私は、23年間教師をしていましたが、その間ずっと感じていたことがあります。
それは、子どもたちに働きかけるだけでは十分でないということです。
もちろん、教師として目の前にいる子どもたちを一生懸命指導することは、まず第一に大切なことです。
でも、それだけでは、不十分なのです。
いくら学校で一生懸命勉強を教えても、家庭の中に知的な雰囲気が皆無では、学力が上がるはずがありません。
いくら学校で「○○君は□□がすばらしいね」とほめていても、親が「○○はダメだ、ダメだ」とけなしていては、自信が付くはずがありません。
ですから、親たちに働きかけていくことは、絶対に必要です。
親が変われば子どもも変わるのです。
私は、そのような思いから、学級便りを書いたり、懇談会で話をしたりしてきました。
その中で、私が教師として得た経験、知識、理解、技術などを提案してきました。
特に、提案してきたのは、次のようなことです。
1 親に愛されていることを子どもが実感できるようにすること
2 子どものいい面を伸ばすことと、苦手な面には目をつぶることも必要なこと
3 叱るのではなく、ほめて伸ばすこと
4 生活や遊びの中で楽しみながら知的な刺激ができる楽勉に努めること
親たちは、私の話をいつも一生懸命聞いてくれました。
そして、実際の行動に移す人もたくさんいました。
このような経験から、私は、親たちが現場の教師たちからもっと話を聞きたがっていると感じました。
親たちは、みんな手探り状態なのです。
自分たちの子育てに役立つ話を、たくさんの子どもたちを毎日見ている教師たちから聞きたがっているのです。
ですから、教師は、もっと自分たちの考えを親たちに伝えていくといいと思います。
しかも、それを自分自身の考えとして、自分自身の実感のこもった声として伝えていくことが大切なのです。
そして、親たちだけでなく、広く世の中全体に伝えていくことも必要です。
そうでないと、現場の現実を知らない文化人や政治家の発言だけが多くなってしまいます。
昨今、学校や教師は、マスコミや親たちに言われ放題です。
それで、守りの姿勢に徹している感じです。
当たり障りのないことだけ言って、滅多なことを言わないようにして、ダンゴムシのように丸くなっているだけです。
それが却ってよくないのです。
教師は教育現場の最前線にたつプロなのです。
そのプロの毎日の実践の中から生まれた認識こそが、世の中の宝だと思います。
それこそ、子育て中の親たちが一番知りたいところであり、とても価値ある情報なのです。
ですから、私は、機会あるごとに、現場の教師たちに呼びかけています。
自分たちの考えを、どんどん伝えていきましょう。
それが子どものためにも親のためにも、そして、世の中のためにもなるのです。
初出「日本教育新聞」
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