前回、教育界ナンバー1のメルマガ「親力で決まる子供の将来」の発行人の親野智可等さんに、子どもの金銭教育について伺ってみると、定額制、お小遣い帳、自己評価の3つのセットが重要だとわかった。

続いて、日常生活での実践方法を質問。子どもの金銭教育がいかに大切なのかが身につまされる話だった。


●高額な買い物の資金を貯めるために、家庭内アルバイトをさせる方法もある


子どもの金銭教育の方法について教育界ナンバー1メルマガ「親力で決まる子供の将来」の親野智可等さんにお聞きして、お小遣いを定額制にして自分の欲望をコントロールする能力を養うのが大切だということはわかった。

でも、私が子どものころと比べても、高価なおもちゃが増えている。「いつものお小遣いじゃ足りないー」と娘にせがまれる場面が、今から想像できてしまう。そんなピンチを切り抜ける方法として親野さんが提唱するのが、家庭内アルバイトだ。


「お人形のセットが欲しいけど、1万円もする。そんなときは家庭内アルバイトをやらせてもいいでしょう。目的と期間を明確に決めることが大切です。例えば、いつもは玄関掃除をやっているけれど、1ヵ月間はお風呂掃除もして、そのたびに100円とか。目的のために一生懸命に働いて、お金を貯めて買う。社会に出る準備にもなります。もちろん、ここで貯めていくお金は定額のお小遣いとは別に管理します」
 

ただし、注意が必要だ。定額制ではなく、テストで100点取ったら100円とか、お手伝いをしたら100円という具合に、お小遣いを報酬制にすることに対して親野さんは警鐘を鳴らしている。

教師時代に、運動会で「紅組だから紅組を応援しよう」と声をかけると、「応援したら何くれるの?」と言った小学4年生の子がいたという。その子どもは、先生にも友だちにも、だれに対しても「これしたら何くれる?」。その子の家では、何にでもお金で報酬を与えていたらしい。


「家族という共同体の中で、みんなが助け合って生きているわけです。お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、家族のみんなが子どものためにいろいろなことをしてくれています。ですから、子どもも自分ができることをみんなのために進んでやるという気持ちこそが大事です。お手伝いも家族間の愛の表れとしての行為なのです」

「『お手伝いをしたら100円』などとやっていると、大切な価値観がゆがみます。それを踏まえたうえで、それとは別なものとして家庭内アルバイトを考えることが必要です。「○○を買うためにいくら貯めたい、そのために普段のお手伝い以外に1ヵ月間○○の仕事をする、そして100円もらう」というように、目的、金額、期間などを決めて行うのです」


●スーパーに子どもと一緒に買い物に行くのは、金銭教育の実践にちょうどいい


親野さんには、お小遣いのあげ方のほかにも、日常生活のちょっとしたことからお金との付き合い方を教える実践法を教えていただいた。食材の買い出しひとつ取っても、金銭教育の機会にできるとのこと。その幾つかはお小遣いをあげ始める前の子どもにもできそうだから、今度の休みは娘と一緒にスーパーに行ってみようと思う。


「まず、子どもにチラシを見せてください。同じお菓子でも店によって値段が違いますよね。出発前に調べて安いスーパーに行けば、それだけで消費者教育になります。定額制にすれば、子どもも一生懸命にチラシを見るようになります。一緒にスーパーに行って、どちらの商品がお得か、3割引きだと何円になるかといったことを子どもと話し合いましょう。また、ときには、『欲しいものを全部買えるわけじゃない』と、親は我慢する自分の姿勢を子どもに見せます。コミュニケーションになりますし、子どもも頭を使うようになります」


銀行やゆうちょ銀行に連れていくことも大切だ。わが家も娘の名義の口座を作っているが、お年玉などの臨時収入を入金する場合は、いつもATMで入金するのではなく、少なくとも一度は子どもと一緒に窓口で現金を手渡しする経験をしたほうがいいと言う。なるほど。お金を預ける行為は子どもには理解しづらいから、実際に具体的な例を見せることが大切というのは納得だ。


●金銭教育とは、子どもの一生を作用する「お金力」を養うこと


こうした金銭教育を早いうちから実践すれば、私の娘も、お金に振り回されず主体的にうまく付き合えるようになりそうだ。テレビにケータイにゲームにと、今の子どもたちを取り巻く欲望は多いから、そうした面でもこの金銭教育は役に立ちそう。だが、金銭教育にはもうひとつ重要な点があると、親野さんは強調された。

「子どもが1円拾ったら、どうさせますか? さすがに交番に持っていくのは面倒だし、もらってしまいなさいと親はやりがちです。でも私は、これは間違いだと思います。たとえ1円でも、そのお金は自分のお金ではありません。そういうお金は、コンビニに持っていって募金箱に寄付すればいい。1円をいいかげんにすると、お金を大切にしない気持ちがだんだん広がっていきます。お金に対するけじめは大切です」


「小学校も高学年にもなると、子ども同士でおごったりお金の貸し借りをしたりということが出てきます。これは非常に大きな問題です。例えば、おごってもらった側は『おごってもらった』と言っても、場合によればおごった側にとっては『おごらされた』となります。親としては、1円たりとも、子どもはおごったり貸し借りをしたりしてはいけないと教えるべきです。お小遣いは、子どもが稼いだお金じゃない。子どもには自由にする権利も資格もありません」


厳しいようだが、長年、親と子を見続けてきた親野さんだからこその言葉。金銭教育は難しいことではないが、軽い気持ちでやるべきことでもない。子どもの一生を左右する「お金力」を養うことなのだということが、よくわかった。娘にはまだ少し早いが、自立心をうまく刺激し、「本当にそれ欲しいの?」と問いかけながら、スーパーでお菓子を選ばせるところから始めてみよう。

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