●また起きた悲惨な事件


今年(2016年)の8月21日に名古屋で中学受験を巡る悲惨な事件がありました。
小学6年生の男児が父親に刺殺されたという事件です。
朝日新聞によると、容疑者の父親は「自分の期待通りに受験勉強をしなかったことに不満を募らせたといい、『口論になって刺した』などと説明している」とのことです。


中学受験を巡っては、ときどきこのような事件が起こりますが、これらは氷山の一角です。
事件にはならないまでも、その一歩手前までいったという例はたくさんあります。
そこまでいかなくても、親子関係が冷え切ってしまったという例は非常にたくさんあります。
中学受験のネット掲示板やブログにもそういう話がよく出てきます。


●がんばると約束してもすぐ挫折する


志望校の学校説明会に親子で出かけると、在校生たちのすばらしい学園生活を動画で見せられます。


「どう素晴らしい学校だね。あなたもここに入りたい?」
「うん、この学校に入りたい」
「じゃあ、これから受験勉強がんばる?」
「うん、がんばる」
「約束だよ!毎日がんばろうね」
「うん、約束する」


このような会話があって受験勉強がスタートします。
でも、「約束」通りに勉強をがんばり続けられる子は極めて少ないです。
特に、男子(厳密に言えば男子脳の子)は、ほとんどの子がすぐに挫折します。


●発達段階から見ても中学受験には無理がある


それは当たり前のことです。
そもそも、10歳ちょっと過ぎたくらいのこの年代の子どもたちにとって、毎日長時間の勉強をやり続けるというのは不自然なことだからです。

発達段階から見ても、この年代は、毎日楽しく遊びまくる、時間を忘れて自分がやりたいことに没頭する、そういった黄金の少年・少女時代の最後の時期なのです。
やりたいことをやる時間がほとんどなく、毎日難しい勉強をやらされる、やらないと叱られる……。
この年代の子どもたちにとって、こういう毎日がどれほど苦痛なことか!


●親のイライラが爆発する


そんな状態ですから、成績が上がるはずもなく、親のイライラはますますつのります。
そして、子どもに向ける言葉は日ごとに荒々しくなるばかりです。


「がんばるって約束したよね。やるやるって口ばっかりで、いつになったらエンジンがかかるの」
「やるべきことをやらないで、一体あなたは何をしてるの? そんなことで○○中学に行けると思ってるの? あなたは自分に負けてるのよ」


「ちゃんと勉強しないと、今度のお出かけはナシ。お出かけしたいなら勉強しなさい」
「何度言ったらわかるの? あなたのために言ってるのよ。お母さんの気持ちがわからないの?」


挙げ句の果てには、子どもへの人格攻撃が始まります。
「口先だけなら何とでも言えるよ。ホント、あんたは口先だけの人間だね。もう、あんたなんか信用できない」
「なんでちゃんと勉強しないの。しっかり勉強しなきゃダメでしょ。なんでそんなにズルイの」


●自己否定感と愛情不足感が子どもに深刻なダメージを与える


こういう言葉を浴び続けるといろいろな弊害が出てきます。
まず、子どもは、自分に自信がなくなり「自己否定感」にとらわれるようになります。


「ぼくってダメだな。○○なんかできるはずないよ」
「どうせ私なんかダメな子だ。何をやってもできないよ」
という思い込みに支配されるようになるのです。
親に対しても疑問が出てきてしまいます。


「お母さんは私のことをダメな子だと思ってる。なんだか嫌われているようだ」
「お父さんはボクのことをよく思っていないみたいだ。大切に思ってくれていないんだ」
という思い込みに支配されるようになるのです。
これは親の愛情が実感できない「愛情不足感」と言われるものです。


成長期のこの年代に「自己否定感」と「愛情不足感」にとらわれると、その後、長い年月に渡って尾を引くようになり、親が思う以上に深刻なダメージを子どもに与えます。


●何のために中学受験するのか?


私は私立中学の存在自体を否定しているのではありません。
公立以外にいろいろな選択肢がたくさんあることは、とてもよいことです。
公立の学校しかない国というのは、とんでもなく困った国だとも思います。

つづく
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