●質問者の子ども:高校1年生・女子

 

●質問

娘に彼氏ができてうれしそうにしています。

母として喜んであげたい反面、性の問題など心配です。

節度のあるおつき合いをしてほしいのですが、どのように、そして、どこまで話をしたらいいのでしょうか?

 

●回答

日本性教育協会の2012年発表の調査によると、女子高校生の性交経験率は24%とのことです。

ですから、高校生の男女交際を考えるとき、性の問題は避けて通ることができないわけです。

 

ところが、日本の学校における性教育は先進国の中で一番遅れているのが実情です。

学校現場の努力によって、性教育の進展が見られたこともあるのですが、そのたびに「寝た子を起こすな」とばかりにその芽は摘み取られてきました。

 

  その結果、子どもたちは適切な指導を受けることができないまま、友達、雑誌、ネットなどの情報の洪水にさらされています。

そして、その多くは不確かで劣悪なものであり、自らを守る術さえ身につけられないままでいます。

 

そのため性感染症、エイズ、不本意な妊娠などのリスクが高まり、なんと日本は、HIV感染者が先進国で唯一増加している国になってしまいました。

 

このような状況ですから、親が正しい「起こし方」をしてあげる必要があるのです。

そのためには、性の話をタブー視したままではいけません。

気恥ずかしい気持ちはあるでしょうが、やはり親子で話題にしていくことが大切なのです。

 

とはいえ、上から目線で「こうしろ。ああしろ。これはダメ」というだけでは、子どもも聞いてくれません。

そこで、お母さん自身の高校時代の交際の話、あるいは初恋や恋愛の話をしてあげるといいでしょう。

子どもは大きな関心を持って聞いてくれるはずです。

 

そして、これは心理学用語で言うところの自己開示になります。

人は誰でも、自己開示をしてくれた相手に信頼を寄せるようになり、自分も自己開示で応えようとします。

ですから、子どもも自分の交際について話してくれる可能性が高まります。

 

日頃から、このような信頼関係を作っておけば、子どもも何かあったときお母さんに話してくれるようになります。

そして、この信頼関係を作る上で大切なのが、この連載で何度も触れていますが、子どもの話を常に共感的に聞くということです。

 

  統計的に見ても、親子関係がよくて居心地のよい家庭の子どもほど、性体験の時期は遅くなるという事実があります。

親が共感的で、自分を大切にしてくれているという実感がある子は、自らも自分を大切にしたいと考えるので衝動的な行動をしなくなるのです。

逆の場合は、自分なんかどうなってもいいと感じ、寂しさを埋めるために異性を強く求めるということになります。

 

そして、信頼関係を大切にしながらも、親として伝えたいことは上手に伝えましょう。

特に、性感染症、エイズ、不本意な妊娠などのリスクについては、必ず伝える必要があります。

また、性交は自分で責任を取れるようになってからにして欲しい、高校生のうちは手をつなぐとかハグまでにしておいて欲しいなど、親自身の気持ちも話しましょう。

 

ただ、それでもお互いの気持ちが高まって衝動的に性交に至ることもあり得ますので、そのときへの備えも大事です。

子どもがつまずいて大きな後悔をする前に、コンドーム、女性用コンドーム、ピルなどの使用方法や注意点などを実践的に指導しておくことも必要です。

本、ネット、動画などを活用しながら指導するのもいいでしょう。

教育的な価値の高いものがたくさん出ていますので、それを探して子どもに提供してあげてください。

こういったことを何一つしないまま、後で親子ともども後悔するということのないようにして欲しいと思います。

 

初出『やくしん』2015年5月号(佼成出版社)

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