何事においても、子ども自身がその気になって取り組めばうまくいきます。
反対に、子ども自身にその気がなければ、親がいくら厳しく命令したりあの手この手を工夫したりしてもうまくいきません。
勉強、習い事、生活面のしつけなど、すべてにおいてこれは言えることです。
 

では、生活面のしつけにおいて、子ども自身をその気にさせるにはどうすればいいのでしょうか?
大切なのは、その趣旨、理由、必要性などを子どもに本当によく理解させることです。



子どもも心から納得すれば、内面的なモチベーションが高まって、自分でやろうという気持ちになります。
つまり、子どもを啓発することが大切なのです。
 

学校では、主に学級活動という授業の中でこれをおこなっています。
たとえば、私も、歯磨きの必要性を納得させる授業をおこないました。授業では、まず、歯垢の中の虫歯菌や歯周病菌の顕微鏡写真を見せて、子どもたちを驚かせてやりました。
そして、次のようなことを、イラスト、写真、映像、グラフなどを使いながら説明しました。


・歯は食べ物を消化吸収するのための第一歩である。
虫歯や歯周病などでよく噛めないと、胃や腸に負担がかかる。
健康な生活を送るためには歯が大切。


・食べたあと歯磨きをしないと、食べカスが歯についたままになる。
そこに、虫歯菌や歯周病菌などの細菌が住み着いて増える。
1個の細菌が1日で1億個に増える。


・歯垢は既に食べ物のカスではなく、虫歯菌や歯周病菌などの細菌の固まりである。
歯垢1ミリグラムの中に1億の細菌がいる


・歯周病菌は歯肉炎や歯周病を引き起こす。
歯周病になると歯が根こそぎ抜け落ちる。


・歯肉炎や歯周病は虫歯のような痛みがないので、知らないうちに進行し、大人の80パーセントが歯周病にかかっている。
子どものときの歯肉炎を放っておくと歯周病になりやすい

 
子どもたちは、細菌の写真に目を見張ったり、1個の細菌が1日で1億個になることに驚いたりしながら、歯磨きの大切さを理解していきます。
この授業のあと、子どもたちは家でも学校でも一生懸命磨くようになりました。
親からも、「朝晩ていねいに歯を磨いているのでびっくりした」という報告をたくさんもらいました。
 

もちろん、日が経てばだんだんモチベーションが下がるのは当たり前なので、続けるためのシステムとしてがんばり表と「抜き打ちカラーテスター検査」も実行しました。
 

そして、虫歯菌や歯周病菌の拡大写真と子どもが歯磨きしているイラストを水道のところに貼っておきまし。
このような続けるためのシステムも必要ですが、ここで私が強調したいのは、子どもを啓発することの大切さです。
 

それほど大切と思っていなかったことでも、誰かに啓発されたり自分が失敗したりしてその必要性を心から納得すれば、みんな自分でやるようになります。
その納得度とやる気は比例するのです。
 

自動車運転免許の書き換え時に安全運転のための動画教材を見せられて、それからしばらく慎重な運転になるということは、誰でも経験したことがあると思います。
こういうことは大人も子どもも同じです。

 
でも、多くの親たちはこのことをあまりわかっていないように思います。
ですから、親の中には、こういう啓発をほとんどしない人もいます。
ただ「歯を磨きなさい!」「早寝早起きをしなさい!」と命令するだけの人もいます。