現代人の生活に欠かせないものの1つに電気があります。


朝起きてから寝るまで、どころか、寝ている間も私たちは電気のお世話になっています。

今や、電気と電器製品のない生活は考えるのも難しいほどです。

 

でも、その重要度に比べて、電気と電器製品への私たち一般人の理解度ははなはだ低いレベルに止まっています。

 

電気を使いすぎてブレーカーが作動したとき、どうやって復旧したらいいか分からない。

蛍光灯や懐中電灯の球が切れただけで、どうして直していいか分からない。

電器製品の線がほんの一部がおかしくなっただけで、お手上げになってしまう。

 

こういう人が多いのではないでしょうか?

多くの人たちにとって、電気も電器製品も便利だけど中がどうなっているか分からないブラックボックスになってしまっています。

 

ちょっとくらいのものなら自分でどんどん直すくらいのことができないでどうする?

と自分に言ってはみるのですが、これがなかなか難しいのです。

でも、中には、それができる人もいます。

ずっと以前一緒の学校に勤めたことのあるA先生がそうでした。

 

当時学校で使っていた古いオーバーヘッドプロジェクターが、ある日故障してしまいました。

電器屋さんには「もうそれは部品もないから直せない」と言われましたが、A先生が土日に家に持って帰って直してきてくれたのです。

どこかの配線が不通になっていただけで、すぐ直ったとのことでした。

 

A先生は、学校の校内放送用スピーカーの音が出なくなったときも、直してくれました。

私は、こういうAさんがうらやましかったです。

それで、電気関係の勉強をしようと決意して、通信教育に申し込みました。

でも、届いた教材を見ただけですぐに挫折してしまいました。

 

もっとも、このごろの電器製品には複雑で高度な物が多く、素人が迂闊に手を出すと危険な物もあるそうです。

でも、簡単な物なら少しくらいは自分の手で直してみたいという気持ちは、自然なものではないでしょうか?

 

それに、電気や電器製品のプロ以外の人たちは全く何も分からないというのは、社会的に見ても人類の進化発展という観点から見ても決していい状態ではないはずです。

一般の人も、この分野の知識をもっと持っているべきだと思うのです。

 

ところで、電気の勉強は、小学校の3年生の理科から始まります。

そのとき、まず最初にやるのが、乾電池、豆電球、導線つきソケットの3つを使って、豆電球に明かりをつける実験です。

 

この実験で理解すべきポイントは、明かりがつくためには電気の通り道が輪になって繋がっていることが必要だということです。

それが視覚的によく分かるように、余分な物は使わずに3つの物だけを使うのです。

 

次にやるのが、この3つを使って電気を通す物と通さない物を見分ける実験です。

つまり、この3つを繋ぎ合わせた回路の途中で導線を切り、切った導線の間にいろいろな物を置いて調べるのです。

 

そこに木の割り箸を置けば明かりはつきませんが、鉄のクリップを置けば明かりがつきます。

これで、木は電気を通さないけど鉄は電気は通すということが分かるのです。

 

ここで大事なポイントは、2つです。

つまり、1つ目は、電気を通す物と通さない物があるということです。

2つ目は、ある物が電気を通すか通さないかを調べるには、輪(回路)の途中にそれを置いて明かりがつくか見ればいいということです。

 

3年生の基本的な内容はこれだけですが、どの教科書にもその後の発展的な内容が紹介されています。

そのほとんどが、これらの内容を使っていろいろな工作をするというものです。

 

例えば、電気を通すか通さないかを調べるテスター、豆電球を赤く塗って屋根につけたパトカー、ミニ懐中電灯、3つの豆電球を赤青黄に塗り分けた信号機などです。

これらに、紙とアルミ箔などで手作りしたスイッチをつければ、簡単に明かりをつけたり消したりして楽しめます。

 

以上が3年生の内容ですが、みなさんはこれを読んでどう思いましたか?

