友達力を身につけるには、思いやりの心と一人でいる力が大切だと前回、述べた。


そのため、親は思いやりを持って子どもを育てる必要がある。ところが、この思いやりを誤解している親が少なくない。

 
例えば、朝、学校へ出かける直前になって、子どもが「国語の教科書がない」と騒ぎ出したとき、「自分で前夜にちゃんと用意しておかない方が悪いのだから、ここは懲らしめるために放っておこう」と考える。
特に父親はそう考えがちだ。

 
しかし、こうしたやり方は決してよい結果を生まないということにわたしは気付いた。
大人の理論では「自業自得だから仕方がない」と思うが、子どもの気持ちは違う。
お父さんは冷たいと思うのだ。

 
道を歩いていて子どもがつまずいて転んだとき、「何をぼやっと歩いているんだ」と叱ることは子どもにとって何の役にも立たないし、親子関係に傷を付ける。
自業自得理論はそれと同じだ。

 
転んだら、まずは助け起こしてあげるのが第一だ。
子どもは寄り添って、共感を示してもらうと心を満たすことができる。
そういう子が思いやりのある子に育つ。




●自業自得理論では親子関係が壊れる
 

自業自得理論で育てると、友達が何かをなくしても一緒に探してあげることができない。
「なくした自分が悪いんじゃん」となるからだ。
それは思いやりではない。

 
一緒に探してあげて、その子の苦しみや悩みを共感できることが思いやりなのだ。
まずは受容と共感が第一、しつけや指導はその次だ。

 
実は自業自得理論で、子どもの態度や性格が改まるかいうと、必ず失敗すると断言できる。
整理整頓が苦手な子が、自業自得で懲りたからしっかりするかといえば、それは無理だ。

 
大人だって、自分を簡単には変えられない。
分かっちゃいるけど変えられない。
ましてや子どもが変えられるわけがない。

 
父親はビジネス社会に身を置いているので、自業自得の発想になりやすい。
すべては自己責任。
信賞必罰が社会の掟だ。
だが、これを子どもに当てはめてはいけない。

 
実際にあった話だが、ある父親が整理整頓のできない息子に腹を立て、「ちゃんと片づけられないなら、捨てるぞ!!」と言って、子どもが大事にしていた作りかけのプラモデルを本当に2階から庭に捨ててしまった。

 
こうした強硬手段に出ると子どもは無力だ。
確かにそれ以降、片づけをするようになった。
ところが、それは父親の前だけのことだった。
父がいないところでは相変わらず片づけることができなかった。

 
その後、彼は父親を嫌うようになり、成人してからは家に寄りつかなくなったそうだ。
父親は愛情からそうしたのかもしれないが、結局、整理整頓ができないという欠点を矯正しようと必死にやりすぎて、肝心の親子関係をダメにしてしまった。
こうした愛のムチは百害あって一利なしだ。

 
人間にはできないことがある。
わたしも子ども時代から整理整頓が苦手で、いまだにうまくできない。
結局、「三つ子の魂百まで」だ。


できないことを無理やり矯正するのではなく、それを受け入れてあげることが思いやりにつながる。
許すことができないと、人間関係は最後は崩壊せざる得ない。




●父親は子どもを理解し、受け入れること
 

子どもがいじめにあったとき、「そんなやつにはやり返してやれ」という父親も多いだろうが、それができないから子どもは苦しんでいる。
だから、いじめなのだ。
やり返せるぐらいだったら、ケンカであっていじめではない。

 
我が子の弱みを受容し、共感で包み込んであげることは母親だけでなく、父親の役目でもある。
いまだに「父親は威厳を持ち、子どもに進むべき道を指し示すべきだ」という人もいるようだが、本当の信頼関係のないところで、いくら威厳や強さを示しても、子どもは父親を尊敬しない。

 
「巨人の星」の星一徹が父親の理想像などと勘違いしていると、親子関係が危うくなる。
「巨人の星」は高度経済成長の時代だから通用した。
いまや、「巨人の星」など夜空のどこにも見あたらないし、星一徹はナンセンスな存在だ。

 
社会が成熟し、価値観が多様化する中で、親は子どもに道を示すべきではないし、できなくなっている。

 
非行歴のある子や親子関係が断絶した子の話を聞くと、「親に何を言ってもダメだから」と言うことが多い。
自分の気持ちやできないことを親が受け入れてくれないことから、子どもはストレスをため、親や社会に反発するようになる。

 
父親がどしっと構え、子どもを理解し、受け入れてあげれば、子どもはそこで父親の大きさを感じ、それが尊敬の気持ちにつながる。

 
そのためには子どもとの会話を豊かにすることが必要だ。
母親とはよく話すが、父親とは話さないという子が多いが、それは子どもにとって大きな損失だ。
父親から吸収できることが吸収できなくなるからだ。




●子どもと豊かな会話をしよう
 

なぜ、子どもが父親との会話を嫌うかというと、まず説教が多いからだ。
何かにつけてすぐ子どもへの説教になる。
すると、会話へのモチベーションが下がってしまう。

 
もう一つは否定的な話し方をするから。
例えば「4年生にもなってまだそんな字を書いているのか。もっとていねいに書かなきゃダメだ」「脱いだ靴はそろえなきゃいけない」など。

 
これらの否定的言い方には相手を非難、攻撃する要素が必ず入ってくる。
小さな子どもはそれを強く感じ取り、自信を失っていく。
ところが、同じことでも肯定的に言うと全く違ってくる。

 
「字を丁寧に書くと賢く見えるぞ」「脱いだ靴をそろえると気持ちがいいね」

 
毎回、肯定的に言うのが難しいなら、単純な命令形で伝えた方がはるかにいい。

 
「字を丁寧に書こう」「脱いだ靴をそろえなさい」

 
わたしはある本で、否定的な言い方の弊害を知り、以来、口に出す前に肯定的な言い方に変えて話すように努力してきた。
すると、だんだん考え方もプラス思考になってきた。
これはわたしの実体験なので、自信を持ってお勧めしたい。

 
もう一つ、会話で心がけてほしいのが、子どもを褒めることだ。
いつも親に叱られている子は友達も叱るようになる。
いつも親に褒められている子は友達も褒めるようになる。
その方が当然ながらいい友達関係を作ることができる。

 
そして、一番大切なのは子どもの話をじっくりと聞いてあげることだ。
話の聞き方は友達力に大いに関わる。

 
相手の話を聞かずに自分のことだけしゃべる。
聞いている振りをして実は聞いていないので会話にならない。
相手の話に反応しない‥‥大人だってこうした人とは話したくなくなる。
子どもも同じである。

 
まずは親が模範を示して、ちゃんと子どもの話を聞いて、理解し、共感してあげることだ。
そうすると、子どももそうした聞き方を身につけることができる。

 
父親の方から子どもに話すときには説教やアドバイスではなく、自分の子ども時代や仕事などの話をすると子どもは喜ぶ。
特に子ども時代の話は大好きだ。
それが会話のモチベーションになる。

 
子どもの友達力とは結局、親子関係から発している。
親が子どもと豊かな人間関係を作ることこそ、最大の子育てといえよう。

初出「親力養成講座」日経BP 2007年7月13日

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