私は、6年生を担任するとき、密かに楽しみにしていたことがあります。


それは、誰が歴史の勉強でブレイクするかということです。

 

つまり、6年生になって初めて勉強する歴史で、一躍ブレイクする子がときどきいるのです。

5年生までは特に勉強面で取り立てて活躍することのなかった子でも、6年生の歴史が始まった途端に大活躍し始めるということがあるのです。

 

6年生の4月の初めの段階では、歴史の知識がほとんどゼロに近いという子が大多数です。

試しに「歴史上の人物で知っている人を書きなさい」などというアンケートをとったとしたら、結果は悲惨です。

 

聖徳太子などのようにお札になった人を1人か2人書ければいい方です。

私がとったアンケートでは、マンモスとか原始人などという答えもありました。

 

記憶に残る傑作としては、「ひめこ」「ふくざわろんきち」などがありました。

でも、少しでも書けるだけましな方です。

お世辞のつもりか、私の名前を書いて出した子もいました。

 

ところが、中には、びっくりするくらいたくさん書ける子がいます。

大喜びで知っている名前をどんどん書いていきます。

ほとんどの子の鉛筆が止まっている中で、その子は大得意です。

こういう子がクラスに必ず1人はいます。

多いときには、3,4人いることもあります。

 

書き終わったところで、たくさん書けた子に発表させます。

「藤原道長、源頼朝、北条時宗、足利尊氏・・・」などと読んでいくうちに「○○君、すご~い!」という声が上がります。

どれもこれも初めて聞く名前ばかりなので、思わず感嘆の声が出るのです。

 

ここは、彼らに大活躍させたいところなので、私としても大いに盛り上げてやります。

「○○君は、歴史の天才だ。今までこんなに知っている子は受け持ったことがないよ」などと言ってやります。

それから、その子の歴史の授業での大活躍が始まるのです。

  では、こういう子はどこからそれほどの知識を得たのでしょうか?

それは、ズバリ歴史漫画からです。1人の例外もなく、全員がそうです。

 

彼らの多くは、だいたい4年生くらいから歴史漫画を読み始めています。

歴史漫画というのは学習漫画の一種で、その名の通り、漫画で歴史を描いたものです。

 

1冊が900円以下で、だいたい15冊から20冊のシリーズになっています。

これは、漫画を楽しみながら、いつの間にか歴史の知識が身に付くという大変な優れものです。

子どもを歴史好きにするための最強の楽勉グッズであり、これ以上のものはありません。

  まず第1に、漫画なので読みやすくて分かりやすいのです。

字ばかりの本は苦手という子でも、楽に読めます。

 

しかも、ストーリー展開が工夫されていて面白いので、どんどん読めるのです。

1つのストーリーを楽しんでいるうちに、自然に歴史の知識が身に付いていくのです。

 

また、記憶に残りやすいという長所もあります。

その理由は2つあって、1つめは、漫画やイラストが多いのでイメージとして記憶しやすいということです。

2つめは、ストーリー仕立てなので、意味のある記憶がしやすいということです。

 

これらの長所は、歴史の教科書と比べることで、より一層はっきりします。

たとえば、歴史の教科書でしたら、次のような書き方になります。

「源頼朝の弟の義経は、京都に攻め上って、最後は壇ノ浦で平氏を破りました」

 

義経についての教科書の説明は、だいたいこのような1文で終わりです。

でも、歴史漫画ならそんなことはありません。

 

義経が子どものころ鞍馬で苦労して成長するところ、兄の頼朝と初めて会って涙を流すところ、合戦で大活躍するところ、頼朝に疎まれ悲しむところ、などなどがとても詳しく描かれています。

 

つまり、歴史漫画は、泣いたり笑ったり怒ったりする人間たちの姿を通して、歴史を描いているのです。

歴史を生き生きした人間の物語として読ませてくれるのです。

 

と、私がいろいろ説明するよりも、実物を見てもらうのが一番です。

まだ、読んだことがない人は、ぜひ、一度自分でも読んでみるといいと思います。

 

私も、今まで、かなりたくさん読んできました。

しかも、すべて大人になってから読んだのです。

なぜなら、私が子どものころにはこのようなすばらしいものはなかったからです。

もっと早くからあればよかったのに、と心から思います。

 

自身もこの歴史漫画から、かなりの知識を得ることができました。

大人が読んでもとても勉強になります。

大学受験の勉強にも十分使えるほどです。

内容もよく吟味されていて、いい加減なことは出てきません。

 

それというのも、学習漫画は、すべて専門の歴史研究者が監修しているからです。

監修者は、みな、その分野の一流の研究者たちです。

 

時代考証にもかなり時間をかけているそうです。

たとえば、南北朝時代と戦国時代では、合戦のとき武士が着ている鎧もいろいろな持ち物もすべて違うものになっています。

平安時代と室町時代では、農作業の様子も違いますし、農民が着ている服も違います。

ですから、私は、歴史漫画を授業の資料としてもよく使いました。

 

話を元に戻しますが、私が受け持った歴史好きな子どもたちは、みな、歴史漫画をたくさん読んでいる子たちでした。

中には、1つのシリーズでは物足りなくて、2,3シリーズ読んだ子もいます。

 

つまり、50冊くらい読んでいるわけです。

しかも、繰り返し繰り返し読んでいるのです。

 

このくらいになると、歴史の知識に関しては、既に大学生レベルといってもいいくらいです。

私よりはるかに上の子もいました。

それで、私は、負けてられないという気持ちから自分でも歴史漫画を読み始めたのです。

 

歴史漫画を繰り返して読んでいると、その時代についてもっと知りたくなります。

それで、歴史漫画の最後の方についている詳しい解説文も読むようになります。

  これが、またとてもいい勉強になるのです。

内容的には、かなり専門的なものも入っていて、はっきり言えば大人用のページです。

難しい専門用語も漢字でどんどん出てきます。

 

ところが、すばらしいことに、全部の漢字に読み仮名がついているのです。

ですから、子どもでも自分でどんどん読めるのです。

すでに、漫画でその時代についてはかなり詳しくなっているので、この専門的な解説のページも興味を持って読めるのです。

  ここまで書いてきて、大切なことを1つ忘れていたことに気がつきました。

それは、歴史漫画を読んでいると、漢字も覚えられるということです。

 

というのも、漫画の中の吹き出しに書かれている台詞にも漢字で専門用語がたくさん使われていて、そのすべてに読み仮名がついているからです。

たとえば、「空海様、儒教・道教・仏教の修行の違いは何ですか?」などと出てきて、そのすべてに読み仮名がついているのです。

 

歴史漫画で漢字の専門用語を読めるようになっておくと、教科書を読むときに大いに役立ちます。

 

このような理由で、私は、歴史漫画を子どもたちに読ませることを強くお勧めします。

4年生くらいからがいいと思いますが、もちろん、6年生になってからでもいいのです。

いいことを始めるのに、遅すぎるということはありませんから。

 

家庭に少なくとも1シリーズくらい揃えてほしいと思います。

全部買っても、せいぜい1万8千円くらいです。

これで歴史が好きになるなら安いものです。

学校の勉強にも役立ちますし、一生歴史の勉強を楽しむ素地を作ることもできるのですから、安い買い物です。

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