たぶん、こんなのは簡単じゃないかと思った人が多いと思います。

 

そうなのです。

とても簡単な内容なのです。

それに、どの教科書もイラストをたくさん使ってとても分かりやすく書いてあります。

 

こんな簡単なことならどの子も同じようによくできそうに思えます。

私も初めてこの授業に臨んだとき、そう思っていました。

でも、実際にやってみるとなかなか大人が思うようにはいかなかったのです。

 

というのも、3年生の子の中には、生まれて初めて豆電球やソケットに触るという子たちがけっこういたからです。

さすがに乾電池に触ったことがないという子はいませんでしたが。

そして、そういう子たちは、生まれて初めて体験する電気の勉強がなんとなく怖いのです。

 

そうかと思えば、中にはやたらに詳しい子たちもいます。

そういう子たちは、すでにいくらかの経験がある子たちです。

お兄さんが3年生のときに使ったお古、学習雑誌の付録、市販のキットなどで遊んだことがあるのです。

 

中には、毎年クリスマスツリーに豆電球をたくさんつけているので詳しくなったという子もいました。

その子は、複数の電気の輪を持つ配線も作れたので、発展学習の工作のときにも大活躍しました。

 

そういえば、その子は、導線と導線を繋ぎ合わせるのもとても上手でした。

やり方は、ご存じの通り、まず、導線に被せてあるビニルの皮に爪を立ててスーッと剥いて取ります。

次に、出てきた導線の中身の銅の部分同士をよじり合わせて繋ぎます。

 

この一連の作業がその子は、とても上手でした。

それで、そのやり方をみんなに教えてやったり手伝ってやったりで大活躍でした。

  ここまでが3年生の内容ですが、これが4年生になるともっと難しくなります。

使う物が増えますし、作る回路も複雑になり配線が大変になるからです。

 

4年生では3年生で使った物に加えて、新たに、モーター、検流計、光電池などを使います。

それと、乾電池を2個使うようになります。

 

4年生でまず最初にやるのは、乾電池が直列と並列のときで、豆電球の明るさやモーターの速さがどう違ってくるかという実験です。

 

ここで大事なポイントは3つあります。

 

1、乾電池を2つ直列に並べると、豆電球はより明るくなりモーターはより速く回る

2、乾電池を2つ並列に並べると、豆電球の明るさもモーターの速さも乾電池が1つのときと変わらない

 

そして、その理由を調べるために、検流計を使って直列と並列では電流の大きさにどのような違いがあるかを調べます。

すると、ポイントの3つ目として、次のことが分かります。

 

3、直列のときは乾電池1つのときより電流が大きくて、並列のときは乾電池1つのときと電流の大きさが同じである

 

次にやるのが、乾電池の代わりに光電池を使って豆電球をつけたりやモーターを回したりする実験です。

ここで大事なポイントは、光電池に当たる光の量によって豆電球の明るさやモーターの速さが変わること、つまり、電流の大きさが変わることです。

 

発展的な内容としては、次のものがあります

 

1、直列と並列ではどちらが長く明かりをつけていられるか調べる

2、乾電池のプラス極とマイナス極を反対にすると、モーターの回転方向がどうなるか調べる

3、単1乾電池と単3乾電池ではどちらが豆電球を明るくできるか調べる

4、単1乾電池と単3乾電池で豆電球をつけた場合、どちらが長持ちするか調べる

 

みなさんは、この4つの問題の答えが分かりますか?

これは、この章の一番最後に正解を書きたいと思います。

 

ところで、4年生の内容をざっと見てみて、いかがでしたか?

3年生に比べてぐんと難しくなっているのがお分かりになったと思います。

この後、なぜか5年生では電気の勉強は全くやらずに、6年生になっていきなり電磁石の仕組みと性質を勉強します。

 

6年生でまず最初にやるのは、エナメル線を100回巻いてコイルにし、その中に鉄釘を入れて電磁石を作る作業です。

その次に、その電磁石の性質についていろいろ調べる実験を行います。

 

6年生で大事なポイントは5つです。

 

1,電磁石に電気を流すと磁石になる

2,乾電池を2個にして電流を大きくすると電磁石の力も大きくなる

3,コイルの巻き数を増やすと電磁石が強くなる

4,電磁石にもN極とS極がある

5,乾電池のプラス極とマイナス極の向きを反対にして電流の向きを反対にすると電磁石のN極とS極も反対になる

 

発展的な内容としては、電磁石の性質を利用したモーターの仕組みについて扱います。

エナメル線と鉄のクリップと乾電池と磁石だけで簡単なモーターを作ったり、それを利用していろいろな工作をしたりします。

 

ところで、さきほど、「5年生では電気の勉強は全くやらずに、6年生になっていきなり電磁石の仕組みと性質を勉強します」と書きました。

これをもっと細かくいうと、4年生では電気の勉強を1学期に勉強し、6年生では3学期に勉強するのです。

私が調べた5つの教科書の全てがそうなっています。

 

