家族がいる居間で勉強する子どもが増えている。リビング学習と呼ばれ、子どもが勉強に集中しやすいと数年前から急速に広がったが、親の関わり方次第で逆効果になるケースも。新年度を前に、専門家に注意点を聞いた。 (東京新聞 寺西雅広)


 リビング学習が注目されたのは二〇一〇年ごろから。学習効果が高いとして教育雑誌で特集され、人気が広まった。通信教育大手ベネッセコーポレーションが一三年に小学一、二年生のいる全国の保護者二百人を対象に実施したアンケートでは、約八割がリビングで勉強しているとの結果が出た。


 静岡県内の元小学校教諭で、教育評論家の親野智可等(おやのちから)さん(57)によると、リビング学習の一番のメリットは子どもが安心感を得られること。「低学年では、風が吹いただけでお化けがいると不安になる子もいる」。その点、家族がそばにいれば落ち着いて集中し、分からないところも質問できる。親にとっても、子どもがちゃんと勉強しているか見守れる利点がある。


 ところが、リビング学習はメリットがそのままデメリットにつながりやすいという。「もろ刃の剣です」と親野さん。


 子どもの様子が手に取るように分かるため、親は過干渉になりがちだ。「何でできないの」などと否定的な言葉をかけると、「自己肯定感の欠如、親子関係の悪化につながる。そもそも子どもが勉強を嫌いになる」と強調する。


 親野さんが親に求めるのは言葉の工夫。「やりなさいと命令するだけでは、子どもは動きません」。なかなか勉強を始めようとしない子には「最初の一問だけやろうか」「漢字一文字だけ書こう」などと、取り掛かるハードルを低くするのも手だ。


 注意点はほかにも。勉強の際にダイニングテーブルを使う家庭も多いが、高さが合わないと姿勢が悪くなって集中力がそがれる。リビングの照明は暗めなので、手元を照らすスタンドもあった方が良い。弟や妹がいて気が散る場合はパーテーションで区切り、勉強中は家族がテレビ視聴を我慢するなどの協力も必要だ。


 中学生ぐらいになると、リビング学習をやめて自分の部屋で勉強する子が増えてくるという。


 これまでに約六百四十軒を家庭訪問した親野さん。親の過干渉や否定的な言葉で、親子関係が悪化する例を多く見てきたという。「リビング学習は触れ合う時間が長い分、子どもを否定してしまう時間も長くなる。接し方を見直して」と呼び掛ける。

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つづく (東京新聞)

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