今週の相談
 
兄弟げんかが多くて悩んでおります。弟(6歳・保育園)の負けん気が強いせいもあるのか、何でもお兄ちゃんと一緒のことをしたがり、おもちゃ、カード、お菓子などの取り合いほか、飼っている犬の抱っこの取り合いまでします。さらに、自分の残した食べ物をお兄ちゃんにあげることさえだめだという状態です。

それと太っているお兄ちゃんに「ぶた、ぶた」とからかうため、それがうっとうしくて長男もやり返したり、弟が何もしていなくてもわざとそばに行きからかったりと、常にけんかが絶えません。長男ばかり注意せず、弟を怒ったりもしているつもりですが、長男は、自分ばかり怒られていると思っているようです。

仲の良いときもあるのですが、お互いにやりだすとしつこいので、親のほうまでイライラしてついにキレてしまうという状況です。何とかうまく対応できるようにとは思っいるのですが、なかなかうまくいきません。ご指導よろしくお願いします。(まさのまま さん)


【親野先生のアドバイス】

まさのままさん、拝読いたしました。

前回に引き続き、まさのままさんへのアドバイスです。


親が仲介者になって、お互いに対するプラスのイメージを作ってやるのも効果があります。
たとえば、弟が描いた絵を親がほめてやったとき、「お兄ちゃんも『○○は絵がうまいなあ』って言ってたよ」と言ってやります。
お兄ちゃんが風邪で休んだときは、「○○も心配してたよ。『お兄ちゃん、もうすぐ運動会なのに大丈夫かな?』って心配してたよ」と言ってやります。
弟が保育園の鼓笛隊の指揮者に選ばれたときは、「○○が選ばれて、お兄ちゃんもすごくうれしそうだったよ」と言ってやります。

このように第三者(この場合は親)に、「○○がほめてたよ」「○○も心配してたよ」「○○も喜んでたよ」と言われると、とてもうれしく感じられるものです。
そして、相手に対するプラスのイメージが育っていきます。
これは、いろいろな人間関係に応用できます。
母親が父親と子どもの間を取り持つことも、父親が母親と子どもの間を取り持つこともできます。
夫が自分の父母と妻の間を取り持つこともできますし、その逆も可能です。
もちろん、職場でもいろいろな応用が可能です。

さらに積極的な方法としては、兄弟が協力しなければならない状況を作り出すという方法もあります。
たとえば、親が外泊して兄弟だけで一晩過ごさせる、兄弟だけで遠くの親戚に行かせるなどです。

どの家でもすぐにできるものとしては、写真を活用する方法も効果的です。
次のような写真を大きく引き伸ばして、目に付くところに貼っておくのです。
兄弟が仲良く遊んでいる写真、兄弟が満面の笑みで写っている写真、赤ちゃんの弟とそれを抱っこするお兄ちゃんの写真、弟を優しくあやしているお兄ちゃんの写真、などなどです。

こういう写真を毎日見るともなく見ているうちに、いろいろなことを感じるようになります。
「弟が生まれたときかわいかったな」「2人で遊んで楽しかったな」「赤ちゃんの僕をお兄ちゃんがかわいがってくれてたんだ」「僕たち仲がいいんだ」「大切な兄弟なんだ」
つまり、このような写真からは無言のメッセージが絶えず発せられるのです。

絶対してはいけないことは、兄弟を比べることです。
子どもにはそれぞれの個性があり、成長スピードも十人十色なのです。
でも、それが頭ではわかっていても、親はついついいろいろな面で比べてしまいがちです。
そして、それがちょっとした一言に出てしまうこともあります。
ここは十分気を付けなければならないところです。

特に、相手を引き合いに出して叱ることは厳禁です。
たとえば、お兄ちゃんに、「弟にできて、なぜあなたにできないの!」「弟のほうがしっかりしてる」「どっちがお兄ちゃんかわからないね」などということは、絶対に言ってはいけません。
もちろん、弟に「お兄ちゃんを見習いなさい」「お兄ちゃんは○歳のときにこれができたよ」などと言うのも同じです。
こういうことが多いと、相手を恨むようになります。

また、相手を引き合いに出してほめることも厳禁です。
「お兄ちゃんよりあなたのほうがしっかりしているね」「お兄ちゃんは片付けが下手だけど、あなたはえらいね」「やっぱりお兄ちゃんのほうががんばり屋だわ」「○○は勉強できないけど、お兄ちゃんは希望の星だ」などというほめ方です。
こういうことが多いと、相手をさげすむようになります。

ところで、私はどこかで次のような意見を読んだことがあります。
それぞれの子に、「あなたが一番好き」と言ってやるといい。
そうすると、自分の気持ちが満たされて兄弟にも優しくなれる。

私はこれを読んで驚きました。
私は、絶対にそんなことはないと思います。
これでは、「親の愛情は平等ではない」と教えているようなものです。