●お悩み


6年生の女の子の母ですが、要領が悪くて困っています。
宿題に取り掛かる準備に必要以上に時間がかかったり、1時間半程度で終わる量の宿題に2~3時間かかったり……。
どうしたら時間の使い方を上手にすることができるのでしょうか。


●子どもは時間を考えた生活ができない


ご相談のような“時間の使い方が下手な子ども”は、決して珍しくはありません。
子どもは生活経験がまだ少なく、時間を念頭に置いて生活をコントロールすることができないからです。


例えば、子どもは「あとで勉強する!」とよく口にします。
もちろん、「今やりたくない」という気持ちも働いていますが、多くの場合、漠然と「どこかで勉強する時間はあるだろう」と思っているのです。


帰宅してから夕食を食べて風呂に入り寝るまで、本当は限られた時間しかないのに、膨大な時間があると思い込んでいるのです。
こうした子どもに対しては“時間の見える化”が効果的です。
学校には「時間割」がありますが、同様に「家用の時間割」を作るのです。


例えば、学校から帰宅してから寝るまでの間の時間割を作ってみましょう。
「午後5時30分~6時 勉強」「午後6~6時45分 夕食」といった具合です。
時間割は“円”ではなく“横か縦の直線の帯の形”で作ります。
円形の時間割だと、子どもは時間の流れがうまく理解できません。


時間割は、塾や習い事に行く日があればその日用の時間割を作るなど、数種類用意しておきます。
そして、毎日同じ時刻にしてほしいのが就寝時刻と起床時刻です。
この2つをバラバラにすると生活のリズムが狂ってしまいます。


なお、時間割を作るときは、親の判断で勝手に作って押しつけるのはやめてください。
これだと、はなから子どもは守る気になれません。
初めは子どもと相談しながら作り、慣れてきたら子どもに任せる部分を増やします。


親子一緒に、あるいは自分で時間割を作るようになると、子どもは「今やるべきことは、後回しにできない」と理解できるようになり、時間の使い方がどんどん上手になっていきます。


もう一つ、“時間の見える化”としてオススメしたいのが画用紙で作る「模擬時計」です。
部屋に本物のアナログ時計を掛け、その横に模擬時計を貼るのです。
その模擬時計の針は勉強開始時刻を指していて、その下に「勉強開始」と書いておきます。


この2つが並んでいると、見るともなく見ますし、勉強開始時刻を意識するようになります。
そして、1分でも開始時刻を過ぎると落ち着かなくなり、結果として取り掛かかりがはやくなります。


●「終わりの時間」がわかれば作業に集中できる


時間の見える化とともに、集中力アップの取り組みも大事です。
特に「勉強」の時間は、集中力が長続きしないため、この取り組みは必須です。
まず、前述した模擬時計ですが、もう一つ「勉強の終了時刻」を描いたものも用意しておきましょう。
これにより「あと10分」などと集中力アップに効果を発揮します。


また卓上のホワイトボードを用意し、子どもに「勉強の終了時刻」「勉強の内容」「終わったあとのお楽しみ」を書かせて、机に置いておきます。
こうした“目標の見える化”によって、子どもは何をすべきか明確になり、さらに勉強の後にお楽しみがあるので集中しやすくなります。


「計算問題で疲れたら、漢字の書き取りに切り替えよう」と、教えてあげることも大切です。
一つの勉強にずっと集中し続けることが大事だと思うかもしれませんが、切り替えることで集中力が続くということもあるのです。
大人でも、一つのことで集中力が途切れたら、ほかの仕事に切り替えるはずです。
切り替え力は、集中力を維持する上でとても大切な能力なのです。


●「子どもの限界」を親はしっかり把握して


なお、こうした取り組みを行っても、子どもの集中力が続かないこともあります。
その場合は「○分間休憩」を実践するとよいでしょう。
マンガやゲームに手を出すと夢中になってしまうので、あくまでもボーっとするだけの休憩です。
これが思いのほか集中力の回復につながるのです。


私が最後に注意しておきたいのは、子どもが抱えている勉強などの量です。
その子の能力を超えた加重負担になっていないか気をつけてください。
文句も言わずにこなしている子が、実はすでに限界を超えていることもあります。
そういう場合、燃え尽き症候群になり、急に全てを投げ出して無気力な状態になってしまうこともあります。

初出「AERA with Kids」


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