●子どもの話を門前払いする親たち
子どもが何か言ったとき、親はすぐに「ノー」を突きつけます。
特に、親にとって不都合なことを言ったときは必ずそうなります。
例えば、子どもが「習い事をやめたい」と言ったとき、すぐ「何言ってるの。やめちゃダメよ」とか「○年生まで続ける約束でしょ」などと言ってしまいます。
でも、これだと、子どもは自分の気持ちの持って行き場がなくなり、一人で思い悩みながらストレスを抱え続けることになります。
●まずは共感!
こういうとき、まずは子どもの気持ちを共感的に聞いてあげることが大切です。
「どうしたの?」「だって、○○○○なんだもん」「そうなんだ。それはイヤだね」「それに、○○○○なんだよ」「う~ん、そうかあ、それは大変だね」というようにです。
すると、子どもは安心して何でも話すことができます。
そして、心の中に溜め込んでいたものを全て吐き出し、すっきりすることができます。
それによって、気持ちが軽くなり、がんばるエネルギーが湧いてきて、「もう少しやってみるよ」となることもあります。
もちろんそうならないこともありますが、その場合も問題点がはっきりします。
つまり、「友達とうまくいかないのが原因だな」「先生と馬が合わないんだ」「遠すぎて通うのが大変なんだ」「レベルが合わないようだ」「他にやりたいことがあるんだな」というように、はっきりしてくるのです。
子ども本人にも親にも、問題点が明らかになります。
すると、どうすればいいかが自然に見えてきたり、あるいは、親子一緒に問題の解決方法を考えたりすることもできます。
●共感の後でハードルを下げてうながす
また、例えば、子どもが「疲れた。宿題やりたくない」と言ったとき、親はつい「何言ってるの。ちゃんとやらなきゃダメでしょ」と言ってしまいます。
世界中を探してもこれでやる気が出る子はいません。
それどころか、不愉快になってますますやる気がなくなるだけです。
こういう場合も、まずは共感的に聞いてあげてください。
「疲れてるんだね」「そうだよ。部活もあって塾もあって大変だよ」「…大変だね」「塾の宿題もあるんだよ」「…あなたも忙しいね」というようにです。
共感的に聞いてもらえると、子どもは自分がどれくらい大変か親にわかってもらえたと感じることができます。
すると、気持ちが安らぎます。
その後、しばらくしてから頃合いを見計らって、「そうは言っても…、ちょっとだけやっておこうか」など、ちょっと水を向けてみます。
子どももやらなければという気はありますので、「しょうがない。やるか」となる可能性が高まります。
このとき、「ちょっとだけ…」「半分だけ…」「少しだけ…」と言ってあげると、取りかかりのハードルが下がります。
あるいは、小さい子だったら「ママも手伝ってあげるから」「一緒にやろう」という言葉も効果的です。
実際にこの方法を使っているお母さんによると、このひと言がかなり効果があるそうです。
そして、はじめの1,2問は手伝うことがあっても、エンジンがかかってくればその後は自分でやることが多いそうです。
●言いたいことは最後に言う
子どもが「○○が欲しい」と言ったときも、まずは共感的に聞きましょう。
そして、どうしても買えないときは、最後に「でも、この前□□を買ったばかりだから無理だよ」と断るようにします。
兄弟ゲンカのときも、一緒のところでなく別々にのところで、まずは各自の言い分を共感的に聞きましょう。
そして、最後に「自分にはいけないところなかった?」と聞くと、素直に反省することができます。
このように、何事においてもいきなり「ノー」「ダメ」と門前払いするのではなく、まず取りあえずは子どもの話を共感的にたっぷり聞いてあげてください。
そして、言いたいことは最後に言うようにします。
これに心がけていると、子どもは「お父さん・お母さんはぼくの気持ちをわかってくれる。大切にしてくれる」「受け入れてくれる。味方になってくれる」と感じることができます。
親の愛情を実感できるようになるのです。
すると、親を信頼して何でも話せるようになりますし、ウソをつく必要もなくなります。
親に対して素直な気持ちになれますし、不必要なわがままも言わなくなります。
この反対に、親が共感的に聞かない場合、子どもは「何を言ってもムダだ。言っても叱られるだけだから、言わない方がマシだ」「お父さん・お母さんはぼくの気持ちをわかってくれない。ぼくの気持ちなんかどうでもいいんだ。大切に思ってくれていないんだ」と感じるようになります。
親の愛情を実感できなくなってしまうのです。
●全ての人間関係で共感を最優先にしよう
こういったことは、親子の間のみならず、大人同士も含めて全ての人間関係に言えることです。
私は、共感を最優先にする人間関係が世界中に広がって欲しいと思います。
テクニック的にそうするだけでなく、心から相手の気持ちを受け入れて許せるといいですね。
なぜなら、どの人にもそれなりの理由があってそのように言ったり、そのように行動したりしているからです。
みんな、やむにやまない理由、そうならざるを得ない理由があるのです。
ただ、こちらがそれを理解する能力に欠けているだけなのです。
自分が至らないだけのことですから、相手を責めるのはお門違いなのです。
初出『月刊サインズ・オブ・ザ・タイムズ(福音社)2013年12月号』
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