●お悩み

4年生の男の子の母ですが、子どもの好き嫌いで悩んでいます。
ナスやニンジンなど苦手な食べ物が多いんです。
好き嫌いなく何でも食べられるようにしてあげたいのですが、
どのようなことをすればよいのでしょうか。


●親の思いが逆に親子関係を壊す


「好き嫌いしないで何でも食べなさい」「嫌いな物も食べなきゃダメ」など、食事の度にこのようなことを言って、子どもを苦しめている親がいます。
「好き嫌いをなくしたい」という気持ちなのでしょうが、親が思う以上に苦しんでいる子がたくさんいます。


そんなことを言い続けても、決してその食べ物を好きにはならず、嫌悪感だけが増して、一生苦手になりかねません。


また食事の時間が怖くなり、食べること自体が苦痛になってしまい、食べることに否定的な感情を持つようにもなります。
親に叱られて、自己肯定感がなくなるリスクもあります。
 

それだけではありません。私の教え子で、大嫌いなグリーンピースを母親に無理やり食べさせ続けられた女の子がいました。
なんとかグリーンピースは食べられるようになったのですが、以来、“母親が怖い”と感じるようになってしまったのです。


大切な親子関係が食べ物のせいで崩れてしまい、大人になっても、母親に親しみを感じられず、恐怖感ばかりが先に立つそうです。
無理やり食べさせることによる弊害は、思いのほか大きいと、覚えておいてください。


●好き嫌いで子どもの将来は左右されない


もちろん、何でも食べられるようになることはよいことです。
嫌いなものを美味しく食べられるように料理を工夫したり、嫌いなものに親しみがわくように、たとえばナスが嫌いなら庭やベランダで一緒に栽培したりするのも一つの方法です。


また、「この野菜にはこういう栄養があるんだよ」などと話を聞かせたりして、子どもが自ら「食べてみよう!」という気持ちになるような取り組みは、ぜひ行ってください。
最近では、野菜についての絵本なども数多く出ていますから、そうした本を買い与えてみるのもよいでしょう。


こうした努力の結果、それでも食べることができなければ、すっぱりとあきらめることが大事です。
「トマトはビタミンが豊富だから」などと、栄養面を気にするかもしれませんが、代替物はいくらでもあります。


また「好き嫌いがあると、困難から逃げる大人になってしまう」と考える親もいますが、それは根拠がありません。


大リーグで活躍するイチロー選手は、子どもの頃から偏食で、野菜を食べることができなかったそうです。
でも彼は困難から逃げることなく、逆に立ち向かって、偉大な業績を残し続けています。好き嫌いが多いからといって、困難から逃げるようにはなりませんから、安心してください。


食べるのが好きということは、生きるのが楽しいにつながります。
嫌いなものにこだわるのではなく、子どもが好きな食べ物をどんどん出してあげるべきです。


カレーが好きなら、おいしいカレーで喜ばせてあげましょう。
そうすれば子どもは、食卓が楽しいと感じ、さらには親の愛情を実感できます。
嫌いなものを出すよりも、よいことばかりなのです。


●味覚は成長するにつれ変わることもある


嫌いなものを出すという点で、目を配りたいのが、学校の給食です。
最近は、子どもに嫌いなものを無理強いすることはなくなりつつありますが、それでも一部の先生はいまだに「今日は3人だけ完食できませんでした!」などとやっています。
その場合は、ちゃんと学校に相談してください。


一方、親に気を付けてほしいのが、自分の好き嫌いを、子どもに押し付ける行為です。
納豆が嫌いだからといって、食卓に納豆を出さないのは、子どもが納豆を好きになるチャンスを奪っているようなものです。
子どもの食の楽しみや広がりをなくしかねない行為ですので、絶対にすべきではありません。
 
子どもの好き嫌いは、大人になる過程で、味覚が変わり、急に食べられるようになるケースも少なくありません。あまり深刻に考えずに、楽しい食卓を目指してください。

初出「AERA with Kids」

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