今、小学校では新聞を使った授業がよくおこなわれています。
ためしに現行の小学5年生の国語の教科書を見てみてください。
すると、すべての出版社の教科書で「新聞」について詳しく取り上げていることがわかるはずです。



ですから、日頃から新聞に親しんでおけば、その授業の際に当然有利です。
ですが、もちろん新聞を読む利点はそれだけに留まりません。
教育評論家の親野智可等先生に、小学生向けの新聞を読むことによる様々な効果についてお話を伺いました。



何事にもいえますが、楽しみながらやることがいちばん身につきます。
子どもは特にそうで、あまり勉強が好きでない子や意欲がない子に、机の前に座ることを強制し、無理矢理に問題集をやらせたり、参考書を読ませたりしても、身につかないどころか、むしろ勉強嫌いにしてしまう可能性が高く逆効果です。


私は23年間、公立小学校の教師を務めながら、そういう子どもたちでも勉強ができるようにしてあげる方法を考えてきました。
その方法を私は「楽勉」と呼んでいます。


「楽勉」とは、簡単に言えば〝日常の生活や遊びの中で楽しみながら知的に鍛えること〞で、例えば、楽勉カルタもこれにあたります。
俳句カルタ、歴史カルタ、地理カルタ、星座カルタなど、様々な楽勉カルタがあります。
これらのカルタを使って遊ぶだけで、子どもは自然とその分野の知識を身につけることができます。


最近流行の工場見学や自然体験なども、遊びながら楽しく知識を身につけられる代表的な「楽勉」です。


そんな数々の「楽勉」の中で、今私が注目しているのが、小学生用の新聞を読むことです。その理由を説明しましょう



①漢字が読めるようになる!



まず第一に挙げたいのが 、漢字が読めるようになるということです 。
小学生用の新聞の記事は全て漢字に振り仮名が付いていて、習っていない漢字でも読めるように工夫されています。


しかも、日刊のものでも週刊のものでも、新聞は新しいモノが自宅に宅配されてきますから、 本のように飽きてしまうこともなく新鮮な気持ちで毎回手に取ることができます。


毎日、毎週の積み重ねはとても大切で、知らないうちに目が漢字を覚えます。
そうすると、何か他の本を読んだときに振り仮名が付いていなくても読めるようになるのです。


また、4年生では200字、5年生は185字、6年生で181字の漢字を習いますが、読み方を知っている漢字は学校でその漢字の書き方を教わるときに、早く覚えることができるようになります。
当たり前ですが、何回も出会って読み方も知っている漢字は書き方もおぼえやすいわけです。



②語彙が増える!



新聞は文語体=書き言葉で書かれており、子どもたちが日常生活で使う口語体=話し言葉とは違う言葉が多く使われています。


更に、熟語や慣用句も出てきますから、親や教師、友達との会話からは身に付けにくい新たな言葉を知る機会になります。
知っている言葉が増えれば、教科書や本を読む際に言葉の意味がわからずにつまづくことが減り、読解力が高まるわけです。


読解力が高まれば国語の成績が伸びますが、それだけではありません。
多くの言葉を知り理解しているということは、教科書の内容や先生の説明がきちんと理解できるということになります。


あらゆる勉強は言葉や文章を媒介に行われるので、読解力が上がるだけで全ての教科の基礎学力が上がるのです。


算数であれば、いくら計算力があっても問題の意味を正確に理解できなければ正解は導けません。
読解力が高いことは全ての教科において絶対的に有利であり、しかも、これは学年が上がるにつれて顕著になるのです。



③情報・知識が増える!



