いままで素直に返事やあいさつをしていた子どもが返事をしない、ぶすっとしていることが増えたら、反抗期の始まりだ。

 
ある小学校6年生の男の子は、「みんなと同じモノを持ちたい」「みんなが宿題をやらないので自分もやらない」と言い出した。
「みんな」といっても、親しい友だちだけらしい。

 
これは自分の考えを正当化したり、親を説得するために「みんなも」という言い方をしているのである。
それまでは、与えたモノを喜んで使っていた子どもが「あれがほしい」「これがほしい」と要求し出す。


 
しかも、高学年になって知恵も付いてくるので、言い方もうまくなる。
親として対応に悩むところだろう。

 
昔はこの第2次反抗期が始まるのは中学生からといわれていたが、ずいぶん低年齢化しており、専門家の意見としてもわたしの実感としても、多くの子は小学校4年生後半から始まり、高校生まで続くようだ。

 
その理由は諸説あるが、一つには情報があふれすぎて、子どもたちが頭でっかちになっているからだろう。
特に女の子の反抗期が早くやってくる。

 
大人を見る眼が変わってきて、批判的になり、口を利かなくなったり、にらみつけたりする。
それまで素直だった子の変貌ぶりに親は愕然とし、「育て方を間違えたか」と不安に襲われるようだ。

 
しかし、それは逆であり、ちゃんとした教育をしてきたからこそ、反抗期が訪れる。
反抗期は健全な成長の証である。
決して、子育てに自信を失う必要はない。




●反抗期に親の権威を誇示するな
 

子どもがどんな態度を取っても、親は常に「いま反抗期なのだ」と思っておくことが必要だ。
一人前になりつつあるプロセスだと広い心で見守ることである。

 
親は、暴れ者の孫悟空を掌で遊ばせたお釈迦様のような優しさで、子どもを包み込んでやる。

 
とはいえ、目の前で憎まれ口を叩かれたり、無視されると腹が立つのも当然だ。
イライラしていると、ついつい「何だ!! その態度は!!」と怒鳴ってしまうかもしれないが、決して子どもと同じレベルで言い争ってはいけない。

 
特に専業主婦のお母さんは、毎日、反抗期の子どもと顔をつきあわしていると、イライラして怒鳴りがちだが、お父さんの協力を得て、たまにストレス発散しながら、子どもとうまく距離を保つことが必要である。

 
反抗期の子どもは大人からの強制を一番嫌がる。
親はもはや強制はできないものと認識し、できるだけ話を聞いてやることだ。

 
何を聞いても「べつにー」とか「うるさいな」としゃべらないこともあるだろうが、そこで「いい加減にしろ!!」と言わないことだ。

 
中にはそのような態度で「自分がコケにされた」と感じて感情的になるお父さんもいるようだが、親の権威を誇示しようとすると、逆に権威が傷つくだけだ。

 
無視されても放っておこう。
決して親を嫌っているわけではなく、発達中の子どもの心が否応なくそのような態度を取らせてしまうのである。

 
腹立ちまぎれに子どもの人格を傷つけるようなひどい言葉をぶつけると、親子関係に悪い影響を与える。
泰然自若としていれば、いずれ元に戻るが、そこで亀裂が生じると、将来に禍根を残す。
決して、人格を否定する暴力的な言葉を口にしてはいけない。




●子どもとの交渉も心を発達させる
 

反抗期には、親に聞かれてもろくに答えないくせに、欲しいものは欲しいと言ってくる。
そのときも「ふざけるな!!」などと完全否定や門前払いをしてはいけない。

 
例えば、「○○のスニーカーを買ってほしい」と言ってきたとき、「そんなもの買わないよ」とか「スニーカーならこの前買ったばかりだろう」と門前払いを食わせないことだ。

 
まずは話を聞いてやる。

 
「どんなスニーカーなんだ?」あるいは「あれは確かにカッコいいね」などと受容と共感を示し、「どうしてそれが欲しいの?」と理由を聞くことだ。

 
その上で、必要だと思えば、買ってやればいいだろうし、必要ないと思えば「まだ、いま履いているスニーカーが使えるのだから、買うわけにはいかない」と拒否する。

 
門前払いもいけないが、子どもに媚びを売ることもいけない。
断ると、より反抗的な態度を示すかもしれないが、親として壁のように立ちはだかり、主張を通すことは重要である。

 
反抗期であろうとなかろうと、親の考えや価値観をはっきりと示す。
そうしないと、子どもは反抗する機会を失い、逆に親や世の中をなめるようになる。

 
頭から拒絶して強圧的に考えを押しつけるのではなく、話を受容的・共感的に聞いた上で、親の主張を冷静に伝えることだ。

 
それでも、「欲しい」と言ってきたら、今度は親子の交渉である。
ここはお父さんの出番だ。
子どもと交渉し、妥協点を見つけていくプロセスは社会に出るための重要な勉強である。

 
「スニーカーがどうしても欲しい理由」をさらに説明させたり、条件を付けたり、「次にスニーカーを買うときには欲しいものを買う」ことを約束したり、お互いが主張して、相手の言い分を受け入れつつ、話し合いをする。

 
こうした大人らしい態度が子どもの反抗期を有意義に生かし、子どもの心を発達させるのである。