子どものいじめが社会的問題になり、我が子が学校でうまくやっているのか気になる親も多いはずだ。実際、親から寄せられる質問で子どもの友達関係の悩みはとても多い。


社会に出て、誰もが気付くのは知力や能力があっても、人間関係力が未熟だと仕事を成し遂げることができないということだ。
難しいテスト問題を解く能力が必ずしも仕事に生かせるとは限らない。
それは、仕事が一人で完結するものではなく、人間関係や組織を必要とするからだ。

 
この人間関係力を養うのが友達関係だ。
教師たちもクラスの子どもたちの人間関係がうまくいくことを一番願っている。



わたしは友達との人間関係をうまく調節する力を「友達力」と名付け、3月に本を出した。
『「友達力」で決まる!』(光文社)は23年間の教師体験を通じて、子どもたちの人間関係力をどのように育てたらいいのか試行錯誤してきたエッセンスを詰め込んだものだ。

 
そして、結論として言えるのは友達力を作る基礎は家庭における親子関係にこそあるということだ。
子どもの学力や人格を含めて総合的な能力を育てるのに親の力は必須である。
わたしはそれを「親力」と名付け、わたしの名前もその「おやのちから」に由来している。

 
本連載「親力養成講座」は男性読者が多いので、特に父親がどのように親力を発揮することができるのか、具体的な事例を交えながら述べていきたい。
大げさに構えないでも、ちょっとした意識や考え方を変えるだけで、父親が子どもの教育に貢献できることは多い。このコラムが少しでも子育てに役立つことができれば幸いだ。




●思いやりのある子こそクラスの人気者
 

父親が描く理想の子ども像とはどんなものだろうか。
スポーツが上手で、勉強ができて、見た目もカッコいいと三拍子そろった子はさぞかしクラスの人気者になると考えるお父さんも多いのではないだろうか。


実際、クラス替えをして4~6月くらいまでは、こうした子がちやほやされる。

 
かつてわたしが教えた学校で、隣のクラスにいた男の子はまさに三拍子そろっていた。
いわゆるイケメンで、服もセンスよく、運動神経抜群でドッジボールではいつも大活躍。
面白いことを言っては友達を笑わせるのも得意で、最初はクラスの中心になった。

 
ところが、6月くらいになると、その子と遊んでいる子どもたちから苦情が出るようになった。
勝手にドッジボールのルールを変える、ボールを横取りする、誰かを泣かせた、ある女の子の悪口を言うなど、その子が実はジコチュー(自己中心的)な性格であることが分かってきたのだ。

 
担任はこの子を一生懸命に指導したようだが、なかなか変わらず、ついにはほとんどの子が彼と遊ばなくなってしまった。

 
その反対に、スポーツが得意でなくても、見た目が地味で、面白いことも言わない静かな子でも、思いやりのある子はだんだん好かれるようになる。
思いやりのある子がいつも多くの友達に囲まれているとは限らない。
数人の友達と一緒にいたとしても、実は他の友達からも好かれていることが多い。

 
子どもの友達関係というのは不思議なもので、いつも一緒に遊んでいる子同士が必ずしも好意を感じている者同士とは限らない。
あまり好意を感じていないのに、いろいろな事情で一緒にいることもあるのだ。
だから、表面的な付き合いで子どもの人間関係を判断してはいけない。

 
クラス中から好かれている子は多くの場合、いつも相手の気持ちを考えて話したり行動している。
友達が嫌がることはしないし、傷つけるようなことは言わない。
友達が何かをなくしたら一緒に探すことができる。
自分が主張したいことも相手の気持ちを考えながら話すことができる。

 
こうした思いやりのある子はクラス全体にいい影響を与える。
それはクラス内に生まれるグループの垣根を超えていろいろなグループの子たちと友達になり、人間関係を和やかにしてくれるからだ。

 
それこそが友達力を持った子どもである。
このような子はめったにいないように思うかもしれないが、そうではない。
必ずクラスには数人いるものだ。
思いやりを持った子に育てることこそ親の役目である。




●「友達たくさん」は大人の幻想


子どもの友達関係で親が悩むのは、なかなか友達が増えないということだろう。
いつも特定の子と遊んでいて、友達の数が増えない。
しかし、まず誤解を解いてほしいのは友達がたくさんいることがすばらしいことでもなければ、わたしの言う「友達力」でもないということだ。

