●温度計はすばらしい楽勉グッズ

 
みなさんの家には温度計がありますか?
もしないなら、すぐ用意してください。
なぜなら、温度計はすばらしい楽勉グッズだからです。

 
日ごろから温度計を見るようにしていると、理科の気象学的な内容が得意になるだけでなく、理系的な発想と能力の全体が鍛えられます。
気象学的な内容を最初に学ぶのは3年生で、まず温度計の使い方を習い、次に日向と日陰の地面の温度を計ってその違いを調べる勉強を行います。
日ごろから温度計に親しんでいると、この勉強が大いに楽しくできます。

 
●数値化は科学の基本中の基本

 
家に温度計があれば、「今日は暑いなあ」とか「寒いなあ」などと感じたときに、すぐ実際の温度を調べることができます。
自然現象を観測して数値化し、印象だけでなく数値で把握するという姿勢は、理科(科学)の基本中の基本です。


理系に強い子は日常的にこういう経験をたくさんしていて、自然に理系的な発想と能力の全体が鍛えられているのです。

 
●温度計をあちこちに設置

 
温度計は1つと言わず、できたら8こくらい設置してください。
設置する場所は、温度の違いが出るようにトイレ、リビング、縁側、家の外などにします。
冬は縁側とトイレではかなり温度差が出ます。


そして、それぞれ2こずつ、つまりリビングならリビングで低いところと高いところに設置します。
このようにすると、高さによって温度が違うことが体感できます。
お風呂の湯船用の水温計があれば、お風呂に入る度に温度が計れます。
料理用の温度計があれば、お茶、味噌汁、スープなどの温度が計れます。

 
●温度計の選び方
 

温度計にはアナログとデジタルがあります。
アナログなら算数の数直線を読む練習にもなります。
小数点以下までしっかり計りたいならデジタルにします。


もちろん、両方あればベストです。
アナログの物を買う時は、割れにくくて安全な物にしましょう。

 
●親子の会話が理科的になる

 
慣れてくると、親子で次のような理科的な会話が可能になります。

 
ママ「今日は暑いね」
子「ねえ、ママ5月ってこんなに暑かった?」
ママ「何度くらいあるのかな?」
子「25度だよ」


ママ「え~、25度もあるの?まだ5月なのに!」
子「25度って暑いの?」
ママ「静岡は7月の平均気温が25.7度だから、今日は7月並みの暑さって事だよ」
子「じゃあ、スイカ食べよう」

 
こういう会話をしていると、テレビのニュースで「今日の埼玉県熊谷市の日中の最高気温は…」などと流れたときに大いに興味を持って聞くようになります。


●計らなくても自分がいる場所の温度がわかるようになる

 
温度を計ることに慣れてくると、計らなくても今自分がいる場所がだいたい何度くらいかわかるようになってきます。
すると、それによって服装や空調をかえるなど、健康管理に役立てることができます。
次のように、ゲーム的に温度の当てっこをやると、温度に対する感覚がさらに鍛えられます。

 
ママ「今このリビングは何度でしょう?」
子「う~ん、暑くも寒くもないから20度くらい?」
パパ「いやいや、もっと高いでしょう。22度くらいかな?」
ママ「二人とも惜しい!正解は21度でした」

 
●温度の記録をつける

 
できたら、計った温度の記録をつけるといいでしょう。
これはとてもいい勉強になります。
例えば休みの日などに、朝起きてから夜寝るまで1時間おきに(無理なら2時間おき)温度を計って、表や折れ線グラフにします。


晴れの日、曇りの日、雨の日の3パターンの記録が揃えばベストです。
この3つを比べるととても大事なことがわかります。
つまり、晴れの日は午後一時から二時くらいにかけて一番気温が高くなりますが、曇りや雨の日は一日中ほとんど同じくらいの気温で推移するということがわかるのです。

 
曇りや雨の日は気温が上がらないことを体感できて、登校前に服装を決めるときに気をつけるようになります。
この観測を夏休みなどに行えば、自由研究として提出できます。

 
●気象の勉強の大事なポイント

 
実は、これは4年生の理科で扱う内容で、小学校の気象の勉強の中でとても大事なポイントです。
でも、学校だと1時間おきにきちんと計るのがなかなか難しく、晴れ、曇り、雨の3パターンの観測をしっかり行うのはかなり大変です。
それで、観測が中途半端になってしまい、教科書にあるグラフに頼ってしまうことがよくあります。

 
●定点観測も効果的


さて、もう1つの記録の取り方としては、例えば「朝の7時にリビングの温度を計る」のように時刻と場所を決めて、定点観測を1年間行う方法です。
これを折れ線グラフにすれば、1年間の気温の変化がよくわかります。
1月と2月は寒い、8月が一番暑い、5月と10月は同じくらいなど、いろいろな発見もできます。


これによって、定点観測のやり方が身につくだけでなく、その科学的な意義も理解できるようになります。

 
●科学的観測の本物体験が真の実力につながっていく

 
もちろん、このようなグラフは教科書にも出ていますし、パソコンで検索すればいくらでも出てきます。
でも、そういう出来合いのものはイマイチ身につかないのです。
やはり自分で実際に計って、記録して、折れ線グラフを作るという、オリジナルな科学的観測の経験をすることが大切です。


こういう本物体験が子どもの真の実力につながっていきます。


このようなわけで、温度計に親しんでいると、天気の移り変わりを扱う気象学的な内容に強くなるだけでなく、条件を決めて観測し、数値化して、表やグラフにし、比較して科学的な真理を導き出すという科学的探究の基本が身につくのです。

初出「ママノート」学研

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