いま1年生に入学してくる子どもたちを2,30年前の子どもたちと比べると、明らかに不足していることがあります。
それは、自然体験です。

もちろん、生活の中で自然に親しむ機会が激減しているのですから、当然のことではあります。
1992年から生活科という新しい教科が始められたのも、それを補うためという意味が多分にありました。

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ただし、学校の生活科という授業の中で自然体験をするといっても限界があります。
時間的にも空間的にも、できることは限られています。

でも、このようなご時世にもかかわらず、中には比較的豊かな自然体験をしてきている子もときどきいます。
都市部ではどうかわかりませんが、私が住んでいる地方の小学校ではこういう子がクラスに数人はいます。

自宅で毎年必ずなんらかの植物を育てている子、祖父母と一緒に野菜作りをしている子、いろいろな虫を飼ったことがある子、キャンプや自然体験教室などによく行く子、ダンゴムシ取りの名人、数種類の動物を飼っている子、などです。

●自然体験が少なすぎる子が増えている

でも、その反対に、自然体験の極めて乏しい子もいます。
身近にそういう環境がなく、親も意識していないし、本人もそれに興味がない場合などは、そうなりがちです。

幼稚園や保育園によっては、花や野菜を育てたり虫や動物と遊んだりという時間を意識的にたくさん取っているところもありますが、あまり力を入れていないところもあります。
ですから、幼稚園や保育園でほとんどやらず、家庭でもなにもやらないという状態で入学してくる子もいるわけです。

昔でしたら、放っておいても野山や空き地で虫取りをしたり花の冠や草の笛を作ったりということはいくらでもできました。
でも、今は、大人が意識的に時間と空間(環境)を用意してやる必要があるのです。

それでないと、子どもに自然体験をさせることができません。
そういう時代ですから、自然体験も入学準備の一つと言えます。

小学校に入学する時点で、植物を育てたこともあまりない、昆虫に触ったこともない、動物に触ったことも抱いたこともない、そもそも土に触れたことがほとんどない、そういう子が実際にいるのです。
地方ですらそうなのですから、都市部ではかなり多いはずです。

●親の世代もすでに自然体験が不足している

このような子の中には、生活科の授業で花や野菜を育てたり虫を捕まえたり飼ったりするのにも消極的になってしまう子もいます。
もともと経験豊かな子はこういうときに大活躍ですが、あまりやったことのない子はどうしても尻込みするということが多いのです。
そして、よけい苦手意識を持ってしまうこともあります。

もちろん、中には、今までにない経験で張り切る子もいます。
それがきっかけになって、自然体験に目覚める子もいます。
でも、その後が続かないのです。

ある子は生活科の授業で虫のおもしろさに目覚めて、休み時間も虫取りに熱中しました。
そして、テントウムシの幼虫、アオムシ、ダンゴムシなどを捕まえて大喜びしました。
意気揚々と家に持ち帰ったら、お母さんに全部捨てられてしまいました。
お母さんの世代からして、すでに、自然体験の少ない育ち方をしている世代なのかもしれません。

●自然体験のある子は理科の勉強が大好きになる

ところで、3年生になると、1,2年生の生活科に代わって理科の勉強が始まります。
理科では、植物と虫が大きなテーマの1つです。
ここでも、自然体験の少ない子はなかなか興味を持てないことになります。

それは、当たり前のことです。
勉強とか学問というものは、本来、自分の体験が土台にあって、それに光を当てるからおもしろいのです。

たとえば、いろいろな虫を飼ったことがあって、カブトムシや蝶はサナギになるのにバッタはサナギにならないことを経験的に知っている子がいるとします。
その子が理科の授業で、「昆虫には、幼虫からサナギを経て成虫になる完全変態の昆虫と幼虫からすぐ成虫になる不完全変態の2種類がある」という勉強をすれば、ものすごく興味を持って取り組みます。

そして、その勉強をとてもおもしろいと感じますし、記憶も定着します。
なぜなら、自分が薄々感じていたことに学問の光が当てられ、漠然としていたことがはっきり説明され科学的知識に昇華されるからです。
これが本当の勉強や学問のおもしろさです。

その反対に、虫など飼ったことのない子がその勉強をしても、興味など持てるはずがありません。
昆虫に完全変態と不完全変態があると言われても、「それがどうした?」という感じでしょう。

●豊かな経験が学校の勉強の土台になる

また、たとえば、いろいろな虫を飼ったことがある子は、虫の冬越しの仕方にはいろいろあるということを経験的に知っています。
テントウムシのように成虫のまま冬を越す虫、カマキリのように卵で冬を越す虫、アゲハのようにさなぎで冬を越す虫、モンキチョウのように幼虫で冬を越す虫などです。

そういう子が理科の授業でいろいろな虫の冬越しの仕方を勉強すれば、とても興味を持ちます。
よく理解もできますし、記憶も定着します。
でも、そうでない子は、興味など持てるはずがありません。

もちろん、興味が持てなくても、テストに出るということになれば一生懸命覚えるかも知れません。
「完全変態は○○と○○と○○・・・」「成虫で冬を越す虫は○○と○○と○○・・・」などと丸暗記することはできます。
そして、テストではいい点を取ることができるかも知れません。

でも、こういう勉強を繰り返していると、だんだん「勉強ってなんのためにするの?」と感じるようになります。
それは、勉強や学問の本当のおもしろさを味わえていないからです。
それは、ただテストでいい点を取るための勉強を繰り返しているからです。
そういう勉強ばかりでは、「本当に勉強って楽しいな」と感じることはできないのです。

このことは、理科だけでなく他の教科にも当てはまることです。
どの教科においても、生活の中での豊かな経験が学校の勉強の土台になるのです。

●自然体験こそ、インスピレーションと創造の源泉

さらに、自然体験の大切さについて付け加えれば、これは理科の勉強が好きになるためだけでなく子どもの感性を育てるのにとても大切なものです。
豊かな自然体験は、本当に子どもの感性を磨いてくれます。

私の経験では、自然体験の豊かな子は何事につけてもオリジナルな発想やユニークなアイデアが多いということが言えます。
これは、自然体験によって磨かれた感性の表れと考えられます。
それは、その子の日記、作文、詩、絵、工作などの創造物に表れます。
また、いろいろな勉強や活動における思考、言動、人間関係などにも表れます。

なぜなら、自然こそ人間のインスピレーションと創造の源泉だからです。
自然体験の豊かな子は、後伸びの可能性もたくさん秘めているのです。
ですから、入学準備としてだけでなく、入学後も常に自然体験を増やすようにしてください。

最後に、とても大切なことをもう一度繰り返します。
今の時代は、子どもの自然体験を増やすために、大人が意識的に努力することが必要です。
そういう時代になったのです。
ぜひ、子どもに豊かな自然体験を贈ってあげてください。

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