夏休みがいよいよ始まった。
子どもたちにとっては年間で最も楽しいときだが、ため息をついているお母さんたちも少なくないはずだ。
日中、仕事をしているお父さん方には分からないかもしれないが、毎日1日中、ずっと付き合っている母親にとっては気が重く感じるときもある。



 そして、ついついガミガミと怒りがちになる。
イライラしながら子どもをしかれば、親子関係に悪い影響を与える。


 だから、お父さんたちは母親と子どもの緩衝剤として、ストレスのたまっているお母さんたちを救ってあげるという発想を持つことが大切だ。


 休みの日などには子どもたちを連れて出かけるとか、1日中面倒を見て、お母さんたちを開放してあげよう。
「ゆっくりとショッピングでもしてきたら」などと言ってあげれば、夫の株が上がることは間違いない。


 そして、子どもたちにとっても、リラックスして楽しく過ごせる夏休みにしてあげることだ。


 親はついつい長期の休みを絶好の勉強や訓練の期間と考えがちだが、まず第一は楽しい思い出を作ってあげること。勉強や訓練はその次だ。


 休みが長期にわたるがゆえに、最初に子どもたちのモチベーションを上げておくことが大切である。「漢字をやれ」「計算力をつけろ」とお尻を叩くだけではダメ。
1学期を振り返って、ほめるところをほめ、気持ちを高めてあげる。


 それから、「それじゃ、何か足りないことや、できなかったことはないかな?」と聞いて、考えさせ、目標を立てる。不足していることでなく、得意なことをさらに伸ばすような目標でもかまわない。



子どもの「生活表」と親の「見届け表」

 

 目標を立てる際には「家の仕事」「学習」「運動」「生活」の4項目で、それぞれ設定することをお勧めする。
私はこれを「生活表」と呼んでいるが、勉強だけに偏らず、生活態度やお手伝いにも目標を持つことが重要だ。


 それぞれの目標を決めたら、紙に書いて、壁などに貼っておく。例えば、こんな具合に作る。


目標は「○○するために~する」という形にするといい。
例えば「みんなに毎日ピカピカのお風呂に気持ちよく入ってもらうためにお風呂掃除をがんばる」。
こうしないと、何のために目標を立てたのか分からなくなるからだ。


 この目標を1日の中でどのように実行するのかスケジュールを大まかに立てる。
何時何分から何をするなどとあまり厳密にせず、子どもに合わせて緩やかにしたほうがいいだろう。

 よくできたら◎、できたら○、やったけどあまりよくないときは△、やらなかったら×、やらなくていいときは ― と、五つの記号で毎日、親が評価する。


 子ども用の生活表と同時に、「親の見届け表」も作ることも提案したい。
これは親の子どもに対するチェック表みたいなもので、目標として決めた勉強や仕事の確認ができたかどうか、子どもをほめたかどうか、スキンシップをしたかどうかなどを毎日、確認するものだ。


 親が確認を怠ると、子どもは続かなくなる。
一番いけないのは、親自身が決めたことを忘れていて、しばらく経ってから「どうして決めたことを守れないのか」としかりつけることだ。
子どもにとっては一度も注意されずに、いきなりしかられるのは理不尽であり、親に対する不信の元にもなる。


 生活表と同じように、毎日、自分自身で評価する。
この二つの表をどこか目立つところに張っておいて毎日欠かさずに確認する。


 より、やる気を高めるには目標を最初に達成した日に写真を撮り、壁に張っておく手もある。
例えば、お風呂掃除を始めた日に、お風呂場で写真を撮り「お風呂掃除開始記念日」と書いて張っておくわけだ。



ビジネススキルを子育てに生かそう

 

 目標とスケジュールを立てても、すぐに習慣付かないかもしれない。
予定の時間になっても勉強を始めないとか、お風呂掃除をしないこともあるだろう。


 しかし、それですぐにしかりつけず、習慣付くような工夫をお父さん方に考えてほしい。
父親たちはそうした工夫を職場でやっているから、本来、得意なはずだ。


 例えば、朝の8時になるとタイマーでセットしたさわやかな音楽が流れ始め、それをきっかけに机に座らせ、勉強を始める。
これは低学年には特に有効である。


 ちなみに、夏休み期間中は生活のリズムが乱れがちになるので、寝る時間と起きる時間を決めて、勉強は朝の涼しい時間帯に済ませるようにした方がいいだろう。


 勉強はいきなり作文など子どもにとって難しい課題から始めるのではなく、100マス計算など簡単に取り組めて、すぐに終わるものからスタートした方がいい。
すると、頭が活性化され、勉強する態勢に入りやすい。


 100マス計算の次は漢字の書き取り、そして、算数など順番を決めて、毎日同じリズムで取り組めるようにした方が効果的だ。


 お父さん方もおそらく仕事を始めるとき、ちょっとしたウォーミングアップをして、仕事モードに頭を切り換えるだろう。
そうした工夫を子育てでも実践してもらいたい。


 すぐにうまくいかなくても、しかりつけない。
それよりは合理的な解決策を考えることだ。ビジネススキルを子育てに生かすことができれば、勉強も仕事と同じように成果が上がるはずである。

初出「親力養成講座」日経BP 2007年7月27日

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