家庭用ゲーム機やケータイ、インターネットのネットゲームにはまってしまう子どもが問題になっている。
ゲームとどのように付き合わせればいいかという相談もよく寄せられる。

 
まず、ゲームを与えるなら、その前に使い方のルールを決めて、紙に書き、子どもに誓いのサインをさせて、張っておくことだ。
ルールを決めても、明文化して壁などに張ってある家庭は意外と少ない。
紙に書かないと、いつの間にか約束がうやむやになってしまう。


わたしがよくお勧めするルールが、「チケット制」だ。
例えば、1枚のチケットで30分だけゲームをすることができるものとして、ゲームの時間を1日1時間と決めたら、1週間の最初に14枚をまるごと渡してしまう。

 
そして、使うときにチケットを親に渡すわけだ。
こうすると、30分という時間がチケット1枚という「もの」として認識することができる。




●ゲームで欲望をコントロールする練習
 

そうなると、子どもは工夫し始める。
例えば、土日に集中的にゲームをするために平日はほとんどチケットを使わないとか、逆にもらった日にパーッと使ってしまう子もいるかもしれない。

 
後先を考えずにパーッと使ってしまう子が多いかもしれないが、そうなるとチケットがなくなるので、使える時間もなくなってしまうことが分かる。
時間が視覚化できれば、子どもは失敗した後、自分の傾向や性格を考え、コントロールする方法を学んでいく。

 
パーッと使ってしまうことを親がしかるのではなく、子どもが自分の傾向をどうとらえて、どのようにコントロールすればいいかを親は支援してやるべきだろう。

 
この世の中、お金も含めて欲望を刺激するものが多い。
ゲームと上手に付き合うことで、自分の欲望をコントロールする練習になる。

 
例えば、1時間勉強したら、チケットを1枚だけ使って、また1時間勉強するといったサンドイッチ方式でもいいし、その日、やるべきことをすべて終えてからチケットを使わせるなど、子どもや家の事情に合わせて工夫しよう。




●親子関係がうまくいっていることが前提
 

気をつけなければいけないのは、30分にこだわらないこと。
30分間見張っていて、ゲームの途中で問答無用でやめさせるのではなく、ゲームの内容に合わせてきりのいいところでやめさせる。

 
そのためにも、子どもが遊んでいるゲームがどんなゲームなのか親も知っておくといいだろう。

 
もし、5~10分経ってもやめようとせず、全く言うことを聞かない場合は、そもそもゲーム以前の問題だ。

 
親子の信頼関係がうまくできていないと、どんな方法でもうまくいかない。
いつも子どもをしかり続けていたり、親のご都合主義で許したり許さなかったりしていると、子どもは言うことを聞かないだろう。

 
ノウハウや方法論をすぐ知りたがる親もなかにはいるが、こうした「ノウハウ・コレクター」は方法の前に子どもに対する接し方や親子関係づくりをまず考えてほしい。

 
親子関係に問題があり、子どもが他に楽しみを持っていない場合、ゲームにのめり込む危険性が高いので、ゲームうんぬんの前に子どもの話をじっくり聞いてあげよう。

 
「魔法の方法」など世の中にないのだから、まず親が子に向かい合って、しからず、説教せず、話を聞いてやってほしい。

 
また、なかには「ゲームは絶対に与えない」という信念を持つ親もいるだろう。
それはそれでいいのだが、ただリスクもあるということを知っておいてほしい。

 
現代の子ども社会では、ゲームを媒介とした人間関係が占める要素が大きい。
「ゲームを与えない」といったときに、我が子がその中で耐えられるのか、友だち関係づくりに問題が生じないかよく観察して、判断してほしい。




●ゲームで子どもの好奇心を発展させる
 

ゲームというとマイナスイメージが強いが、必ずしも買い与えないことがいいとは限らない。
友だち付き合いのきっかけになることもある。

 
もし、ゲームを与えても、親子関係がしっかり築かれており、子どもが他に熱中することがある場合、決してゲームにのめり込むことはない。
子どもなりに適度に遊ぶはずだ。

 
ゲームを与えるならば、ぜひ、ゲーム以外に熱中できることを子どもが見つけられるよう親がサポートしてやってほしいと思う。
少なくとも、熱中する「芽」を摘まないようにしてほしい。

 
例えば、ゴミみたいな物を拾って集めていても、セミの抜け殻を拾ってきても、「汚いから捨てろ」と言わず、その趣味を発展させてやる。


セミの抜け殻から昆虫への興味を広げるとか、親も一緒に抜け殻を拾いに行くなど、熱中する楽しさを教えてやろう。
それができる親ならば、子どもがゲームにはまってしまうことは少ないだろう。

 
ゲームソフトも悪いものばかりではなく、学習の役に立つものもある。
「脳トレ」も使いようによっては計算や漢字能力をきたえる勉強になる。
三国志や戦国時代物のロールプレーイングゲーム(RPG)のソフトで歴史好きになった子もいる。

 
ある東大生は、中高時代に三国志のソフトの登場人物160人の名前や能力を暗記して、すっかり歴史好きになり、三国志の本も読破したという。

 
インターネットで調べると、歴史好きで歴史ものRPGソフトのファンはたくさんいる。

 
歴史だけでなく、例えば、釣りゲームに熱中していたら、本物の釣りに連れて行くなど、ゲームを本物体験、熱中体験に発展させる発想が大切だ。