学校で楽しく生活していく上で、とても大切なのが友達との関係です。
そのために必要なのが友達力です。

友達力とは、「友達との人間関係をうまく調節する力」です。
「調節する力」ですから、「友達といる力」と「ひとりでいる力」の両方を含みます。
ですから、「豊かな友達体験」と「ひとりで過ごす豊かな時間」の両方が大切です。

7歳までに学力アップ!
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(本連載を一冊にまとめました)

ところで、以前この連載で、私は「いま1年生に入学してくる子どもたちを2,30年前の子どもたちと比べると、明らかに不足していることがあります。それは、自然体験です」と書きました。
実は、この自然体験とまったく同じことが、友達体験についても言えます。

以前は、子ども同士で遊んで過ごす時間が今に比べてはるかにたくさんありました。
幼児期の子でも学齢期の子でもそうでした。

園や小学校から家に帰ってからも、近所のいろいろな年代の友達とよく遊びました。
土曜日の午後、日曜日の午前午後、夏休み、冬休み、春休み、いつだって、子ども同士で遊びまくっていたのです。

その中で、自然に、人間関係について学び友達力を育てていたのです。
そして、それは生涯にわたる人間関係力の土台でもあったのです。
たとえば、次のようなものです。

友達の誘い方、遊びに入れてもらう方法、断り方。
自己主張、相談、調整、妥協、ルール作り、けんか、謝罪、仲直り。
リーダーシップ、フォロワーシップ、友達との距離の取り方、ときにはひとりでいても平気な強さ、友達の嫌な言動への言い返し方とやり返し方、相手の気持ちを想像して思いやること。

このような、一生を生きていく上で極めて大切なものを子ども同士の遊びの中で育てていたのです。
今は、子ども同士で過ごす濃密な時間があまりにも少なくなっています。
友達体験が少なくなることで、当然ながら前記のような友達力も育ちにくくなります。
それが、友達関係の悩みやいじめの深刻化にもつながっています。
引いては、生涯にわたる人間関係づくりにも大きな影響を与えることになります。

このようなわけで、入学準備という点においても、そして、その後の学校生活、引いては人生全体においても、小さいころからの豊かな友達体験がとても大切なのです。

親の中には、子ども同士で遊ぶ時間の大切さをよく理解していないひともいます。
そして、小さいころから親がやらせたい習い事や勉強ばかりに子どもの時間を振り向けているひともいます。
その方が有意義だというわけです。

でも、一見ムダに見えることが実は貴重だということはよくあることです。
すぐ成果が上がったり効果が数字で表れたりすることばかり一生懸命取り組み、目先のことで一喜一憂していると、本当に大切なことが忘れられてしまいます。

子ども同士で遊ぶ時間の中で、ゆったり流れるその時間の中で、人間にとって本当に大切なものが育まれていくということを忘れてはいけません。

保育園や幼稚園で友達と遊ぶ時間は、子どもにとってとても大きな学びの時間です。
また、近所の友達と家や公園などで遊んだり、さらには、従兄弟やママ友達の子と遊んだりするのもとてもいい経験です。

もちろん、ひとりで心ゆくまで遊ぶ時間も大切です。
言い換えれば、ひとりで過ごす豊かな時間です。
これによって、自分の世界をつくることができます。

こういう時間の過ごし方もできる子は、友達に頼り過ぎなくてすみます。
それでないと、「いつでも友達がいないと不安だ」ということになってしまいます。

ですから、これも、友達力のひとつと考えてください。
友達力とは、「友達との人間関係をうまく調節する力」であり、「友達といる力」と「ひとりで平気でいられる力」の両方を含むのです。

ところで、子どもの友達付き合いについて、親はあまり神経質になりすぎないことが必要です。
でも、その逆に無関心になりすぎるのもよくありません。

親がまったく知らないでいると、子どもが長い期間にわたって友達関係で悩むということも起こり得るからです。
長い間いじめられたり、その逆にいじめたりというのは、どちらもつらいことです。

これは、幼児期の子でも学齢期の子でも同じです。

でも、子どもが友達と遊ぶところを親がずっと見ているわけにはいきません。
保育園や幼稚園や小学校での様子をずっと見ていることなどできるはずがありませんし、その必要もありません。

ただ、ある程度は親がわかっていることもまた必要です。
それについては、次回書きたいと思います。