 
現代の子どもたちは幼稚園や保育園時代から「友達をたくさん作ろう」という教育を受けている。
親も友達の数は多い方がいいという幻想を持っているのだろう。

 
『友だち100人できるかな』なんていう歌があるほど、みんな仲良し、みんな友だちが金科玉条のようになっている。

 
しかし、大人だって交友関係が広い人もいれば、狭い人もいるだろう。
狭くても本当の親友を持っている人の方が豊かな友人関係を築いているかもしれない。

 
子どもだって、多くの友達を作るのが得意な子と、そうでない子がいる。
それは個性であって、友達作りに全く興味を示さないような極端なケースを除いて、友達が少なくても心配する必要はない。

 
わたしが言う「友達力」とは、友達を作る力ではなく、友達との人間関係をうまく調節する力である。思いやりを持って相手に接すると同時に、ときには友達から離れて「一人でいる力」を身につけることも大切だ。

 
「みんな仲良く」主義が強すぎると、一人でいることに親も本人も不安を抱くことになるが、必要に応じて友達から離れる力がないと、集団的ないじめに加担することになる。

 
友達から誰かをいじめようと誘われると断れず、気が進まないまま一緒にいじめてしまう。
いじめないと自分が逆にいじめられる、仲間はずれにされるという不安が強い。
これが現在のいじめ問題の背景にある。

 
一人でいる力のある子は人をいじめるようなグループから離れても不安を感じることなどない。
だが、実際にそれができる子どもはとても少ない。
そもそも、一人でいることも大切だと教わったことがないのだから。

 
一人で過ごし、自分のやりたいことに熱中する時間は子どもにとって必要不可欠だ。
そこで、自分の得意分野を伸ばし、内面を豊かにし、個性を磨き、自分の世界を作ることができる。

 
お父さん方も我が子に「友達と遊ぶだけではなく、自分一人で楽しむ時間も大切だよ」と語りかけ、その子が好きなこと、熱中できることに取り組めるような環境を作ってあげてほしい。
それが友達力を育てることになる。




●「一人でいる力」を育てる
 

一人でいる力を身につけるには何かに熱中する体験が必要だ。
絵でもスポーツでも、音楽でも読書でもマンガでも何でもいいから、子どもが好きなことに熱中できるように親が支援する必要がある。

 
例えば、歴史が好きな子だったら遺跡や博物館に連れて行き、歴史マンガや歴史かるたを買ってあげる。

 
子どもは何かが好きでも、自分の力だけではそれを広げたり、深めることはできない。
ところが親の手助けがあると、グンと伸びる。

 
かつての教え子で、釣りの大好きな子どもがいた。
小学3年と4年生の時に受け持ったが、家では釣り道具を驚くほどきれいにそろえていた。
彼は3年からサッカーを始めたが、釣りという熱中体験を持っていたせいか、たちまちサッカーにも熱中し、そのうちキャプテンになり、とうとうサッカー名門高校に進学し、そこでもキャプテンになった。

 
自分の世界を持っている人は強い。
一人になっても困らないし、嫌なものは嫌と言えるようになる。
仮に一時的な仲間はずれになっても、熱中することがあると自分を支えてくれるし、いつかはジコチュー人間から友達が離れ、自分の元に戻ってくる。

 
そのためにも「みんなと違っているからいい」と子どもをどんどん褒めてあげることが必要だ。
親や教師はとかく、みんなよりうまいとか、早いとか、点数が高いことを評価しがちだが、そうではなくて、独創性や個性を褒めることも大切である。

 
「人と違うことを考えて、すばらしいね」「独創的でいいね」「誰も思いつかないアイデアだね」「個性的でいいね」など、異質なものを生み出す大切さを評価してあげることだ。

 
そして、一人でいる力を身につける上で、一番大事なことがある。
それは「自分が親に受け入れられている、愛されている」ことを子どもに実感させることだ。
理解と受容と共感によって親の愛を実感している子は人間としての根源的な自信を育み、人への思いやりも持てるようになる。

 
重要なことは親が愛情を持っているだけでなく、子どもに「実感させる」ことである。
愛のムチは親の言い分であって、子どもから見れば単なるひどい仕打ちに過ぎない場合が多い。

 
特に父親は一般的に「実感させること」がヘタで、愛のムチを誤用しているケースが多いが、それは次回、お話ししよう。

初出「親力養成講座」日経BP 2007年6月29日

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