●意地悪な質問が嘘を誘発する


次のような会話をしていませんか?


親「先生に住所変更の書類を渡した?」
子「え? うん、渡した。」
親「嘘おっしゃい。バッグの中に入ったままじゃない。さっき、見たんだから!」
子「あ、出したと思ったけど、忘れてた。」
親「また嘘ついてごまかす。なんで嘘ばっかり言うの!」


この場合、お母さんは既に子どもが書類を出していないのを知っていたのです。
それなのに、わざわざ「渡した?」などと意地悪な質問をして、子どもの嘘を誘発してしまいました。


子どもは過去の経験によって、正直に「忘れた」と言えば叱られると学んでいます。
ですから、親が罠を仕掛けていることに気づかないまま、瞬間的に嘘をついてしまったのです。




●シンプルに言えばすむ話


本当はこんな質問をする必要など全くなく、「書類を出し忘れちゃったんだね。明日は必ず出してよ」とシンプルに言えばすむ話です。
もし明日も忘れそうだと思ったなら、ランドセルの内蓋に貼り付けるなどの工夫をしておけば安心です。


このような対応をすれば、親も叱る必要がありませんし、子どもも叱られなくてすみます。
お互い嫌な気持ちにならずにすむわけです。
子どもは、忘れないための工夫をしてくれた親のことをありがたいと思いますし、工夫することの大事さも学べます。


親が日頃からこのような対応に心がけていれば、子どもは親の愛情を実感できます。
それによって親への信頼も高まりますし、素直な気持ちにもなれます。




●シンプルかつ気持ちよく促そう


その反対に、日頃から子どもに罠をかけてわざわざ嘘をつかせるような意地悪な質問をしていると、子どもは親に対する信頼感が持てなくなり素直な気持ちもなくなります。
そして、親の攻撃から自分を守るために、たくみな嘘をつくようにもなります。


とくに、よくありがちな「片づけしたの?」「宿題やったの?」「明日の仕度したの?」などの質問は要注意です。
これらの質問も、実は子どもがやってないことを知りつつ、あるいは薄々気づきながら発していることがほとんどなはずです。


やってないことがわかっているなら、あえて質問形を使う必要などありません。
「さあ、片づけよう」「片づけ競争だよ。用意、ドン」「手伝ってあげるから、一緒に片づけよう」「さあ、美味しいカレーができたよ。温かいうちに食べよう。超特急で片づけちゃおう」などと、シンプルかつ気持ちよく促してあげましょう。




●日頃から意地悪な質問形には気をつけよう


親子の会話に限ったことではありませんが、この質問形というのは要注意です。
というのも、本当に聞きたくて質問形になっていることは少なく、その裏には別の意図があることが多いからです。


例えば、「詰問によって相手より優位に立ちたい」「相手を困らせたい」「困らせて溜飲を下げたい」などです。


そして、相手はこのような意図を無意識のうちに読み取り、嫌みな言い方だと感じます。
ということで、日頃から意地悪な質問形には気をつけて、自分からは使わないようにしましょう。

初出「学研キッズネット」