●ある親子の会話

ある空港のロビーで、小学校高学年とおぼしき女の子と母親がテレビを観ていました。

観ていた番組はNHKの「おかあさんといっしょ」で、体操のお兄さん・お姉さんと20人くらいの幼児たちが音楽に合わせて踊っていました。
すると、テレビを見ていた女の子が言いました。

「子どももいろいろだよね。お兄さん・お姉さんのまねをしてすごく上手に踊る子もいれ
ば、ぜんぜん踊らない子もいるよね。あの青い服の子なんか、ぜんぜん動かないよ。あ、
動かないどころか、とうとう寝ころんじゃったよ」

それを聞いたお母さんが言いました。
「たしかにそうだよね。本当に子どももいろいろだよね。おもしろいね」
その後、さらに次のような会話がありました。

女の子「何で、ぜんぜん踊らない子もテレビに出してるのかな。ちゃんと踊れる子だけ出
せばいいのに……」

母親「ほんとだ。何でだろうねえ……」

女の子「あ、そうか! わかった。上手に踊れる子ばっかりだと、テレビを観ている親が
かわいそうだからじゃない? だって、テレビの子たちがみんな上手で、自分の子はぜん
ぜん踊れなかったら落ち込んじゃうじゃん」

母親「なるほど。テレビの中にも踊れない子がいれば、たしかに安心するだろうね」

女の子「観て落ち込むような番組だと観たくないから、視聴率も下がっちゃうじゃない」



●女の子の洞察力に感服

私はこの会話を聞いていて、いくつか思うことがありました。
まず、女の子の洞察力に感服しました。
もちろん、番組を制作している人たちに聞いてみないと真相はわかりませんが、女の子の
推測が合っているような気がします。

私も、親たちに安心してもらうために、「上手に踊れる子もいればそうでない子もいる。
いろんな子がいていいんだよ」というメッセージが込められているのだと思いますし、視
聴率のことも考えていると思います。
そのことに気づいた女の子はすごいと思います。