前回の続きです。

●子どもの自己イメージが悪くなるとどうなるか?


弊害の4つめは、子どもの自己イメージが悪くなるということです。
人間は誰でも「自分はこういう人間だ」という自己イメージをもっています。
これははっきりいってただの思い込みに過ぎないのですが、人間の成長において大きな役割を果たします。


なぜなら、この自己イメージという思い込みは人間が自分をつくっていくときの青写真、つまり設計図になるからです。
人間は自分自身をつくっていくただ一つの生き物です。
そのときただ闇雲につくっていくのではなく、まずはじめに漠然とした自己イメージを持ち、そのイメージに合うようにつくっていくのです。


もし、「自分はできる。がんばれる。やりとげられる」というように、自己肯定感が高くて良い自己イメージを持てれば、いろいろなことにチャレンジできます。
たとえちょっとした壁があっても、「自分はできるはずだ」と思えるのでがんばり続けることができ、それで結局できるようになるのです。


反対に、「自分はダメだ。どうせボクなんてダメな子だよ」というように、自己肯定感が低くてまずい自己イメージを持ってしまうと、いろいろなことにチャレンジできなくなります。
たとえチャレンジしたとしても、ちょっとした壁があると「やっぱりダメだ。どうせダメだよ」となってしまい、結局できないようになっていくのです。


●子どもの自己イメージは親の言葉によってつくられる


では、この自己イメージというものは、どのようにできあがるのでしょうか?
子どもが自分で自己イメージをつくるということはできません。
自分がどういう人間かということは、自分ではわからないからです。
その多くは他人の評価、つまり他人の言葉によってできあがります。
中でも一番大きいのは親からの言葉であり、次が周りにいる人たち、先生、友だちなどの言葉です。


もちろん、大人になってからは、自分で意識してよい自己イメージをつくっていくことはできないことではありません。
そういう技法もありますし、自己啓発のメインテーマの一つでもあります。


でも、子どもが自分で意識してよい自己イメージをつくっていくことは不可能です。
ほとんどは親から自分に向けられる言葉によって、無意識のうちにいつの間にかつくられていくのです。


●恐るべし! すっぱい葡萄効果


弊害の5つめは、何かで叱られてばかりいると、子どもの中でその叱られた物事の価値が下がるということです。
つまり、勉強について叱られてばかりいるとその子の中で勉強の価値が下がり、片づけについて叱られてばかりいると片づけの価値が下がるのです。


なぜそうなるかというと、心理学でいうところの「すっぱい葡萄効果」が働くからです。
この心理学用語は、イソップ物語の「すっぱい葡萄」というお話がもとになっています。


キツネがおいしそうな葡萄を見つけて、ジャンプして取ろうとします。
でも、高いところにあったので何度やっても取ることができませんでした。
最後にキツネはあきらめるのですが、そのとき「あの葡萄はすっぱいからいらないよ」と負け惜しみを言います。

つまり、葡萄の価値を下げることで自我を守ろうとしたのです。
このような心の働きを心理学で「すっぱい葡萄効果」と呼んでいます。


●勉強で叱られると「勉強なんてそんなに大事なことではない」と思うようになる


親に「なんで勉強しないの!ちゃんと勉強しなきゃダメでしょ」と叱られてばかりいると、子どもの自我が傷つき何とか自分を守ろうとします。
すると、子どもは「勉強、勉強って…、なんでお母さんは勉強のことばかりムキになるの?勉強ってそんなに大事なの?もっと大事なことがあるんじゃないの?勉強なんてできなくても立派に生きてる人はいっぱいいるよ」と考えるようになります。


このように子どもの中で勉強の価値が下がってしまうことで、勉強へのモチベーションが下がります。

つづく
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