今、「学校裏サイト」を舞台にしたいじめが広がりつつある。

 
裏サイトとは学校の公式サイトとは関係なく、生徒が個人的に作ったサイトを指す。
ただの情報発信や情報交換ならば問題がないのだが、そのサイトの掲示板で特定の生徒を名指しで誹謗中傷するケースが増えてきた。

 
中高生が中心だが、掲示板にいじめる相手の実名や携帯電話番号、メールアドレスなどを公開し、「うざい」「死ね」「きもい」など口汚い言葉を書き連ねる。


中には、いじめたい相手の実名数十人分を掲示板にリストアップする悪質な例もあるという。

 
こうした掲示板を見た者が被害者のアドレスに中傷メールを送ったり、携帯電話にいたずら電話や無言電話をかける。
それが複数の人間から毎日繰り返されれば、大人だって参ってしまうだろう。

 
こうした悪質な裏サイトには学校名など書いていないから、親や教師は検索することができず見ることができない。
URLは口コミで伝わるのだ。

 
恐ろしいのは対象にされた子どもたちが原因も分からないままメールや携帯電話でいじめられることだ。
いじめる側は直接、相手と対面せずにすむので、安易にいじめに参加しやすい。




●ネットや携帯電話による誹謗中傷は犯罪
 

こうした学校裏サイトは出るべくして出た問題といえる。
なぜなら、大人の世界にも見るに耐えないような掲示板が多数、存在するからだ。

 
裏サイトへの対策は専門知識も必要とするため、学校単位では対応が難しい。
本来ならば、文部科学省や都道府県の教育委員会が対策チームを作って、実態の把握や解決の相談、啓発活動などを行うべきなのだが、いまだに具体的な動きはない。

 
これを放置すると、昨年後半に多発したようないじめ自殺という最悪の事件に結びつくおそれがある。

 
いじめる側の多くはアドレスや携帯電話では自分の身元が分からないと安心して、罪悪感もなく、卑劣な行為を繰り返す。

 
そのため、警察が本気になれば発信元を特定できるし、誹謗中傷や侮辱は犯罪行為として補導や家裁へ送致される対象になることを教えなければならない。

 
警察にすべての裏サイトの発信元を特定してくれとは言わないが、割り出すことは可能だと言うだけで一定の抑止効果はあると思う。

 
もし、裏サイトやメール、携帯電話のいじめで悩んでいる子どもがいれば、一人で問題を抱え込まないように、教育委員会などが相談窓口を作って積極的に広報するべきだろう。

 
保護者も学校側も深刻な実態を知り、自分の子どもがこうした裏サイトに関係していないか、いじめに加担していないか、あるいはいじめを受けていないかしっかりと確認するべきだろう。

 
そのためにも、パソコンや携帯電話は子どもに任せっぱなしにせず、一定のルールを決めたり、定期的に親がチェックしたりするようにした方がいい。

 
8月28日に放送されたNHKのクローズアップ現代「急増!子どものネット被害~携帯サイトに潜むワナ~」もこの問題を取り上げ、群馬大学の下田博次教授が具体的な提案をしていた。

 
それによると、携帯電話のインターネット機能は使えないようにして通話やメールだけにするとか、インターネット機能を使うにしてもフィルタリングサービスで有害サイトへのアクセスを制限するなどの方法があるという。

 
フィルタリングサービスも完璧ではないが、かなりの効果はあるとのことだった。




●明るくてスポーツのできる子もいじめられる


現在のいじめはどんな子でもターゲットになる。
体が大きくて力のある子も、元気で活発な子も、明るくてスポーツができる子も、友だちの多い子もいじめられることはありうる。

 
「エッ、この子が」と思うような子どもが密かにいじめられていることもある。
残念ながら担任がそれを見抜けないことはよくある。
いじめる子は巧妙に隠れて行うし、ネットを使ったいじめでは発見のしようがない。

