「“人に好かれる子”というのは、他者信頼感に満ちた思いやりのある子。他者信頼感に満ちた子に育てるためには、まず人間関係の第一歩となる親子関係がとても重要です。親に不信感を抱いている子は、他人にも不信感を抱いてしまい、人間関係をうまく作ることはできません」



そう話すのは、教育評論家の親野智可等先生。
では、親は日々、どのように子どもに接することが大事なのでしょうか?


「もっとも大切なのは、子どもの状況を理解し、受け入れ、そして何より共感してあげることです。これが、できるようでできていない親御さんが多いんです。子どもの気持ちは門前払いで、“何言ってるの!”“ダメでしょ!”と、正論を押し付けて否定的な言葉を浴びせる。だから、子どもは素直になれなくなってしまって反発する。この悪循環なのです」(親野先生 以下同)


どこの家庭にも日々よくある、こんなシチュエーションでも…。


「例えば、お子さんが“宿題やりたくなーい”と言ったとき、“何言ってるの! やらなきゃダメでしょ!”と、親御さんはつい上から目線で正論をぶつけてしまいます。でも、親としての正論はさておき、まずは“そうだよね~、宿題イヤだよね~、お母さんもそうだった。毎日大変だよね~”って共感してやるんです。お子さんはやらなきゃいけないことなんて、はじめからわかっているんです。わかっちゃいるけど、言ってみたい。気持ちを聞いてほしい、共感してほしいだけなんです」




●人に好かれる子は、親の理解、受容、共感で育つ。


まず共感してやることで、子どもは素直な気持ちになれるという。


「お母さんが共感してくれると、“私が(僕が)どんなに大変か、お母さんだけはわかってくれている”と、気持ちがスーッと楽になるんです。これが何より大事。親御さんへの信頼感はこうして育まれるのです。そうすると、素直な気持ちになれるんです。そして、ころあいをみて、再度うながすなど、励ましやアドバイスをしてやれば、宿題をやらなきゃいけないことはわかっているので、素直に取り掛かることができるのです」


こういうとき、すべてのことを自分に置き換えると、どうすべきかがよくわかると、親野先生は話します。


「大人の我々だって、何かの相談ごとやグチをこぼしたいとき、答えや正論はわかっているけど誰かに聞いてほしい、言ってみたいだけのときってありますよね? それなのに、話した相手がああだこうだと正論をぶつけてきたり、説教してきたりすると、“この人は何もわかっちゃくれない。もう二度と相談しない”って思いますよね?(笑)。それと同じです。つまり、まず共感することこそが、人を思いやることなのです」


共感力は、まさに生きていくうえでのマスターキーだと親野先生は断言します。


「親が共感を最優先していると、親子関係は絶対によくなります。同時に、子どもは親の共感的な接し方を真似するようになるので、友だちに対して共感的な接し方ができるようになるんです。そういう子の周りには、自然と友だちが集まってきます。社会に出てからも、共感力のある人は周りの人から慕われるでしょう」


つい親という立場に甘えて、子どもへの思いやりを忘れてしまいがち。もし自分だったらどう思うか?

常に子どもの立場に自分を置き換えて一方通行の愛情にならないように気をつけましょう。