新聞は社会で起こった様々な出来事を伝えるものですから、子どもたちが日常生活ではなかなか触れないような言葉、情報が多く載っています。


たとえば、「デフレ」や「内閣総辞職」、「太陽光発電」等々の言葉は普通の生活ではなかなか入ってきませんが、そういう言葉と共に新たな知識がドンドン入ってくるわけです。


様々な知識に触れる=知的刺激を与えることは、”知識の杭”を立てる機会になります。


”知識の杭”とは何か?流れる川に立った一本の杭を想像してみてください。
その杭には、川を流れてきた色々なものが引っかかり、貯まっていきますよね。


同じように、子どもの頭の中に「太陽光発電」という知識の杭を立てたとすると、その子は太陽光発電に関する話題に敏感になり、普通の子は聞き流してしまうような情報が、その子の頭にはちゃんと引っかかるようになります。


すると、太陽光発電のニュースに関連してよく出てくる言葉、例えば、「自然エネルギー」や「地熱発電」といった言葉も引っかかるようになり、引っかかる情報は段々と増え、蓄積されていきます。そうなれば、学校で発電やエネルギーについて学ぶ際には、授業の理解や意欲が高まり、勉強に積極的になるわけです。


新聞を読み、情報・知識を得るという知的刺激を、知識の杭にするためには、新聞の記事をネタに親子で会話をしたり、子どもが興味がありそうなニュースを選んで上手く導いてあげることが最初は大事になってきます。


知識の杭は分野ごと、テーマ毎にいくらでも立てられますので、上手くリードしてたくさんの杭を立てて挙げてください。



④学習漫画で理解が深まる!



小学生用の新聞に掲載されている学習漫画は、書籍の学習まんがとくらべて即時性が高いのが特徴です。


その時の話題のニュースや関心事を取り上げているので、③で挙げた「情報・知識が増える」だけでなく、その理解を深めることができます。
これは前述した知識の杭を立てる上でも大いに役立ちます。


「せっかく小学生用の新聞を取っても、まんがしか読まない!」と嘆いている方がいるかもしれませんが、最初はそれでも良いのです。
そういう子には書籍の学習まんがをどんどん読ませましょう。


中学生で漢字の秘密を扱った学習まんがを読ませておけば、高学年で習う部首や同音異義語の勉強が楽しくなり、地球の謎や宇宙の秘密といった学習まんがを読ませておけば、中学高校の地学の授業が楽しくなります。


「勉強しなさい」と叱るより、余程効果があります。



⑤自分を客観視できるようになる!



読者投稿欄などには、子どもたちからの悩み相談や世の中に対する疑問などが載っており、それに対する専門家からのアドバイスが分かり易く出ています。


そこでは、子どもたちの本音が読めるわけです。
同世代の悩みや考えを知ることは人間関係の勉強になるだけでなく、自分を客観的に見ることができるようになります。



⑥生活や安全に役立つ!



子どもを対象にした犯罪や事故は今でも多々起こっており、登下校の安全、不審者対策、交通安全についての記事も度々取り上げられ、様々な地域や学校での取り組みなどが紹介されています。


こういう記事を子ども自身が読むことで、親に言われるよりも危機意識を強く持ち、身を守る方法を具体的に考えられるようになります。
勉強と同じで、親に言われるとやる気がしない子でも、自分で読んだものを自分で取り入れるときはやる気になるものだからです。



⑦モチベーションがアップする!



スポーツ選手や芸能人、学者など、そのときの旬の人が登場するのも新聞の特徴です。


その際には、その人が小学生時代にどんな子どもだったのか、どういうことに興味を持っていたのか、といった話が語られます。
これは、子どもにとってモデルとなるわけで、モチベーションアップに繋がります。


特に3・4年生は、人生に目覚め始める時期、将来の夢を具体的に考え始める時期ですので、目標になるであろう人物の話を読むことは意味があります。



ざっと挙げたでけでもこれだけの効果が小学生用の新聞には期待できます。
ただ効果的だからといって読むことを子どもに無理強いしてはいけません。


読むことに慣れていない子であれば、最初は見出しや写真を見るだけでも良いのです。
できるだけハードルを下げ、積み重ねていけるようにすることが大切です。


そのためのポイントは、記事の内容について親子でコミュニケーションを取ることです。


③でも述べましたが、記事に絡めて親の子ども時代の話をしたり、TVのニュースを見ながら、「このニュースは〇〇新聞にあったんじゃない?」と振ってみたり、子どもに興味を持たせるよう導いてください。


親子での知的な会話は子どもの学力向上に繋がるだけでなく、親への尊敬となり、良好な親子関係の構築にもなります。


小学生用の新聞には、子どもを伸ばす知的栄養がタップリ詰まっているのです。


初出「小学四年生」小学館

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