●質問者の子ども:中学生と高校生の男子、二人兄弟

 

●質問

兄弟ゲンカが激しくて、物を投げ合ったり取っ組み合いのケンカをしたりします。

なぜ、こんなケンカをするのでしょう?

このまま大人になって口もきかなくなるのではないかと心配です。

 

●回答

こういうとき大事なのは、それぞれの言い分をしっかり聞いてあげることです。

ただし、二人一緒にして話を聞くとまたケンカになるので別々におこないます。

親子の一対一でじっくり話を聞きましょう。

 

そのときは、けんかについて叱るということではなく、本人の言い分をたっぷり共感的に聞き、その気持ちをわかってあげることが本当に大切です。

途中で遮ったり小言を言ったりすると台無しです。

 

この年代では素直に話そうとしない可能性もありますので、性急にならずじっくり時間をかけて、その子の気持ちをわかろうとしてあげてください。

親が自分のことをわかろうとしてくれていると感じると、子どもも素直に心を開けるようになります。

 

親に共感的に聞いてもらうと、子どもは気持ちがすっきりします。

同時に、「お母さん・お父さんは自分の気持ちを分かってくれた」と感じて、親への信頼が高まります。

 

そこで、「相手はどんな気持ちでいるかな?」とか「これからどうする?」などと聞いてみるのもいいでしょう。

すると意外と素直な答えが返ってくるかもしれません。

 

また、兄弟のどちらかが相手に対してコンプレックスを感じている場合、このようなケンカが多くなります。

特に、親が兄弟を比べてほめたり叱ったりしてきた場合は、その可能性が高いと言えます。

 

あるいは、親の愛情に対してどちらかが不公平感を持っている場合もそうなります。

つまり、「自分よりあいつの方がかわいがられている。自分は大切にされていない」と感じている場合です。

 

子どもは親の愛情の偏りに敏感ですから、親は努めて公平にすることが大切です。

親が当たり前と思ってやっていることでも、子どもは不公平に感じているということはよくあることです。

 

例えば、つい「あなたお兄ちゃんなんだから、○○しなきゃダメでしょ」とか「弟なんだから○○しちゃダメでしょ」などと言ってしまうことがあります。

こういう言葉は子どもに不公平感を持たせるので厳禁です。

 

また、兄弟の中には甘え上手な子と甘え下手な子がいます。

よくしゃべる子とあまりしゃべらない子もいますし、ほめやすい子と叱られやすい子もいます。

 

ですから、自然に任せたままでいると、必ず偏りが出ます。

自分から話しかけてこない子には親からあたたかい声かけをするとか、触れ合いが少ない子との触れ合いを増やすなど、意図的な調整が必要です。

 

あるお母さんは、兄が修学旅行でいない三日間、弟の好きな料理を作り続けました。

すると、それまで荒れていた弟がびっくりするくらい明るく素直になったそうです。

 

あるいは、この年代はもともと精神的に不安定な面があります。

友人関係や勉強などのストレスを強く感じていて、それが兄弟ゲンカの遠因になっていることもあります。

それに気がつくためにも、また癒してあげるためにも、日ごろから子どもの話を共感的に聞くことが大切です。

 

兄弟が仲よく写っている写真を目に見えるところに貼っておくのも一法です。

小さな時に砂場で一緒に遊んでいる、肩を組んで笑っている、などの写真です。

そういう写真を見ていると、自然に「ぼくたち仲がいいんだ」と思えるようになってきます。

 

初出『やくしん』2015年2月号(佼成出版社)

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