2011年の4月から新しい学習指導要領が本格的にスタート。2009年度からの2年間の移行期間では、算数、理科が先行実施されましたが、2011年度からは全体の授業時間も増え、より学習内容の密度は濃密に。

では、新学習指導要領の本格実施で、学習内容はどう変わり、それに対して3年生の子どもを持つ保護者はどう向き合うべきでしょうか。教育評論家の親野智可等先生にお話をうかがいました。


3年生になると、新しく、社会と理科の授業が始まり、新学習指導要領の本格実施に伴って、全体の授業数も増加します。学習する内容もグンと増えますので、子どもが授業でつまずく可能性も高まります。

一度、勉強で劣等感を持つと、その後も積極的に授業に関わりにくくなってしまうケースが多いですから、保護者の方々は、お子さんたちが何を学習するのかを把握し、理解を深めるための手助けを意識していただきたいと思います。

では、3年生の学習について教科毎に見ていきましょう。

国語と社会は以前の学習指導要領での学習分野とさほど変わりはありませんので、やはり注目すべきは算数と理科になります。

中でも「数と計算」と「図形」の分野はこれまで4年生で習っていた内容がかなり入ってきますので注意が必要です。特に算数は以前の学習指導要領と比べるとかなり内容が濃くなっており、。以下、具体的に子どもたちがつまずき易いポイントを述べます。

「数と計算」で新規内容となる「4桁の足し算と引き算」では、例えば「3007―2258」といったような繰り下がりが2回ある引き算。

「3桁×2桁の掛け算」では、「308×57」のように「0」が入る掛け算。これらは意外とつまずく箇所になります。

また、3年生では割り算と小数についても学習しますが、「答えが2桁になる割り算」を筆算する際の商を書く位置や、小数の点を打つ位置などでつまずきやすくなります。

こうした「数と計算」は算数の基礎ですから、つまずいている所があれば、その日の内に修復することが大事です。

算数は〝積み上げ〞ですから、修復せずに放っておくと、ここから先に習うことが積み上げられずに、後々大きな苦労をすることになります。そうならないよう、子どもが理解しているかどうかを確認する為に、保護者の方々は子どもが使っている日々のノートを毎日よく見てあげて下さい。

もう一つ、3年生の算数でつまずき易いのが、「図形」です。正三角形、二等辺三角形、角、円などについて学習しますが、、三角定規やコンパスを使って作図をする作業が難しいという子が多くいます。

ここを乗り切る方法の一つは、家でコンパスを使って模様を描いて遊ぶことです。コンパスで大小様々な円を書き、それを組み合わせて模様を作ったり、出来上がった模様に色を塗ったりして遊ぶと、自然とコンパスの使い方に慣れ、円の概念も身につきます。

理科の場合は、「物と重さ」「風やゴムの働き」「身近な自然の観察」の3つが、これまでと違って新しく追加される内容になります。この内、つまずき易いのは「物と重さ」だと思います。

これは、〝材質・体積が同じなら、物の形が変わっても重さは変わらない〞という事と〝体積が同じでも重さが違う物がある〞という事を理解する勉強ですが、子どもは往々にしてイメージで物事を把握するので、同じ材質・体積の物を形を変えて比較すると、重そうな形をしている方を重いと捉えてしまうケースが多いのです。

これをクリアするには、実際に手を使ってやってみるのが一番です。例えば、同じ粘土を2つ買い、それぞれ別の物を作り、完成したら重さを量る。または、1リットル入りの飲料水のペットボトルに砂を詰めて量ってみる。親と一緒にこうした遊びをすれば、子どもはスムーズに理解することでしょう。

「風やゴムの働きき」にしても「身近な自然の観察」にしてもそうですが、理科の学習において効果的なのは、実際に体験することです。

例えば、親子で散歩や買い物に出かけた際には、ただ漫然と歩くのではなく、目にする草花や虫、その日の気温や風の向きなど、様々なことに子どもの関心を向けさせてあげて下さい。日々の生活の中で子どもを意識的にリードしてあげることが大切なのです。

算数や理科と比べればつまずく要素が少ない国語と社会ですが、だからといって何もしないで良いわけではありません。どんなに計算能力があっても問題の意味を正確に理解できなければ解答は導けませんから、算数ができるようになるには国語も必要。国語はある意味、全ての学問の基本なのです。

では、その国語の基本となるのは何でしょうか。それは語彙力です。多くの言葉を知り、その言葉の持つ正しい意味を知ることで、表現力や読解力も身につきます。

語彙力を高める最適な方法はやはり読書ですが、子どもが読みたくない本を無理矢理与えることは逆効果になってしまいますから注意して下さい。サッカー少年ならサッカーの本、犬好きな子なら犬の本、等々、好きな物から読ませるようにしましょう。興味がある分野の本から始め、読書を習慣づけられればしめたものです。

また、3年生、4年生は共に1年間で200字の漢字を習い、この2年間で覚える漢字の量がグッと増えますから、漢字に苦手意識を持つ子どもも出てきます。

漢字対策としても読書は極めて有効です。特に、学年誌や小学生新聞、学習マンガなど、漢字にルビがふられているものは、繰り返し読んでいる内に自然と漢字を形で覚えますから、読んでいない子と比べ、漢字学習がスムーズになるはずです。

社会の授業は、3年生では自分の住んでいる市町村、4年生では都道府県について学習します。実は社会も、理科と同様に、実際に見て、感じることが理解の早道です。

散歩のとき、或いはちょっとした遠出で車や電車に乗ったとき、「あの工場は何を造っているんだろう?」、「この畑では何が取れるんだろう?」、「この川はどこからどこまで流れているんだろう?」等々、意識付けしてあげることで、子どもは自分の市町村や都道府県についての理解を深めることができます。

私は、楽しみながら無理なく子どもの知的好奇心を刺激し、勉強を好きにさせる「楽勉」を薦めていますが、社会や理科はこの楽勉にうってつけです。

例えば、リビングに地図帳や図鑑を置いておき、TVで何か気になる物を見たら直ぐに調べてマーキングします。マーキングが増えれば達成感が得られ、繰り返していく内に、自然と学習意欲が湧いてくるのです。算数、理科の所で紹介した〝コンパス遊び〞や〝親子散歩〞も楽勉の一つです。

先に述べたように、新学習指導要領で学習内容の密度は高まり、放っておけば子どもがつまずくであろう箇所も多々あります。

保護者の方々には、この点をしっかりと認識した上で、遊びや生活の中で意識して子どもを知的に鍛え、子ども自らの学習意欲を高めてあげるように導いて欲しいと思います。

初出「小学三年生」(小学館)