親野智可等さんにお聞きした、学習環境のつくり方もいよいよ最終回。親が身近にいるリビングで勉強させること、子どもを勉強好きにするテクニックに続き、最後に伝授していただいたのは、家中を効果的な学習環境にしてしまう「楽勉(らくべん)」の心得だ。


●家中を効果的な学習環境にすることができる?


親野さんは「楽勉(らくべん)」という考え方を提唱されており、それはまさに家中を勉強のための効果的な環境にするということなのだ。


「楽勉とは、生活の中で遊びながら、楽しみながら知能を育てることです。子ども部屋に限らず、家のいたるところに楽勉コーナーを作れば、放っておいても子どもは伸びていきます」

 
●えっ? テレビの近くに図鑑や地図帳を!?


例えば、リビング。リビングでは、図鑑や地図帳、地球儀、国語辞典をテレビの近くに置いておくといいと、親野さんはおっしゃいます。


「テレビを見ていてライオンが出てきたら、見ている最中でも見終わってからでもいいのですが、図鑑でライオンを調べましょう。○○砂漠という地名が出てきたら、地図帳や地球儀で探します。そして探し出した動物名や地名に、マーカーや色鉛筆で印をつけるとよいでしょう。何度でもそこに目がいくようになりますし、印が増えていくことで、ある種の達成感もあります。これは国語辞典でも同じ。こうしたことの積み重ねが大切です」


なるほど、「一日○時間まで」「○○はダメ」という発想で、ついテレビを敵視してしまいがちだったが、勉強に応用する手もあるのか。これは是非今日からでも実践したい。


家の壁にかける時計については、子どもが60進法と12進法を理解して時計を読めるようになるためには、デジタルではなくアナログの時計が必要だとのこと。思わず「それは自分でも思っていました!」と得意気な気分になりかけたけど、でもさすが親野さん、模擬時計を作るというアイディアは、素人の新米パパが思いつくものではない。


「実際のアナログ時計の隣に、画用紙で模擬時計を作って貼っておくといいでしょう。例えば朝の7時までにかばんの支度をするなら、7時を指したアナログ時計を書くのです。6時50分になったときに、『あとこれだけしか時間がないよ』と示せば、時間が量としてわかります。『あと10分だよ』という言い方は、実は子どもにはわかりません」


●なんと、カルタやパズル、マンガも活用できる!?


ほかにも、トイレに地図を貼る、家の2ヵ所(暖かいところと寒いところ)に温度計と湿度計を置く、キッチンの子どもが見える場所に料理用のはかりを用意するなど、様々な工夫を教えてくださった親野さん。いずれも日常生活の中で「学びを体感させ、定着させていく」ということなのだろう。


「遊びながら勉強をするのに、今は安くて良い商品もたくさんあります。子ども用の顕微鏡・望遠鏡から、漢字カルタ、ことわざカルタ、日本地図ジグソーパズル、図形パズル、ひらがなポスター、そして学習マンガまで。子どもが自然に勉強をできるように工夫をしてあげることが大切です」


勉強が楽しいと思えないと、学習習慣は身につかない。だから、たくさん褒めるという言葉の工夫と、心理的なハードルを下げ生活の中で学ばせる環境の工夫とが、親には求められる。「娘を机に向かわせるにはどうすればいい?」から始まった学習環境づくりの疑問は、具体的ですぐに取り入れたいたくさんのアイディアをいただいて、解消されたのだった。

初出「パパナビ」

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