あるテレビ局の男性アナウンサーのAさんから、番組への出演依頼の電話をいただいたときのことです。
番組の話をしながら、子育てや家庭教育についてもいろいろな話が出ました。
その中で、私は、親が子どもにやらせたいことを押しつけることの弊害について話しました。


するとAさんが、「こういう場合はどうなんでしょう?」と言いながら、ご自分の経験を話してくれました。
Aさんのご快諾のもと、その大要を紹介させていただきます。


Aさんの娘さんが小学2年の12月に、マラソン大会があったそうです。
それに向けて父子で練習しようと話し合って約束し、1ヶ月くらい前から練習を始めることにしたそうです。
ところが、いざ練習を始めると、娘さんはあまり乗り気ではなく泣いて嫌がりました。


走り出すと泣く、また走ってもすぐ止まる…。
こういう感じで、Aさんの意気込みとは裏腹に練習は思うように進みませんでした。


私「よくあるパターンですね」
A「娘は運動はあまり得意ではないんですが、苦手なものもなんとか人並みにはできるようにしてやりたいと思ったんです」
私「親はそう思うものですよね」
A「日ごろはあまり怒ったりはしないんですけど、このときはちょっと怒ってしまいました」
私「なるほど」


A「ここで負けたら親子で負けるような感じがして…」
私「親としては、そういう気持ちになるものですよね。でも、もともと娘さんからマラソンをやりたいと言ったわけではないでしょ?」
A「強制したわけではないんですよ。一応話し合いのもとでがんばるって約束して始めたことなんです」
私「そこですよね。話し合いとは言っても、親の方から持ち出したんですよね。子どもにやる気がないとき説得してやる気にさせるのはあっていいと思いますよ。でも、力関係があるので、親の方は話し合いと思っていても子どもの方は強制と感じていることが多いんですよ」
A「子どもにしてみればそうでしょうね」


私「マラソンがんばろうと約束したとは言っても、そもそもいろいろある中でマラソンに注目したのは親なんですからね」
A「なんとかがんばって乗り越えさせれば、子どものためになると思ったんですが…」


私「例えば、アナウンサーのAさんが、上司に『これからはアナウンサーも営業力が大事だから、営業に行って広告を取ってこい。そうすればアナウンサーとしての力も付く』などと言われてがんがんやらされたらどうでしょうか?いやですよね」
A「そりゃあ、そうです。そんなのいやですよ」
私「上司は思いつきでものを言いますからね。でも、親も勝手な思いつきが多いんですよ」


上司も親も勝手なことを思いつきながら、それが勝手な思いつきだと気が付かないのです。
部下のためだとか子どものためだなどと、自分で信じ込んでしまうのです。
でもそれは、自分の価値観に基づいた勝手な思いつき以外の何ものでもないのです。


私は、はっきり言います。
「マラソン大会があるからがんばって練習させて、苦手なものもがんばれる子にしてやろう」というのは、親の勝手な思いつきなのです。
そして、マラソン大会は1つの例であり、習い事でも受験でも進路でも本質的に同じなのです。
親は、早いうちにそれに気が付いた方がいいと思います。
そのためには、自分が同じようなことをやられたらどうかと考えてみることです。


そして、話し合いとか約束などと称して子どもに押しつけないことです。
そして、やり始めた以上はやり通させなければと思いこまないことです。


Aさんは、娘さんが泣いて嫌がったので、それ以上無理にはやらなかったようです。
でも、それでよかったのかどうかがずっと気になっていたのだと思います。
つまり、あのときやめてよかったのか、それとももう少しがんばらせるべきだったのかということに引っかかっていたのだと思います。
だから、私と話したときにそれを思い出したのでしょう。


A「こういうときは、どうすればよかったんでしょうね?」
私「あきらめればいいんですよ。もともと無理があったんですから」
A「そうですね…」
私「それで、Aさんはあきらめて無理強いしなくてよかったんです」


親はこういうとき、「ここでやめると、何でもすぐにやめる子になってしまうのではないか」とすぐに考えます。
でも、決してそんなことはないのです。
それよりも、もっとその子に向いているものを見つけてやることです。
その子がもともと好きなもの、やっていて楽しめるもの、無理なく自然に続けられるもの、そういうものを見つけてやることが大事です。
そこにこそ親は力を注ぐべきです。
そういう努力をろくにしないでおいて、自分の思いつきを正当化することに力を注いではいけないのです。


【親野智可等@まぐまぐニュース】
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