「うちの子のやる気スイッチはいつ入るのか?」と日々お悩みの方は多いと思います。
でも、やる気スイッチは自分で押すしかないのです。
親といえども、本人にかわって押してあげることはできません。


では、今の子どもや若い人たちは、どんなときにスイッチが入るのでしょうか?
私が今までに聞いた話の中からいくつか紹介したいと思います。


●建築士の仕事を見学した

叔父さんが建築士で、子どものころに何度かその仕事の見学に行ったことがありました。
建築事務所で図面を描いたり、模型を作ったり、現場で指導したりする姿がすごくかっこよかったです。
それで自分も建築士になりたいと思うようになりました。
夢に向かって猛勉強して、今回無事建築学科に合格しました。


●ホームステイのアメリカ人と一緒に生活した

小学生の時、アメリカ人がぼくの家にホームスティして、一ヶ月一緒に生活しました。
そのとき、「英語が話せるようになりたい」と強く思いました。
現在は、高校1年生で、来年はアメリカに留学する予定になっています。


●中学の歴史の授業がおもしろかった

中学の歴史の先生がとてもおもしろい授業をしてくれて、それで歴史が大好きになりました。
今は大学院で日本中世史の研究をしています。
自分の研究を進めると同時に、中世史の面白さを広くみなさんに伝えていきたいです。


●子ども実験教室が楽しかった

小学生の夏休みに「子ども実験教室」に5回通いました。
白衣を着て、試験管、ビーカー、フラスコなどを使っていろいろな実験をしました。
毎回本当に楽しくて、わくわくしながら通いました。
今は、高校の理科の先生になりたいと思って、大学院で勉強中です。


●Jリーガーがボールを蹴ったときの音がすごかった

小学生の頃、スポーツ少年団でサッカーをやっていたので、家族でエスパルスの練習を見に行きました。
ある選手が目の前でボールを蹴ったのですが、そのとき「ドシン」というものすごい音がしました。
迫力満点でびっくりしました。
「ぼくもあれくらい強くボールが蹴れるようになりたい」と思って練習をがんばるようになりました。
今は高校のサッカーチームで全国大会出場を目指してがんばっています。
将来はJリーガーになりたいです。


●JAXA(ジャクサ)の見学をした

子どものころ、夏休みに家族でジャクサの見学に行きました。
ロケットや宇宙に関する展示品を見て回っているうちに、宇宙に関する仕事をしたいと思いました。
そのために、どうしても某大学の工学部に入りたいので受験勉強をがんばっています。


●おばあちゃんの病気を医者が治してくれた

子どもの頃おばあちゃんが入院して、2日に1回くらいお見舞いに行っていました。
おばあちゃんの病室にいると、よくお医者さんが回診に来てくれました。
そして、聴診器で調べたりおばあちゃんの話を優しく聞いてくれたりしていました。
おばあちゃんは病気が治って退院するとき、「本当にいいお医者さんに見てもらって助かった」と感謝していました。
私はそれを見て、「自分も病気の人を治せるお医者さんになりたい」と思いました。
今は、医学部を目指して受験勉強をがんばっています。


●「美味しんぼ」というマンガに心引かれた

父親が教師だったので、深く考えることなく自然な流れで大学の教育学部に入りました。
でも、「美味しんぼ」というマンガを読んで料理人になりたいと思いました。
ずっと言い出せずにいましたが、ある日の深夜、思い立って決意しました。
すぐに父親を起こしてその旨を伝えました。
今は料理の専門学校で調理師免許を目指してがんばって修業しています。


●偶然見た短編映画に感動した

父親が開業医で、自分も大学の医学部に入りました。
大学1年生の時に見た短編映画に感動し、自分もこの道に進みたいと思い始めました。
大学2年生のときに大学をやめて、映像制作の勉強ができる大学に入りなおしました。
今は映像制作の勉強に夢中になって取り組んでいます。



●エジソンの伝記

エジソンの伝記を読んで、実験が大好きになりました。
それから、親に頼んで某塾の実験教室に通い始めました。
それで、将来は実験をする人になりたいと思うようになり、今は薬学部に入って勉強中です。
病気で苦しむ人を助けられる薬をつくるのが夢です。


●漫才を見て

子どもの頃、家に横山やすしと西川きよしの漫才のビデオセットがたくさんありました。
家族みんなで見て笑っていました。
それで、ぼくもみんなを笑わせられる人になりたいと思いました。
今は、大学の落語研究会で腕を磨いています。


●歯を直してもらった

子どもの頃に階段から落ちて、口の中に大けがをして、歯も何本か損傷しました。
でも、口腔外科の先生が全部直してくれました。
それで、自分も絶対口腔外科の医者になりたいと思いました。
今、大学の歯学科で勉強中です。

実は、これは私・親野智可等の教え子の話です。
私もその口腔外科の先生にお世話になったことがあります。
本当に腕も一流ですし、人格的にもすばらしい先生です。




このように見てくると、実にいろいろなきっかけがあるようです。
主なものは、実際の体験によって、ある人との出会いによって、ある本との出会いによって、などだと思います。


私の経験で言えることは、きっかけはいろいろですが、間違いないのは、どの子にもどの人にも、やる気スイッチが入るきっかけは必ずやってくるということです。


でも、ここで人生の分かれ目があって、実際にスイッチを押せる人と押せない人がいるのです。


押せる人というのは自己肯定感が高い人です。
つまり、「これをやりたい。自分ならできるはずだ」と思える人です。


自己肯定感がないと、「これをやりたい。でも、ダメだろうな、自分なんて…」となってしまい、今ひとつスイッチが入らないままになってしまいます。


ですから、親は、「子どもの自己肯定感を育てながら待つ」ことが大事です。
スイッチを押せる人にしてあげればいいのです。


あなたは、今の目の前の子どもが「やる気がない」からと言って、あるいはやるべきことをやらないからと言って、叱り続けていませんか?


目先のことにとらわれて叱り続けていると、子どもは自己肯定感がボロボロになって、「私はダメな子なんだ」「どうせぼくなんかダメだよ」と思い込むようになってしまいます。


すると、将来スイッチが入りそうなきっかけがあっても、押せないままになってしまいます。


大事なことをもう一度言います。
子どもの自己肯定感を育てながら待つ、これが大事です。

初出「学研キッズネット」

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