私は、教師として650人の子を教えてきました。
その経験で言えることは、子ども時代の生活で一番大切なのは、毎日を安らかな気持ちで過ごすことだということです。

子どもの中には、毎日「また○○してない」「何度言ってもできないね」「ちゃんとやらなきゃダメでしょ」などと、否定的に叱られてばかりの子もいます。

いつもこのような叱られ方をしていると、間違いなく、子どもは自分に自信が持てなくなります。
「自分はダメだ」という結論になり、自己肯定感が持てなくなるのです。

同時に、親に対する不信感も出てきてしまいます。
そして、親に対する不信感を持ってしまうと、その後のいろいろな人間関係も不信感を土台につくるようになってしまいます。
つまり、他者信頼感が持てなくなるのです。

こうなると、自己否定と他者不信を抱えて生きることになり、それが引いては反社会的な行動になって表れることもあります。

ですから、親は否定的な言い方をやめ、肯定的な言い方で子どもに接することが大切です。
例えば、「また、○○してない」「○○しなきゃダメでしょ」などではなく、「○○するといいよ」「○○するとうまくいくよ」などです。

さらにいいのは、「○○できてきたね」「○○がんばってるね」などと、肯定的にほめる言い方です。
否定的に言いそうになったら、言う前に自己翻訳することが大切です。

親が否定的な言い方から肯定的な言い方にかえるだけで、子どもの毎日は安らかになります。
親の言葉は、子どもにとって環境そのものであり、圧倒的な影響力があるからです。

もう1つ、子どもの安らかな生活にとって大切なのは、親の共感的態度です。
例えば、子どもが「○○を買って欲しい」「塾をやめたい」「宿題がめんどう」などと言いだしたとき、親はすぐに「ダメ」や「ノー」を突きつけてしまいがちです。

そうではなく、まずは、うなずきながら、共感的な相づちを打ちながら、たっぷり聞くことが大切なのです。
たとえ最終的には「ノー」と言わなければならないときも、まずは子どもの気持ちへの共感を最優先するべきです。

親に共感的に聞いてもらえると、子どもはそれだけでかなり満たされます。
たとえ、最終的に「ノー」であっても、共感的に聞いてもらえれば、「気持ちをわかってもらえた」「自分のことを受け入れてもらえた」ということで満たされるのです。

同時に、親に対する信頼感が大きく育ち、親子関係がよくなります。
というのも、信頼できるひととは、自分のことをわかって受け入れてくれるひとのことだからです。

そして、共感的態度は、大人同士の人間関係においてもとても大切です。
特に、自己肯定感や他者信頼感が持てない状態のひとと接するときは、本当に大切です。

そういう状態のひとに対して、お説教やアドバイスを優先しても、受け入れてもらえません。
まずは、彼らの話にじっくり耳を傾け、ひたすら共感的に聞くことが最優先です。

それによって、「自分のことをわかってくれた。受け入れてくれた」と感じてもらえます。
そうして、初めて、閉ざされていた心が開き始めるのです。

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