その人は多種多様な企業の人事制度や人材採用について熟知している人事のプロです。
彼はこういう話をしてくれました。
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(本連載を1冊にまとめました)
「時代が変わると企業が求める人材も変わってくる。90年代半ばには、採用試験で『何でもやります。何でも言ってください』と答える無色透明な人が好まれた」
「98年くらいから様子が変わって、企業は『君はこの会社で何をやりたいのか?』『今までどんなことやってきたか?』『あなたには何ができるのか?』と聞くようになった。だが、それに答えられる人は意外と少ない」
私はこの話を聞いて「やっぱり」と思いました。
というのも、ある週刊誌の編集者から同じような話を聞いたことがあるからです。
彼によると、自分で企画を考えつける編集者が少なくて困っているとのことでした。
「これをやって」と言われれば上手に仕上げるのだけど、自分からこういう企画をやりたいと言って意欲的に取り組む人が少ないのだそうです。
そして、こうも言っていました。
「自分の意欲でやり始める人は、困難に当たっても自分で責任を持ってやり遂げようとする。だが、上司に言われてやる人はそういうガッツがなく、うまくいかないときは上司のせいにする」
この自分でやりたいことを自分で決める力を課題設定力といいます。
そして、これは自己実現的な人生を生きるために必須なものです。
では、どうしたら子どもたちに課題設定力をつけてあげることができるのでしょうか?
まず大切なのは、親が子どもをよく観察してその子のやる気の芽を大きく育ててあげることです。
ある親は、小学二年生の娘がサッカーの本を読んでいるのを見てボールを蹴る遊びを一緒にやってあげました。
それから、女の子は毎日その遊びをやりたがり、親も一緒に遊んであげました。
そして、「上手だね」とほめ続けました。
また、サッカーの試合を見に連れて行ったり、サッカーの本を一緒に読んだり、好きなチームのカタログ集めを手伝ったりもしていました。
そうしたら、あるときその子は「サッカー少年団に入りたい」と言い出しました。
親は「女の子なのに…?」と思わないでもなかったのですが、「そんなに好きなら応援してあげよう」と思い親子で監督に頼みに行きました。
結局、そこは男子のみということで断られたのですが、その子はあきらめずに作戦を考えました。
サッカーをやりたい女の子は他にもいるはずだと考え、二年生の各クラスを聞いて回りました。
そうしたら、サッカーをやりたいと思っている女の子を二人見つけることができました。
そして、女の子三人とその両親六人の合計九人で監督に頼みに行きました。
監督はその意欲に感動して入団させてくれたのです。
この女の子は、自ら「サッカー少年団に入りたい」という課題設定をして実現させました。
これができたのは、その子のやる気の芽を親が育ててくれて、「自分はこれをやりたい。好きなことをもっとがんばりたい」という強い意欲とガッツがあったからです。
親にやらされて渋々やっていることだと、そういう意欲やガッツは持てません。
この一連の過程でこの女の子はとても大切なことを学んだはずです。
それは、自分でやりたいこと見つけて、知恵を使って作戦を考え、果敢に挑戦・努力すれば成し遂げられるということです。
これこそ課題設定力そのものであり、自己実現的な人生を生きるために必須なものなのです。
初出:目指せ! グローバルキッズ! 子どもにつけてあげたい12の翼
『子ども英語ジャーナル』(アルク)2011年4月号
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