学校の入学まであと少し。ランドセルに文房具など、必要なものの準備はできていても、親の心には「わが子はうまく小学校でやっていけるのだろうか?」という子どもの学校生活への不安が湧いてくるもの。

 今からでも間に合う、「親ができること」について、公立小学校で23年間、教師を務めた経験からメルマガ「親力で決まる子供の将来」を発行する教育評論家・親野智可等さんにお話を伺いました。

 2回目は子どもが学校になじむための、親と子どもの“心と言葉”の準備について。

●3月中は子どもの成長をたくさん褒めつつ、小学校の“楽しいね”の話をする

日経DUAL編集部 小学校に入学する直前になると「わが子は小学校でうまくやっていけるのか」と一層、心配になりがちです。入学までに親ができるのはどんなことでしょうか?


親野さん(以下敬称略) 入学準備期間に入ってからの全体的なお話になりますが、心配するあまり、ついつい子どもを脅してしまう親が多いんですよ。「○○できないと、先生に叱られちゃうよ!」とか、「○○しないと、みんなについていけないよ!」「そんなことでは小学校に入れないよ!」などと言ってしまう。そういうことばかり言っておどしていると、子どもは自信がなくなってしまいます。

 しまいには、「小学校って怖いところだな」とか、「学校の先生って、どんなに怖い人なんだろう」と、子どもにとっての小学校生活そのものが暗いイメージになってしまい、子どもは戦々恐々として小学校に入学することになってしまいます。これは絶対にさせないようにしてほしいことです。


── そうならないためには、どうするのがいいのでしょうか?


親野 保育園の終わりくらいになってきたら、とにかく自信を持たせるようにすることが、ものすごく大事です。年長さんになってからの1年間で、どれだけ自分が成長したのかを自覚できるようにしてあげるべきです。

 例えば、靴の大きさでもいい。こんなに小さかったのに、「今はこんなに大きくなったね」とか、「靴もちゃんと履けるようになったね」「自分でボタンをかけられるようになったね」「身長がこんなに高くなったね」でもいいわけです。

 「何かお手伝いを毎日続けられたね」でもいいし、「すごく上手な絵をいっぱい描いたね」でもいい。とにかくその1年間、子どもが頑張ったことや、できるようになったこと、成長したことなどを3月くらいになったら、一緒に振り返ってあげるようにするといいですね。

 「こんなに成長したね」と親が褒めると、子どもは喜びます。それとともに、小学校生活がプラスイメージになるような楽しいことを言ってあげましょう。「小学校に入ると給食があって、おいしいよ」とか、「グラウンドが広いからいっぱい遊べるよ」「遊具がたくさんあって楽しそうだね」とか、小学校の“楽しいね”の話をいっぱいしてあげましょう。

 勉強面でも、「算数の勉強もして計算ができるようになるよ」とか、「平仮名やカタカナ、漢字も勉強して本もたくさん読めるようになるよ」といったポジティブな話をしてあげると、楽しいイメージを持つようになるはず。小学校生活をプラスイメージで捉えられるようにしてあげましょう。

 くれぐれも「ちゃんと着替えられないと先生に叱られちゃうよ」とか、「入学してからできないと怒られるよ」などと、言わないように気を付けてほしいと思います。

●「自分はできる子だ」という“思い込み”を持たせよう

──保育園最後の1年間の成長を振り返って、子どもに自信を持たせるために何をすべきかを、親は常に考えたほうがいいということですね。

親野 それがすごく大事です。なぜかというと、自信を持たせることで「自己肯定感」を少しでも高めておけるからです。自信がなくて、自己肯定感の低い子どもは、何をするにも「オレ、ダメ」「できない」「私、ムリ」となってしまいます。勉強はもちろんのこと、遊びでも生活習慣全般でもそうなりがちです。

 逆に、自信があって自己肯定感が高い子どもは、勉強でも運動でも生活習慣でも「できそうだ」と思って、頑張ることができる。たとえ、何か壁にぶつかったとしても、「できるはずだ」と乗り越えられるのです。自己肯定感が低い子どもは、「やれそうだ」とも思わないし、その前に頑張る気力が起こらない。ちょっとやってみたとしても、「やっぱりダメだ」「どうせダメだ」と、何においても頑張れなくなってしまうのです。

 だから、本当に漠然としたものでいいんです。小学校入学前にできるだけ、自己肯定感を育てておきたいですね。「ボクはできる」「ボクはやれる」「できる子だ」といった“思い込み”を持たせてあげてほしい。これが、特に小学校に上がってから伸びるかどうかの境目になってくると思います。

 これは、何に関してもそうです。自己肯定感や自己イメージといったものが低いままの子どもというのは、いろんな面でなかなか伸びないんです。人生というのはある意味、思い込みで決まるようなものですからね(笑)。


──生きて行くうえでの、すべての事柄の根本にも関わってくるお話です。そのためには、親がわが子を褒めるポイントをしっかり見てあげないといけないですよね。


親野 そうですね。しかも実はその自己肯定感が高くなるかどうかは、親の言葉に左右されます。親の言葉がいつも否定的だと、自己肯定感はなかなか育たないんです。「また、あれやってない」「なんでしないの!」「しなきゃダメでしょ!」などと、否定的で、しかもとがめるような言葉をいつも浴びている子どもというのは、「自分ってダメな子だなあ」となってしまうんですよ。そういう言葉を極力、小学校入学前は特に気を付けて言わないようにしてほしいですね。

 できたことや頑張ったことをできるだけ見つけて褒めてあげる。それができる親でいれば、子どもの自己肯定感はどんどん高まるはずです。

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つづく

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