ましたらどうだろうか。
問題は付箋でノートに貼っておいてもいい。
●大人も楽しめる国語辞典クイズ
第二に、「国語辞典クイズ」をお勧めしたい。
すでに知っている言葉を子ども用の国語辞典で調べ、なぞなぞクイズのように出題するのだが、大人でも新しい発見があって面白い。
「同じ親から先に生まれた男の人」
もちろん正解は「兄」だが、それではこんな問題はどうだろうか。
「日の出に向かって南側に当たるほう」
正解は「右」だ。
意外とわからなかった人もいるのではないだろうか。
右という意味の説明に、「そういう表現の仕方もあるのか」と気付くだろう。
それでは、これはどうだろうか。
「算数の式を解いて答えを出すこと」
正解は「計算」。
これらは小学生に一番使われているとされる『例解学習国語辞典』(小学館)からの出題だが、簡単な言葉ほど、子どもに説明するのは難しいとよくわかる。
子ども用の国語辞典は使いやすく、わかりやすく作られているので、大人でも役に立つ。
休日など子どもといっしょにゲームのように遊ぶだけで、国語力が身に付く。
テレビや本、教科書などで出てきた言葉を、辞典で調べることも大切だ。
例えば「芸能人」とか「タレント」など当たり前に使っている言葉も調べると、「才能、素質」などという意味があるのかと子どもたちは妙に納得する。
出題したり、調べた言葉にマーカーで色を付けるようにすると、どれだけ辞典を引いたか一目瞭然で、次第に親が言わなくても自分で辞典を引くようになる。
●新聞の「読者の声」をネタに会話
第三に、面白いと思った新聞記事などを読み聞かせたり、一緒に読むと、子どもの知的好奇心を刺激できる。
小学生向けの新聞が一番いいが、大人の新聞でも「読者の声(投書欄)」や「コラム」「マンガ」「文化面」などで子どもが興味の持てる話を見つけたら、記事を読んで説明し、話し合おう。
特に、「読者の声」がお勧めだ。
この覧には読者の主張や賛否の分かれる意見が載っているので、子どもも面白がる。
ときには小学生や中学生の投稿を載せたり、子どもたちの投稿特集を組んでいることもある。
読者の声をネタに子どもたちと話し合うと、子どもの興味の幅が広がる。
子どもが自分の意見を述べたら、「それは面白い意見だね。そのことを日記に書いてみたら」と、うまく書きたくなるように促す。
書くことを習慣付ける上では、親子日記が本当は一番効果的だ。
6回目のコラムで「国語力を大幅にアップする親子日記」として書いたので、ご覧頂きたい。
書いたり会話する中で、ことわざを使えると子どもも面白がる。
「親子の会話でことわざを使おう」に書いたので、参照してほしい。
毎日の生活で、楽しみながら書ける機会を作ってやることが大切で、簡単メモ程度の手紙や、カードのやりとりを習慣にしておくことは、国語力のアップに役立つ。
●子どもの卒業式には手紙を送ろう
例えば、次のようなことを実践している家庭もある。
お母さんの誕生日に、お父さんと子どもでお祝いのカードを書く
お父さんのお弁当に、お母さんと子どもで簡単な手紙を添える
子どもの誕生日に、手紙やカードを送る
子どもの運動会などを見た感想を書いて、子どもに渡す
家族間の連絡事項を、ホワイトボードに書く
特に節目には、父から子へ手紙を書くことをお勧めする。
卒業式など、6年間を振り返った思いを面と向かって言えなくても、手紙なら書けるものだ。
返事を期待せずに書くことが大切で、子どもはこうした手紙を大事にするし、親に対する愛情や信頼感を強く感じる。
親が節目に手紙を送っていれば、その喜びを知っている子どもも、何かのきっかけで親に手紙を書くようになるかもしれない。
親に書かないまでも、少なくとも、友だちや知人に手紙を書き、周囲から信頼されるような大人になるだろう。そのことが重要なのだ。
初出「親力養成講座」日経BP 2009年4月14日
初出「親力養成講座」日経BP 2009年4月14日