ということは、時間的にいえば丸々2年間のブランクがあるということなのです。

これは、どう考えても無理な話です。

丸々2年間も電気の勉強をしないと、4年生の内容をすっかり忘れてしまう子がたくさん出てきてしまいます。

 

ですから、私は、4年生の内容の一部を5年生に回した方がいいと思います。

例えば、光電池の勉強を4年生から5年生に回せばいいのです。

そうすれば、子どもたちの記憶がうまく繋がっていくはずです。

 

ここまで、各学年でやることとポイントを見てきました。

学年を追うごとに複雑になっていくことがお分かりいただけたと思います。

特に難しいのは、使う物が多くなってくるに連れて、それらを正しく繋ぎ合わせる配線が複雑になるということです。

 

例えば、4年生で、乾電池を並列にして豆電球をつけたとき電流の大きさがどうなるかを調べる実験では、次のような物を使います。

乾電池2つ、豆電球、導線つきソケット、検流計、スイッチ。

これらを正しく配線しなければなりません。

 

教科書に配線の見本の写真があるときは、ほとんどの子がなんとかできます。

ところが、写真がなくて配線図(回路図)だけを見ながらやるとなると、できない子が急増します。

 

ときには、配線図もなくて問題の文章を読み取って配線しなければならないときもあります。

こうなると、ますますできない子が増えます。

 

実は、電気の勉強の最大のポイントは配線ができるかどうかということなのです。

配線ができる子は、どの実験も自分でどんどんできます。

また、どうしてそう繋ぐのかも分かっていますし、その実験の意味もよく分かっています。

 

配線ができない子は、どの実験も友達のやるのを見て真似しながら、または、手伝ってもらいながらやることになります。

どうしてそう繋ぐのかも分かっていませんし、そもそもその実験の意味も分かっていないことが多いのです。

 

そこで、私は、子どもたちが自分で配線ができるようにしてやるために、実際に配線作業をする時間をできるだけたくさん取りました。

配線図だけを見ながら配線させたり、その逆に、実物や写真を見ながら配線図を描く練習をさせたりしました。

  電気の勉強は、このような実際の作業経験が非常に重要です。

習うより慣れろということわざがとてもよく当てはまる分野だと思います。

実際の配線作業の経験が少ない子が、電気の勉強を好きになることはあり得ないのです。

 

ですから、家庭でも、そういう経験をたくさんさせてやることをおすすめします。まず、豆電球、導線つきソケット、モーター、乾電池、光電池、スイッチ、ビニルの皮つき導線、エナメル線、コイル、鉄釘、鉄のクリップ、磁石などを用意してやればいいのです。

 

後は、教科書や参考書、または、自由研究の本や理科の実験工作の本などがあればいいのです。

例えば、私の手元にある本だけでも次のような物が出ています。

 

豆電球に紙コップを被せたミニ電気スタンド、モーターにプロペラをつけたプロペラ船、モーターの回転でタイヤを動かすモーターカー、光電池を使ったソーラーカー、光電池のメリーゴーランド、鉄釘を入れないコイルで作るコイルモーター、光電池用モーターを使った水力発電機、電磁石のブザー

 

これらの工作はどれもとてもシンプルなので、簡単な材料と本とやる気さえあれば誰でも作れます。

しかも、シンプルな分、様々な原理を理解するのに都合がいいのです。

 

ただ、問題は、このような材料や本が子どもの身近にないということだけです。

それさえあれば、多くの子は放っておいても楽しく遊び出します。

自分からやり出さなければ、最初は大人がうまくリードしてやればいいのです。

面白さが分かればどんどんやるようになります。

 

ですから、ぜひ、大人が用意してやってほしいと思います。

どれもこれも本当に安いものです。

本以外は、一番高い物でも200円以内です。

または、市販の実験キットや電気工作キットもたくさん出ていますので、それを利用してもいいでしょう。

 

ただ、家でやる場合、安全面への配慮を忘れないでください。

特に、導線、エナメル線、クリップ、コイル、鉄の釘などをコンセントに差し込まないように言っておいてください。

子どもがコンセントから電気を取ろうと考えることもあり得ますから。

これは危険なので、要注意です。

 

この他にも、児童館や科学館で実験講座などをやっていたら、それに参加するのもいいでしょう。

とにかく、あの手この手で実際の経験をたくさんさせてやることです。これに尽きます。

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