 
こうしたいじめが増えている背景には、親が忙しすぎて、愛情を実感できない子どもが増えていることがあるのではないか。

 
多忙でイライラしていると、ついつい子どもに対しては小言や文句が増えてくる。
じっくりと話を聞いてあげる心の余裕を失って、すぐにしかりつけてしまう。

 
例えば、「今日、○○君とケンカしちゃった」と子どもが言っても、「そんなことをするな!!」としかるだけになってしまう。

 
こういうときは、じっくり子どもの話に耳を傾けて、その思いを吐き出させ、受け入れて共感してやることが大切なのだ。


たっぷり受け入れてもらい、共感してもらうだけで、子どもの気持ちはすっきりする。
そうすると、「自分にもいけないところがあったのではないか?」「これからはもっと相手の気持ちも大事にしよう」などと考えるようになる。

 
ところが、正直にけんかの話をしても受容的共感的に聞いてもらえなかったり、しかられたりすると、子どもはますますストレスがたまってしまう。
そして、そういうストレスを自分より弱い子にぶつけることになる。

 
いじめている子どもには必ずといっていいほど、このような親子間の問題がある。
ネットや携帯電話を使ったいじめも本質的には子どもの満たされない心の問題であり、親子関係に起因するものが大きいのだ。
ネットというインフラの普及だけにこの問題の原因を求めるのは間違っている。




●「40人学級」もいじめの背景
 

いじめの背景でもう一つ、重要な問題が「40人学級」である。

 
日本は先進諸国の中で、唯一1クラス40人学級のままである。
例えば、イタリアは15人、オーストラリアは20人、スウェーデンは22人、米国は22人(州平均)、スイスは26人、ドイツは28人、デンマークは28人である。

 
1人の教師が40人の6年生に目を行き届かせることは不可能といっていい。
40人の中で巧妙に隠れながらいじめをしていたら、目を皿のようにしても見抜けないだろう。
もともといじめは、先生だけには分からないように行われるのである。

 
1クラス20人になれば、絶対にいじめを見抜けるとは言えないが、発見できる確率はとても高くなる。20人ならば教師や生徒同士の関係がより濃密になり、子どもから聞くことのできる話も深くなる。

 
米国は今後、教員を10万人増員して、1クラスの人数を減らす計画だ。
イギリスも3年間で5万人のアシスタントティーチャーを増やす。

 
かつては世界中から教育の充実ぶりを賞賛されたこともある日本だが、今や教育にかける費用では先進国の中で圧倒的に低い。
校内事務や保護者・地域への対応に追われ、子どもに十分な時間を割けなくなっている教師を救い、教育環境を充実させるためにも、教員増員を行って、せめて30人学級を実現してもらいたい。




●我が子がいじめ加害者にならないために
 

我が子がいじめ加害者などにならないために、一番大切なことは「思いやりのある子」に育てることだ。
そのためには親が我が子を「思いやりながら育てる」必要がある。

 
「そんなことは当たり前だし、やっている」という声が聞こえてきそうだが、実は親はそのつもりでも、子どもから見るとそうではないことが多い。
「子どもから見る」という姿勢がとても重要だ。

 
そのためには、まず子どもの状態や気持ちを理解すること。
言い換えれば、「もし自分だったらどうか?」と子どもの立場を自分に置き換えて想像することだ。

 
それが、日常的にできるようになると、自然に子どもに対する受容と共感が生まれてくる。
この「理解」と「受容」と「共感」が一番大切である。

 
仕事も重要だろうが、多忙にかまけて子どもに対して思いやりを忘れ、積極的な働きかけをしないと、子どもがいじめ加害者になってしまう危険性があることを理解していただきたい。

 
仕事の時間を削って、子どもと過ごす時間を大切にするという発想を持つことが重要だろう。
企業も、父親を、子どもや家族に「返してあげる」工夫をするべきだ。

 
次回は、いじめを早期発見するために注目しておきたい「いじめのサイン」や、その対策、いじめに対するお父さん方のかかわり方などについてお話しする。

初出「親力養成講座」日経BP 2007年9月21日

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