●「叱る」という行為にいいことは一つもない

「子育て中の親御さんはとても忙しく、育児に専念している場合でも、子供と一緒にいる時間が長過ぎると、気分転換ができなくてイライラがたまってしまう。すると、弱い立場である子供を『叱る』という行為で、ストレスを発散するようになってしまいます」

小学校の教師として子供たちや保護者と向き合い、現在は教育評論家として活躍する親野智可等さんは、ついわが子を叱りがちな親の心理に理解を示してくれました。

しかし、子供を叱ってばかりいると、否定的な言葉や乱暴な言葉を浴びた子供がその言い方や行動をまねしたり、親の愛情を確認したくて、わざと心配をかける行動をとったりするようにもなります。「叱るという行為に、いいことは一つもない」と親野さんは言います。

では、叱らずに子供を育てるには、どんな工夫をするとよいのでしょうか。

「子供が苦手にしていることは、やりやすいように準備しておくといいと思いますよ。すぐに歯磨きを忘れる子なら、食事の前に歯ブラシや歯磨き粉を用意しておく。食後に歯を磨いたら『この頃は、ちゃんと磨いてるね』と褒めてあげる。宿題を後回しにしがちな子なら、ランドセルの中身を机の上に出しておけば、宿題に手を付けやすくなりますよね。叱るより先に、手を付けやすいように準備をして、親子で一緒に課題を乗り越えることが大切なんです」

親野さんはまた、「言葉遣いにも気を配りましょう」とアドバイスをしてくれました。

「子供に向かって『また~していない』とか『~しなきゃダメ』という、否定的な言葉は使わないほうがいいですね。こうした言葉を使うと、子供は『行動』ではなく『自分』そのものを否定されたように感じてしまうんです」

「『先に宿題をしたら、後でたくさん遊べるよ』とか『テストの見直しをしたら、次はきっと十点増えるよ』というように、何かをするといいことがあるというプラスの言い方をする。そうすれば、子供は素直な気持ちで物事に取り組むようになるでしょう」

「ノートの字が汚くても、一文字ぐらいきれいに書けた字があるはずです。それを見つけて『この字は、とてもきれいに書けてるね』と声をかけてあげるなど、良いところに着目して子供を褒めるのも大切なこと。子供の言動を『とがめる』のではなく、『褒めて改善させる』ことが肝心なのです」

しかし、日常のあらゆる出来事を褒め続けるのは難しいもの。どうしても叱りたくなってしまったとき、親は自分の心をどのようにコントロールすればいいのでしょう。

「そういうときは、まず胸一杯に大きく息を吸い込んでみましょう。そして、ゆっくり吐き出します。このような大きな深呼吸を一回やるだけでも気持ちが落ち着いて、怒りに飲み込まれることはなくなります。呼吸が変われば気分も変わるからです。そして、その後、子どもの言い分を共感的に聞いてあげてください」

●イライラしたら怒りのマグマを開放する

きょうだいや友達におもちゃを取られ、思わず叩いてしまった子供に「人を叩いてはダメ」と、いきなり正論をぶつけても伝わりません。なぜなら、子供はおもちゃを取られた自分の気持ちを処理できず、まだもやもやした状態のままでいるからです。

「子供が『だって、おもちゃ取られたんだもん』と言ったら、『嫌だったね』と共感してあげる。親がたっぷり共感的に聞いてあげれば、子供は『わかってもらえた』と感じて、素直な気持ちになります。そこで、『これからはどうする?』と聞けば、自ら『叩かないで、やらしてあげる』と言えるようになります」

今の時代は親子に限らず、夫婦にも友人の間にも「共感力」が足りなくなっているのではないか。親野さんはそう指摘します。

「最初から正論を突きつけても、相手は自分の気持ちを持って行く場がなくなってしまいます。家庭でも職場でも、まずは人と共感できる言葉を交わし合い、信頼関係を深くすることが大切です」

どうしても湧いてしまう怒りの感情を抑えるためのテクニックも、親野さんは伝授してくれました。仕事が多過ぎると感じたら思い切って減らしてみる。特に面白いことがなくても笑顔を浮かべてみる。イライラしたら深呼吸をする。ストレッチで体を動かしてみる。そんなことで効果は表れるといいます。

「体をさすると『オキシトシン』というホルモンが分泌され、人は幸福感に包まれます。だから、子供の背中に手を置いたり、ハグしたりして触れ合うだけで、お互いに気持ちが落ち着いて怒りが湧きにくくなるんですよ。どうしても怒りのマグマを抑えられないときは、子供とじゃれ合って、犬になったつもりで『ワンワンワンワーン』と叫び合って遊ぶのもいいですね」

親子でストレスを発散することで、感情を上手にコントロールできるようになると言います。

「子供と一緒にいてストレスがたまってきたら、その場を離れることも怒りを鎮める方法の一つですよ。『ママはイライラしてきたから、怒られないうちに自分の部屋に行っていなさい』と、笑顔で子供を避難させ、コーヒーを飲んで心の整理をし、独り言でマイナスの感情を洗い流してしまうのもいいですね」

誰かに言葉をかけるときには、心に生まれた感情をそのまま人にぶつけるのではなく、まず、相手の気持ちを分かろうとすること。怒りにまかせた言葉で人を傷つけないようにする極意は「共感力」にありそうです。

初出「愛和」(実践倫理宏正会)


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